いま青春の河を超え
青年は青年は 荒野をめざす
出典: 青年は荒野をめざす/作詞:五木寛之 作曲:加藤和彦
「青春」は終わったことを表す歌詞が綴られています。
歌の主人公の年齢は五木寛之さんの小説から判断すると20歳頃ですね。
少し斜めに世の中を見ても許される時期はもう終わりでしょう。
「青年」という年代がどのあたりを指すのかは曖昧です。
少年と呼ばれる時期はとっくに終わったけれど、大人にはなり切れていない年代でしょう。
その時期にどうして「荒野」を目指すのでしょうか。荒れ果ててそのままでは何もできない土地。
もしそこに何かを作るのなら大地を耕すことから始めなければいけません。
収穫までには時間がかかります。それでも目指すのは自分の力を試したいのでしょうか。
苦労をして結果を手にすることができたら、恋人も喜んでくれるかもしれない。
大人になる手前の時期には失敗をしてもやり直すチャンスもあるでしょう。
歌の主人公に作詞家五木寛之さんは「挑戦」を望んだのです。
旅立ちの時間が…
新しい日が来れば
もうすぐ夜明けだ 出発の時がきた
さらばふるさと 想い出の山よ河よ
出典: 青年は荒野をめざす/作詞:五木寛之 作曲:加藤和彦
歌の主人公はいよいよ旅立ちの時を迎えるようです。
想像ですが別れを告げた「恋人」と一緒にこの時間を迎えたのかもしれませんね。
暗闇一色だった空が少し変化を見せ始めます。
「もうすぐ」という言葉が、太陽はまだ顔を見せていないことを表していますね。
日が昇るのを待たずに旅立とうとしている歌の主人公。
新しい日の始まりと共にこの地を出ていこうとしているのでしょうか。
強い決意を、大切な人以外には語らずに出ていこうとしている歌の主人公の姿が見える歌詞です。
ここでは生まれ育った土地に別れを告げます。これは自分の心に言い聞かせたのでしょう。
飽きるほど見た「山」の形や「河」の色は心の糧となります。
また思い出が増えてしまいましたが、それはすべて心の中にあるもの。
余計な荷物になることはありません。独りで過ごす時間には心の支えとなるのでしょう。
目指す場所に見えるもの
いま朝焼けの丘を越え
青年は青年は 荒野をめざす
出典: 青年は荒野をめざす/作詞:五木寛之 作曲:加藤和彦
太陽が昇り始める大きな空が広がる様子が歌詞に綴られています。
そのはるか向こうに歌の主人公が行くべき「荒野」があるのでしょうか。
そこにたどり着く前にまず超えるのは「丘」です。
目に見えているそこは暗い場所ではありません。
旅立ちの背中を押すために昇り始めた太陽の光が射しています。
この歌詞にも「荒野」へ行く理由が綴られているでしょう。
目指している場所は荒れた土地かもしれない。
でもそこに行けば新しいことを始めることも可能です。
暗い夜が終わると必ず新しい日が来ることを知っていれば、恐れることはありません。
荒れている場所にも太陽の光は平等に降り注ぎます。
心が折れそうになったら、旅立ちの日に見た「朝焼け」の風景を思い出して欲しい。
旅立ちを決めたときの強い心もよみがえるでしょう。
決して忘れないことがある
つながっているから
みんなで行くんだ 苦しみを分けあって
さらば春の日よ ちっぽけな夢よ明日よ
出典: 青年は荒野をめざす/作詞:五木寛之 作曲:加藤和彦
場面転換をしたような歌詞が綴られています。
目指すのは歌い出しにもあったように「ひとり」でした。
ここでは「みんな」という大勢を表す言葉で歌詞が始まります。
目的の場所に仲間同士で行こうと歌っているのです。
これは独りで旅立とうとしている主人公に贈る歌詞になっているのでしょう。
険しい道を独り歩いているかもしれない。でも仲間はいつでも一緒です。
「苦しみ」を独りで背負っている訳ではないことを知って欲しい。
同じ時間を過ごした仲間たちと心はつながったまま、だから声援を送り続けます。
勇気をもって進んで欲しいのです。そして、ここで別れを告げるのは「春」「夢」「明日」。
心地よさの中で将来のことや、その先の未来を目指すこともできるでしょう。
でもそれに「さらば」と言ってしまうのです。
小さな願望を叶えるために「荒野」に行くのではありません。
抱えきれないような夢や、すぐには見えない未来を手にするために、目指すのです。
その背中に向けてのエールになる歌詞ですね。
誰にも止められない
いま夕焼けの谷を越え
青年は青年は 荒野をめざす
出典: 青年は荒野をめざす/作詞:五木寛之 作曲:加藤和彦
夜が明ける前の丘を越えると待っているのは「谷」でしょうか。
闇が迫ってくる時間帯も歩き続けているのでしょう。
そこからは、今日一日をリセットしてくれる「夕焼け」が見えています。
辛い一日だったことも窺わせますね。
でももう終わります。太陽が沈んで夜が来て、そして再び朝が訪れる。
旅立ちの日には「朝焼け」を見て必ず新しい日が来ることを心に刻みましたね。
それを受けて歌詞は綴られています。
辛くても苦しくても乗り越えられる。
今は見えない乗り越えた先にあるものは、光に包まれて輝いているのです。