― 短夜(みじかよ)半夏(はんげ)、嘘を眩(くら)むなぞ ―
疑うなんて浅(あさ)ましいです

陽(ひ)のもと認めたあの腕の白さまで
忘れたら・・・凍(こご)えずに温まるのか
一層この侭(まま)通わないとて構わない

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― 笠の雪の、自然が災(わざわ)ひ(い)や ―
黒ばむ前科(まえ)に労働(はたら)きます


揺れては末(おわり)とあの夏の期待を責め
仰いだら・・・灰色に誘(いざな)う娑羅双樹
一層この侭(まま)繁(しげ)らないとて厭(いと)わない

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何方(だれか)に会えば記憶を奪取(ぬす)まれよう
喉を使えば貴方が零(こぼ)れ出(い)で溢(あふ)れよう

・・・是(これ)以上識(し)りたくなどない
一層この侭(まま)眠って居られたら好(い)いのに
噫(ああ)! 貴方の首筋が
きっと現在(いま)はもう真っ白く透き徹(とお)って居る

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言葉の意味

半夏:薬草の名前のこと。この草が生えることを半夏生(はんげしょう)といい、夏至から11日目のころをいう。半夏はドクダミ属の花で独特の臭気があり、白い花が咲く。

沙羅双樹フタバガキ科Shorea属の常緑高木で幹の高さが30mにも達する。春に咲く白い花はジャスミンにも似た芳香がある。この木の下で釈迦が入滅したといわれる。

プロモーションビデオの「白」

歌詞に出てくる花はいずれも白色で匂いのするもの。さらに吹き出す血を思わせる赤色の液体が目立つような仕掛けになっています。

歌詞の中に出てくる、例えば「黒色の前科」「灰色に誘う」、さらに「現在はもう真っ白く透き徹って居る」などで、白を基調にしておけば間違いなしの構成になっているのですね。

私的『修羅場』論

歌詞の意味

これはどうやら、激しい男女の営みのあとの気だるい雰囲気の中、その行為の一つ一つを断片的に思い起こしている、そんな女の気持ちを歌い上げたように感じます。

抱かれている間も男の不義を疑っている、そして好きな男に抱かれている自分もまた、ほかの男に抱かれた記憶があり、それを見透かされないように、いちもつを口にして喉の奥に白い液体を流し込み、声を偲ばせる――

なんだか、エロチックな、同時に悲しい大人の唄ですね。心が満たされない渇いた感覚がこの歌に漂っていると感じるのは私だけでしょうか。

古典で習ったことがありますが、当時は女性のもとに男性が訪れる通い婚だったとか。男が訪れてくれない夜長、恋しい気持ちを歌に詠んだのでしょう。『修羅場』はそれに近いものなのかもしれません。

「意味不明」「意味難解」だからいい。

―――にしても、意味はよくわかりません。椎名林檎だからそういうエロチックなイメージが拭いきれないというのもあるし、「大奥」の主題歌だからという先入観があるからかも知れません。

意味が難解でよく分からなくても、言葉の断片がなんだか突き刺さるかのように響く。それでこの『修羅場』は良いのではないかと思うのです。

「想像」であおられる「色」

「色」には単純にcolorを意味するほかに、男女の秘め事を意味することがあります。想像力が「色」=「色欲」を強く感じさせるのかも知れません。

素っ裸の女性よりも、一部を覆い隠すだけで、女性の恥じらいやエロチシズムを表現するのと同じ、真っ白な中に、ぽつんと色がつくだけでそこに曲や音のもつイメージが膨れあがるのかもしれません。

『修羅場』歌詞の意味、まとめ

いかがでしたか?椎名林檎のあのはすっぱな歌い方、薄っぺらい声色がなければあの世界観はなりたたないと思いませんか?

楽曲はアーティストから解き放たれた段階で、受け手であるリスナーのもの。解釈はリスナー次第なのです。リスナーの個人的な事情がその曲に反映されることは決しておかしなことではありません。苦しい、狂おしい恋をしている人にはグッとくる逸品といえそうですね。

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