“わがまま”なのは桑名正博?

桑名正博【月のあかり】歌詞の意味を考察!別れが「さよならとは違う」のはなぜ?涙ぐむ理由が切ないの画像

わがままは 生まれつきさ
お前も 気づいてたよ
愛しているのさ はじめて言うけど

出典: 月のあかり/作詞:下田逸郎 作曲:桑名正博

この部分の歌詞は、桑名正博のキャラクターと重なるところがあるように思います。

大阪の裕福な家庭に生まれ育った彼は、所謂“ええとこのボンボン”でした。

気さくで親しみやすい人柄は多くの人に愛されましたが、その一方で大変気の短いところもあったそうです。

早くからキャリアをスタートした昔のロッカーらしく、波乱に富んだ人生を送りました。

70年代の半ばに桑名正博との付き合いが始まった下田逸郎は、彼の性格がよく分かっていたのでしょう。

そんなところが、最初の行の歌詞に反映されているのではないでしょうか。

主人公は自分の性格について諦めがついたように自嘲します。

彼女にも分かっているはずだと思っているのですが、わざわざ確かめるようなことはしなかったのでしょう。

ここで彼が出ていく理由が分かったような気がします。

やはり何らかの夢を叶えたいからなのでしょう。

上手くいくかどうかも分からないのにです。

成功すればまた帰ってくる、そんなつもりなのかもしれません。

だから“さよならとは違う”のです。

自分の夢を追い求めることは、彼女を苦しめることにもなります。

夢を叶えたい一心で別れを切り出して、初めて彼女がどんなに大切な人だったかに気がついたのです。

彼が涙ぐんだ理由はそこにあるのだと思います。

最後に口下手で不器用な男が初めて口にした言葉は、余計に彼女を辛くさせたでしょう。

彼女にとっては遅すぎたのです。

「月のあかり」が照らすものとは?

静かな別れの場面と盛り上がるボーカル

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ふり向くな この俺を
涙ぐんでいるから
長い旅になりそうだし
さよならとは違うし
この街から 出てゆくだけだよ
この街出てゆくだけだよ
この街出てゆくだけだよ

出典: 月のあかり/作詞:下田逸郎 作曲:桑名正博

彼女が背中を向けているのは、悲しくて彼を見ることができないからでしょう。

涙を見られたくない主人公にとっては都合のいいことかもしれません。

しかし彼女には、彼の性格がよく分かっているはずです。

ほのかな月の光が差し込む部屋の中で、黙って俯いている寂しそうな姿が目に浮かびます。

彼は彼女の方を見ているのに、彼女は彼の方を見ることができないのです。

青っぽい光の中でドアを前に佇む主人公と、椅子ではなくてベッドに腰掛けた女性

静かな場面ですが、桑名正博のボーカルは我慢出来ないかのようにラストを盛り上げます。

繰り返す主人公の言い訳には、また逢えるかもしれないという自分勝手な期待も少し見えています。

彼女を悲しませながらも夢を叶えようとする男の、切ない言い訳でもあるような気がするのです。

我儘だけれど繊細な男の心に、一気に押し寄せる色々な感情。

そして遅すぎた愛の言葉。

「月のあかり」が照らすのは、彼の心なのだろうと思います

下田逸郎と「月のあかり」

優しさや繊細さを感じる歌詞

桑名正博【月のあかり】歌詞の意味を考察!別れが「さよならとは違う」のはなぜ?涙ぐむ理由が切ないの画像

作詞者の下田逸郎は、「セクシィ」という素敵な曲を書いたシンガーソングライターです。

しんみりするメロディーが持ち味の人で、松山千春の「踊り子」など多くの歌手に楽曲を提供しています。

その彼自身も「月のあかり」を歌っていて、これがとても魅力的なのです。

桑名正博の情感を込めたボーカルとはまた違った良さがあり、抑え気味の歌い方が胸に染み込んできます

歌詞を書いただけあって、この曲に対する理解や思い入れもあるのでしょう。

下田逸郎と桑名正博は長年に渡って交友がありました。

彼のホームページに、病床にある桑名を見舞った際の様子を語った文章があります。

淡々と綴られているのですが、そこには友人に対する痛切な想いが溢れています。

シンガーソングライターらしい感性がここにも見て取れるのです。

あらためて「月のあかり」の歌詞を見てみると、彼の優しさや繊細さが浮かび上がってくるような気がします。

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「グッド・バイ・マイ・ラブ」

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音楽メディアOTOKAKEから、桑名正博の関連記事を紹介します。

まずは桑名正博と結婚して話題になったアン・ルイスの曲から。

派手なスター同士の結婚で、当時の音楽界や芸能界は盛り上がりました。

どちらも歌謡ロック路線でヒットを飛ばしていたところに共通点があったように思います。

ただ、アン・ルイスもデビュー当時は純真なイメージがありました。

その象徴的な曲、「グッド・バイ・マイ・ラブ」の記事をお楽しみください。

はじけるような笑顔が素敵なアン・ルイス。最初のヒット曲はゆったりしたリズムとメロディーが心地よい「グッド・バイ・マイ・ラブ」でした。歌詞に込められた切なく一途な想いについて解説します。

「セクシャルバイオレットNo.1」

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