シナロケは日本のロックのアイコン
YMOとの交流から生まれた名曲
かつてシーナと鮎川誠の2人の姿は日本のロックのアイコンでした。
2015年2月14日、若くしてこの世を去ったシーナ。
まだまだシーナ&ロケッツをやり尽くしたかったでしょうにとても残念です。
それでもシーナ&ロケッツが遺してきた業績はたくさんあります。
2018年のNHK・朝の連ドラ「半分、青い。」でシナロケの「ユー・メイ・ドリーム」が劇中歌に使用されました。
登場人物のユーコが「神」と崇拝していたのがシーナ&ロケッツです。
「ユー・メイ・ドリーム」の発表は1979年。
折しもテクノポップの興隆期でシナロケにもその影響がダイレクトに伝わります。
YMOの細野晴臣が鮎川誠とともに作曲を担当。
その他、プロデュースも手がけました。
ロック・バンドと日本のテクノポップの師・細野晴臣の競演は話題を呼びます。
YMOからは他にドラムの高橋幸宏、そして第4のYMOと謳われたプログラマー・松武秀樹が参加。
独特なキャンディポップが生まれます。
歌詞を中心に置いて「ユー・メイ・ドリーム」の謎を解きほぐしてゆきましょう。
シナロケのたまらないかっこよさ
鮎川誠の雑食性
「ユー・メイ・ドリーム」は4分に満たないポップ・ソングです。
シーナ&ロケッツの音楽性は非常に幅広いものでした。
ギタリストで作曲を担当する鮎川誠はブルースからパンク、そしてテクノポップまで様々な音楽に精通。
シナロケもそうした彼の影響を受けて色とりどりの音楽を演奏します。
また、近年では3Kingsというユニットで友部正人と三宅伸治とともにブルース、フォーク・ソングを奏でる。
好きなものは何でもやりとげる姿がかっこいいです。
「ユー・メイ・ドリーム」ではYMOの全面支援を受けてテクノポップに挑戦。
サンハウス時代のファンからは賛否の議論を呼びますがアルバムもシングルも大衆的な支持を得ます。
あの頃、シーナと鮎川誠が寄り添う姿は正にロック・アイコンでした。
ふたりとも家庭を何よりも大切にするいいママとパパだったのですが写真で見ると危険な香りがします。
ケバいけれども可愛いシーナと180センチの長身・鮎川誠のルックスから得る神々しさがたまらない魅力。
端的に表現すると「かっこいい」のです。
前置きが長くなりました。
「ユー・メイ・ドリーム」の歌詞を見ていきましょう。
柴山俊之によるキャッチーな歌詞
雨だれはサンバのよう
あなたの事想うと
すごく胸があつくなるの
いつもはユーウツな雨も
サンバのリズムにきこえる
出典: ユー・メイ・ドリーム/作詞:柴山俊之 Chris Mosdell 作曲:鮎川誠 細野晴臣
作詞は元・サンハウスの柴山俊之とYMOの歌詞を担当していたChris Mosdell。
キャンディポップらしい甘い甘い歌詞です。
おそらく日本語の部分を柴山俊之が書き、英語部分をChris Mosdellが担当したはず。
柴山俊之は日本のロックの草分け的存在のサンハウス時代よりリスナーの心を一瞬でつかむ作詞家。
名曲であり古典でもある「レモンティー」などがその典型です。
この「ユー・メイ・ドリーム」では恋に恋する女の子の心境を綴ります。
雨だれの音に様々な解釈を加えるのは繊細な感性かもしれません。
ただし雨だれの音を「サンバ」と重ねるのはかなりのユーモア精神。
「ユー・メイ・ドリーム」にはこうした遊び心のようなものが一貫してします。
シーナの舌っ足らずの発声がこのラインをさらに可愛くもり立てるのです。
The Doorsへのオマージュ
「キス」ではなく「口づけ」
あさもやの湖に
水晶の舟をうかべて
ちょっとだけふれる感じの
口づけをかわす
出典: ユー・メイ・ドリーム/作詞:柴山俊之 Chris Mosdell 作曲:鮎川誠 細野晴臣
リスナーの脳内に歌詞から受けるイメージが膨らむのが素晴らしいです。
「水晶の舟」はThe Doorsの名曲がヒントになるかもしれません。
The Doors、ジム・モリスンは「水晶の舟(The Crystal Ship)」の中で延々と「口づけ」について歌います。
国を問わずあらゆるロック・ミュージシャンに愛された名曲です。
柴山俊之は「Kiss」や「キス」という単語は用いずに日本語の「口づけ」を採用。
可愛いシーナが口にする「口づけ」という言葉がどこか妖艶な印象を与えます。