いよいよクライマックスです。
ご覧のようにリフレインになっています。
しかしこの恨み言葉の繰り返しというものはとても大事なものでしょう。
最後にもうひとつ大切な視点からこの歌詞を見ていきたいです。
中島みゆきはこの曲のタイトルを「うらみ・ます」と表記しました。
「うらみ」と「ます」の間に「・(なかぐろ記号)」を置いて丁寧語である末尾を強調します。
この「ます」という丁寧語の強調がどういう意図なのかが分かりづらいでしょう。
なぜあたしは丁寧語で恨みごとを述べるのでしょうか。
あたしはこの先も生涯、あんたのことを赦しはしません。
しかしすでにあんたとは遠くなったことを雨の描写で顔が朧気だといいながら私たちに伝えていました。
もはやあんたはあたしが関わっている人間ではなくなったのです。
「ます」という言葉はもちろん丁寧語として機能します。
一方で「ます」は語り手と相手の仲が疎遠な関係である場合にも用いられるのです。
あたしはあんたを恨む一方でリアルでは一切の関わりを絶ちたいと願うでしょう。
この「うらみ・ます」の「ます」はあたしとあなたのこの時点での縁の遠さに由来するのです。
あんたと友人が関わるような「悪」とはあたしは遠くにいたいと願います。
あたしまで「悪」に転落したらあんたを断罪する資格がなくなるからです。
中島みゆきは創作に随分と時間を書けるアーティストです。
天才肌だからといって言葉が降りてくることに任せたりはしないタイプではないでしょうか。
しっかりとプロットを組み立ててそこに魂を込めることができる天才なのです。
「うらみ・ます」が描いた事柄は語り手がひとりであるにも関わらず多彩で多層的なものでしょう。
まず恨む女性や「泣く女」に目がゆきます。
その一方で男たちの非道さを描ききるのです。
もっと突き詰めてゆくとやはり人間が「悪」に手を染める瞬間へと私たちを連れてゆきます。
非道さを目撃させて、このシチュエーションに立ち会ったときにどんなジャッジをするのかを迫るのです。
描かれた人間存在の姿態が多彩になっています。
あんたの裏に共犯関係の男友だちを登場させることで悪事が集団的に行われたことを示唆しました。
楽曲を覆う暗闇の奥の深さというものをきちんと描ききったのです。
「うらみ・ます」は確かに怖い歌かもしれません。
しかし私たちが一番畏怖しているものは中島みゆきというアーティストの神のような采配です。
ここまで読んでいただいてありがとうございました。
OTOKAKEと中島みゆきの軌跡
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