指先で愛のありか探し出すように
俺のシャツのボタンをひとつ外して
首筋につけた赤いルージュの花は
悪魔の契約書に捺したサインさ

出典: ボタンにかけた指先が/作詞:いしわたり淳治 作曲:滝善充

2曲目の「ボタンにかけた指先が」は、始まったばかりの夜のワンシーンを切り取った1曲です。

キスマークを悪魔との契約の印に例えた、おしゃれな歌詞が印象的です。

後半には「戻れない恋」という歌詞も出てきます。

この曲に出てくる男女はもしかしたら、道ならぬ恋の最中なのかもしれません。

しかし恋は、人目を忍べば忍ぶほど盛り上がるもの

そんな、お子様にはわからない、大人の恋が描かれた楽曲です。

悪女

恋をするのならば悪い人がいいと
心の奥の悪い私が叫んでる
聞こえないふりをしても
愛を捧げるなら良い人にあげな あああ…
胸の奥の馬鹿な私が叫んでる
あなたにサヨナラ

出典: 悪女/作詞:いしわたり淳治 作曲:滝善充

タイトルからは想像もつかぬような、なんとも切ない雰囲気の楽曲です。

切ない恋をしている女性は、悪女にはなりきれない様子

互いに遊びだと割り切っていたはずの恋なのに、いつの間にか本気になってしまったようです。

その気持ちを隠そうと、「あなたには私より似合う人がいるわ」と歌います。

「恋をするなら私がふさわしい」「でも、愛するならばもっと良い人を選んで」

そう歌いながら別れを告げる彼女。

曲中で「もう思い出すつもりもない」と告げてはいますが、その胸中はなかなか複雑なようです。

男女のもつれを描いた歌詞は、歌謡曲の本分とも言えるのではないでしょうか。

Baby どうかしてるぜ

あいつと別れておれに近づいて
もう誰も愛せないなんて
女は恋の終わりと始まりで
なぜか嘘が上手くなる

出典: Baby どうかしてるぜ/作詞:いしわたり淳治 作曲:滝善充

アップテンポでノリの良い楽曲です。

こちらは、美しい女性に翻弄される男性を描いた歌

歌謡曲はこんな風に、主人公とそのストーリーが明確に分かるのが魅力です。

元の恋人と別れ、口では「もう誰も愛せない」と言いながら、巧みに「おれ」に近づく彼女。

「おれ」は、どこにでもあるような恋を「運命」と思いこむ自分のことを「どうかしてるぜ」と思っているようです。

それでも、狂い始めた恋の歯車は止まりません。

情熱的な恋の始まりを想起させる1曲になっています。

ドレスを脱がせて

出会いを探して出かけて行くにも
ドレスは一人じゃ上手く着れないなんて
ああ あなたがいればなんて また思っているの

出典: ドレスを脱がせて/作詞:いしわたり淳治 作曲:滝善充

筆者が今作で最も好きなのがこの曲です。

恋人と別れ、新たな出会いを求めてパーティーにやってきた1人の女性。

しかし、パーティーのために着ようと思ったドレスを上手く着ることができないようです。

後ろのホックやファスナーは、誰かの手伝いがあってこそ上手く脱ぎ着ができるもの

昔の恋人は忘れ、新たな出会いを得るはずが、ドレスのせいでかえって彼のことを思い出してしまうのです。

紹介したのは1番のサビですが、2番では、帰ってきてもドレスをうまく脱げない様子が描かれています。

「彼がいなければ結局、私は何もできないのね」

そんなことを思って涙する女性の様子を、「ドレス」をモチーフに描き切った名曲です。

捨て台詞

もう味もしないだろう
なあ何度噛み締めたって
捨て台詞 そこには答えは何もないさ

出典: 捨て台詞/作詞:いしわたり淳治 作曲:滝善充

最後の曲は、9mmではなかなか聴くことのできない優しい雰囲気の楽曲です。

恋人と別れた女性を慰める男性が、この曲の主人公。

彼女はまだ元彼に未練があり、別れ際に吐かれた「捨て台詞」を引きずっているようです。

一方、主人公は彼女のことをずっと好きだった様子。

「別れ際に吐き捨てた言葉なんて何の意味もない」と彼女を諭しています。

ボロボロになった彼女を優しく見守る彼は、本当なら「俺にしておきな」くらいのことは言いたいのでしょう。

でも今はまだそんなことは言わず、ただ隣で、他の男を想って泣く彼女の涙を受け止めるのです。

二重の切なさが胸を締め付ける中、それでも愛情に溢れる男の心境を、菅原の優しい声が映し出しています。

コンサートツアー『夜のメカニズム』