2種類の「風と星とメビウスの輪」
簡単な言葉で重く深い歌詞
2008年7月30日発表、Mr.Childrenの通算32作目のシングル「GIFT」のカップリング曲。
また2008年12月10日発表、通算15作目のアルバム「SUPERMARKET FANTASY」収録曲。
Mr.Childrenの隠れた名曲「風と星とメビウスの輪」をご紹介いたします。
この曲はシングル・バージョンとアルバム・バージョンで大分、印象が変わる曲です。
歌詞は同じなのですが、ピアノ伴奏だけのシングル・バージョンとドラマティックなアルバム・バージョン。
どちらもそれぞれの良さがありますので聴き比べるのも楽しいです。
愛を語るために人間というものに言及する深い内容のラブソング。
鍵になるのはタイトルにも現れる「メビウスの輪」への理解でしょうか。
過去にも様々な表現のジャンルでモチーフとして用いられてきた「メビウスの輪」。
できるだけ丁寧に歌詞を解釈していきます。
簡単な言葉で綴られていますが重さや深さがある歌詞です。
それでは実際の歌詞を見ていきましょう。
「メビウスの輪」とは何か
文学・芸術のモチーフとしての「メビウスの輪」
抱かれて 磨かれて
輝くことで また抱かれて
君と僕が
そんなメビウスの輪の上を歩けたなら
出典: 風と星とメビウスの輪/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
艷やかな歌い出しです。
男女の愛を歌っているのですが「メビウスの輪」の上を歩くという神秘的なラインが含まれます。
この曲「風と星とメビウスの輪」はやはり「メビウスの輪」についての理解がないと解釈できません。
しかしこの「メビウスの輪」について説明することは至難です。
「メビウスの輪」を模した商品の画像などをご覧いただけたなら理解が早いかもしれません。
Amazon.co.jpで探してきましたので、この章のトップ画像をご覧ください。
これが実際の「メビウスの輪」であります。
どこかで見かけたような覚えがあるはずです。
循環や再生を想起させることから下図のようにリサイクルのシンボルマーク(ユニバーサルリサイクルシンボル)として採用されている
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/メビウスの帯
ペットボトルなどの再生可能な商品に記載されているリサイクルのマークも「メビウスの輪」です。
一方でこの曲を理解する際に大事なことは文学のモチーフとしての「メビウスの輪」について考えること。
永遠のループと異次元への転移、または一周して過去に立ち返ることなどが考えられます。
「メビウスの輪」は数学的な発想のもとに生まれたものですが、文学では神秘的なモチーフになるのです。
永遠にループしてゆく空間の上をふたりで歩いてゆくことが歌われます。
愛の永続性のようなものが主題のひとつなのでしょう。
何度も同じように抱きあい、お互いの資質を高めあうこと。
そうした愛し方自体が「メビウスの輪」での時空の在り方と近似性があります。
このようにしっかり結ばれたふたりの愛の永続を願っているのです。
風というエレメント
足早に過ぎゆく季節
時流(とき)の早さ 命の重さ
確かめるように ほら一歩ずつ
疲れたら 青空に心を泳がせて
風の唄でも聴こうか
聴こうよ
出典: 風と星とメビウスの輪/作詞:桜井和寿 作曲:桜井和寿
季節の移ろいは早いものです。
ふたりで足早に様々な季節を駆け抜けてゆきます。
そのうちに愛する子どもなど新しい生命に恵まれることもあるかもしれません。
子どもに恵まれなくてもふたりで生きてきた道のりの中で生命を削っていることに気付くこともある。
あらゆる生命は平等に重い価値を持っています。
一緒に暮らしてゆく日々の中でお互いの大切さを確認しながら生きてきたのでしょう。
「風と星とメビウスの輪」のふたりは理想的な年の過ごし方をしているのでうらやましくなります。
そんなふたりも日々の生活の中で疲弊することもあると歌うのです。
それでも解決策はあります。
大自然のあらゆる生命のめぐり合わせと歩く速度をあわせて、大空をゆく風に答えを聴くのです。
風というものも理解しよう
空には片時も同じ瞬間はありません。
風もまた刻一刻と表情を変えます。
それでいて空や風はこの世界に永遠に存在し続けるのです。
永遠というのが変わりゆく今という一瞬によって創られていることを知ります。
このラインでは「メビウスの輪」は登場しません。
しかし主題として永遠に関わるものが登場しているのです。
その永遠とはずっと同じであるものではなく、いつも表情を変える風や星によって構成されます。
「風と星とメビウスの輪」
そのタイトルの風もまたこの歌を解釈するために大事な役割を演じています。