美しくも悲しい歌詞

今夜も血を求めて

ああ そしてひとつは君の瞼の横に
ああ そしてひとつは君の死の窓辺に
闇夜の花嫁

ああ こんなに麗しい 跪き祈りの歌を
ああ いつしか腐りゆく 跡形も無く消えてゆくRomance.

ああ そして最後の場面が今始まる
ああ 君のナイフが僕の胸に食い込む
そう深く… さあ深く

ああ こんなに麗しい 跪き祈りの歌を
ああ 今夜も血が欲しい 闇をゆき闇に溶け込む
ああ こんなに麗しい 脆き祈りの歌を
ああ いつしか腐りゆく 跡形も無く消えてゆく

出典: ROMANCE/作詞:櫻井敦司 作曲:今井寿

しかし、吸血鬼であろう主人公が飾ろうとした「綺麗な花」は、「君の死」に対するものでした。

月を消した後の「闇夜の花嫁」を飾るためだったのです。

罪悪感を覚えながらも、自らを襲う欲望には逆らえず「最後の場面」を始めるしかない主人公。

花嫁は抵抗し、主人公の胸に深くナイフを食い込ませたのでしょうか。

しかし、吸血鬼は不死なのです。

「いつしか腐りゆく」

「跡形も無く消えてゆく」

それは主人公とヒロインの間に、確かに存在したロマンス。

彼女が力の限り、目の前の胸にナイフを突き刺しても、吸血鬼は死にません。

例え死んでしまいたいと思っても、死ぬことはできないのです。

血を吸う瞬間、育んできたロマンスは腐りゆくものへと変わってしまう悲しみ。

吸血鬼である以上、自らのロマンスは決して成就しないという悲しみです。

そこから逃れることはできません。

決して覆すことのできない、永遠に続く運命。

刹那のロマンスを描いたこの曲は、深い悲しみの物語なのです。

BUCK-TICKの音楽性

ポピュラリティーの高さ

【ROMANCE(BUCK-TICK)】の意味を解説!主人公は吸血鬼…悲しくて美しい物語に感動の画像

吸血鬼を主人公に、美しくも悲しい物語を描き切った「ROMANCE」。

タイトルの通り、この曲で表現されたのは怪奇や恐怖ではなく、ロマンスだといえます。

ただし、そのロマンスは、あまりにも儚(はかな)いもの。

「跡形も無く消えてゆく」といった歌詞にあるように、刹那が表現されているのです。

まさしく、ゴシック・ロックが標榜する世界観にほかなりません。

ここで、紹介しておきたい音楽ジャンルがあります。

1980年代前半の日本のロックシーンでカテゴライズされたポジティブ・バンクです。

「ROMANCE」以上に倒錯した心の闇をえぐり、ゴシック・ロック特有の美意識を表現した曲も存在しました。

しかし、それらはアンダーグラウンドな音楽とみなされ、ポピュラリティーを獲得できなかったのも事実です。

そうした状況を覆したのが、ポジティブ・パンクの流れをくむBUCK-TICK

「ROMANCE」は週間チャート14位、「十三階は月光」は4位にランクインしました。

BUCK-TICKのゴシック・ロックはなぜ、多くのリスナーを引き寄せることができたのでしょうか。

シンプルでキャッチー

【ROMANCE(BUCK-TICK)】の意味を解説!主人公は吸血鬼…悲しくて美しい物語に感動の画像

BUCK-TICKのゴシック・ロックがポピュラリティーを獲得できた理由。

まず挙げられるのは、サウンドと歌詞のレベルの高さです。

「ROMANCE」のリフは、音楽性の境界を超えて美しいと感じられる旋律。

必要以上の気負いや装飾を削ぎ落としたボーカルスタイルも同様です。

彼らの作品は、シンプルでキャッチーなメジャーコードが多いのが特徴。

ハードであってもダークであっても。メロディアスでポップという感覚は外していません。

吸血鬼のロマンスを表現したこの曲も、おどろおどろしさは皆無。

万人に理解できる言葉を選んだ歌詞からは、メロウなフィーリングも伝わります。

極めつけは、デビューから色褪(あ)せることのない、彼らのビジュアルの美しさ。

さまざまな要素をハイレベルで融合させ続けているバンドが、BUCK-TICKなのです。

ビジュアル系という概念もジャンルも存在していなかった1980年代の映像。奇抜なヘアスタイルと、空間をねじ曲げるようなギターサウンドに注目。

時代を超える音楽性

【ROMANCE(BUCK-TICK)】の意味を解説!主人公は吸血鬼…悲しくて美しい物語に感動の画像

1987年、ビートロックなどの系譜を継ぐアルバム「HURRY UP MODE」でデビューしたBUCK-TICK。

インディーズのバンドでありながら、「バクチク現象」なるブームを巻き起こします。

音楽性の幅が広がった89年の4thアルバム「TABOO」は、ゴシック・ロックへと向かう出発点。

90年の5thアルバム「悪の華」は、彼らにとって最大のヒットを記録します。

月日は流れ、2018年3月にリリースされた21thアルバム「No.0」

「Six/Nine」以来、実に23年ぶりとなる週間チャートのトップ3入りを果たしました。

時代を超えて支持される音楽性の高さを、見事に証明してみせたのです。

機会があればぜひ、BUCK-TICKの作品を手に取ってみてください。

櫻井敦司の音楽的ルーツの1つが、1979年にデビューしたイギリスのロックバンドBauhous(バウハウス)。ゴシック・ロックのフロンティア的な存在でした。デビッド・ボウイのナンバーであるグラムロックの名曲をカバーした映像です。

BUCK-TICKの魅力を

JUST ONE MORE KISS

メジャー移籍後初のシングルとして、1988年にリリースされたのが「JUST ONE MORE KISS」

この曲が起用されたラジカセのCMには、彼ら自身が出演していました。

イントロを含めたキャッチーなメロディーと、ロマンティックな歌詞。

デビュー間もないバンドながら、芸術性とポピュラリティーを見事に両立させています。

OTOKAKEライターの解説記事に、目を通してみてください。