空がとってもひくい
天使が降りて来そうなほど
いちばん好きな季節
いつもとちがう日曜日なの

出典: ベルベット・イースター/作詞:荒井由実 作曲:荒井由実

荒井由実のセンスが迸るようなサビのパートです。

雲が垂れ込めた人によっては憂鬱に感じる風景も彼女の手にかかれば夢のような世界へと変わります。

♪空が~で始まるメロディーがすぐそこにある雲に向かって階段を昇るように駆け上がっていくのです。

ふわふわとした世界を抜け出して空へ駆け上がるようなこのメロディーがたまらなく素敵だなと思っています。

部屋の窓についた雨のしずくは光っていますから、曇り空からはところどころ日が差しているのでしょうね。

西洋では昔から雲の間から差し込む光の様子を天使の梯子天使の階段と呼ぶことがあるそうです。

天使の梯子という名称は、旧約聖書創世記28章12節に由来する。この記述では、ヤコブが夢の中で、雲の切れ間から差す光のような梯子が天から地上に伸び、そこを天使が上り下りしている光景を見たとされる。このことからやがて自然現象もそのように呼ばれるようになった。

出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/薄明光線

その光に乗って天使が雲の間から降りてくるところを想像する少女が見えるようです。

優しく愛らしい天使は少女が想い描く恋愛や幸せの象徴なのかもしれません。

青く晴れ渡った空ではなくて雲が低く垂れ込める季節が好きという彼女の心はどこか寂しいような気もします。

いつもと同じ日曜日ではないのはそれがイースター、復活祭だからです。

それでは彼女にとってなぜイースターが大切なのでしょうか。

ベルベットが表すもの

むかえに来てほしい人とは?

松任谷由実「ベルベット・イースター」の意味とは?歌詞と共に解説!日曜日、いつもとは違う理由とはの画像

ベルベット・イースター
きのう買った
白い帽子 花でかざり
ベルベット・イースター
昔ママが好きだった
ブーツはいていこう

出典: ベルベット・イースター/作詞:荒井由実 作曲:荒井由実

この曲にはまだ大人になりきれていない少女の姿を描いたところがいくつか出てきます。

一番の歌詞ではむかえに来てと誰かにお願いしていますね。

まだ眠い少女がなんだかぐずっているようです。

白い帽子や花飾りも大人ではない少女の象徴なのではないでしょうか。

そして最後に出てくるのは彼女の母親が好きだったブーツです。

「好きだった」という過去形になっているところにヒントがありそうですね。

もしかしたら彼女の母親はもうこの世にいないのかもしれません。

ベルベットの優しい手触りは母親の愛情や優しさを表しているのではないでしょうか。

イースターは復活祭ですから、彼女にとっては母親に逢える特別な日曜日なのです。

曇っていて空が低ければ彼女と天国にいる母親の距離はそれだけ近く感じるのでしょう。

現実の世界と雲の上の世界をつなぐ天使の階段は彼女にだけ見えるのかもしれませんね。

母親が昔はいていたブーツがはけるくらいに成長した少女は何年も寂しいときを過ごしたのかもしれません。

ベッドルームのドアをたたいてむかえに来てほしいのは大切なママなのではないでしょうか。

イースターはママに逢える日?

解釈次第で違って見える世界

松任谷由実「ベルベット・イースター」の意味とは?歌詞と共に解説!日曜日、いつもとは違う理由とはの画像

最初にこの曲を聴いたときは微妙な年頃の少女の気持ちを歌っているのだろうと思っていました。

歌詞の中に「ママ」が登場するので、まだまだ子供なのだなと感じていたのです。

ところがそのママが亡くなっていたら…と考えると、この曲の世界がガラリと変わって感じるようになりました。

目が覚めたばかりの彼女をむかえに来てほしいのは恋愛に憧れる少女の夢の中に出てくる彼ではありません。

今でも逢いたくてたまらない母親だとすれば、ベルベット・イースターというタイトルにも納得がいくのです。

優しかった母親に逢える年に一度の日曜日

成長した少女が母親愛用のブーツをはいてひとりで出掛け、楽しかった日々のことを思い出しながら歩く。

イースターが彼女の中では年に一度母親に逢える日だとすれば、この季節が一番好きなのも分かりますね。

この曲はラララ…という歌声とエコーのかかったハンドクラップと共にフェイド・アウトしていきます。

少女の寂しさはこの先も続いていくのだろうなと想像させるようなエンディングです。

浮遊感のあるピアノのイントロは低い雲とそこから降りてくる天使を想像させてくれました。

最初から最後までユーミンの世界に浸ることができるいい曲だなと今でも思います。

才能溢れるユーミンの世界

松任谷由実「ベルベット・イースター」の意味とは?歌詞と共に解説!日曜日、いつもとは違う理由とはの画像

『ひこうき雲』のレコードでいうA面1曲めはアルバムと同名曲の「ひこうき雲」です。

荒井由実はこの曲でも美しいメロディーに乗せて哀しみを歌いました。

ベルベット・イースター」はB面の1曲めなのですが、やはり哀しい雰囲気の曲です。

当時はレコードのA面・B面の1曲めに収録される曲がアーティストのイメージを左右していました。

このアルバムの中に流れている情景が目に浮かぶ叙情的な世界が初期のユーミンの特徴でもあるのです。

しかしこれで終わらないのが彼女の凄いところで、松任谷由実になってからも才能が溢れて止まりません。

アルバムをすべて聴くのは大変なので、とりあえずはベスト・アルバムがおすすめです。

宮崎アニメに使われたユーミンの曲

宮崎駿と松任谷由実のコラボレーション

松任谷由実「ベルベット・イースター」の意味とは?歌詞と共に解説!日曜日、いつもとは違う理由とはの画像

松任谷由実の代表曲でもある「ひこうき雲」は世代を超えて愛され続けています。

2013年にはスタジオジブリのアニメーション映画『風立ちぬ』の主題歌に使われて話題になりました。

映画で初めてこの曲を聴いて好きになった人もいるかもしれませんね。

『風の谷のナウシカ』や『紅の豚』など、監督を務めた宮崎駿映画には空を飛ぶ乗り物がよく登場します。

大空を舞う飛行機の姿が好きな人なのでしょうね。

ご紹介する記事では松任谷由実が登場する『風立ちぬ』のPVも楽しめます。

「ひこうき雲」の歌詞に込められた意味について解説されていますので、是非読んでみてくださいね。