椎名林檎「本能」

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1999年発売のシングル

「本能」は、1999年10月にリリースされた椎名林檎の4枚目のシングルです。

当時まだ若手アーティストだった彼女にとってキャリア最大のヒット作となり、その後も現在に至るまで椎名林檎シングルで最大の売り上げを誇っています(2017年8月現在)。

オリコン週間チャートでは2位を獲得。その後もロングヒットが続き、1999年度の年間ランキングでは40位、翌年の2000年度になっても年間49位を記録しています。

表題曲「本能」は日本テレビ系「FUN」のエンディングテーマとなりました。

また、カップリングの2曲はどちらも「サントリー ザ・カクテルバー」CMソングに選ばれています。

アルバム「勝訴ストリップ」

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「本能」は、アルバム「勝訴ストリップ」に収録されています。

他にも「ギブス」や「罪と罰」などのシングルを収録したこのアルバムは、椎名林檎の鋭い個性が表れた名盤として知られています。

その内容は高く評価され、第42回日本レコード大賞ではベストアルバム賞を受賞しました。

また、椎名林檎が初めてオリコン週間アルバムチャートで首位を獲得したアルバムでもあります。

衝撃的なMVに注目

「本能」は、独特でインパクトのあるMVも有名です。

その内容は、ナース服姿の椎名林檎が拳や蹴りでガラスを叩き割っていくという衝撃的なもの。

そんな印象的なシーンは、CDのジャケット写真にも採用されて目を惹くものとなっています。

このMVの影響で「椎名林檎」=「ナース服姿の怖そうな女の人」というイメージが定着してしまった人も多いのではないでしょうか。

ハリウッドから取り寄せたというこの撮影用のガラスは、購入費や輸送費を合わせると1枚100万円にもなるのだとか。

いくら特殊ガラスとはいえ、素手で割る撮影の中で椎名林檎は手に怪我も負ったそうです。

そんな凝った演出やセットが生み出す世界観は色気とシュールさが組み合わさって、他に見られない独特のものとなっています。

MVの冒頭で拡声器を片手に歪んだ声を上げる椎名林檎の姿が印象的です。この部分は、ライブでも実際に拡声器を構えて歌われています。

「本能」の歌詞の世界観に触れる

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「本能」の歌詞は、背徳的で官能的な表現が散りばめられた大人っぽい内容です。

虚しい愛欲が描かれたその世界観に触れていきましょう。

果たされない約束はいらない

約束は要らないわ
果たされないことなど大嫌いなの
ずっと繋がれて居たいわ
朝が来ない窓辺を求めているの

出典: 本能/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

曲の頭にサビがきて、夜の関係を描く物語が始まります。

「繋がれる」ことを求める主人公。きっと相手との関係は、次に会う約束が不確実になるようなものなのでしょう。

不安定な関係だからこそ、守られると期待できない約束ではなく、いつまでも続く夜の時間を望んでいるのではないでしょうか。

「朝が来ない」=いつまでも2人の時間が続くことを願う、いじらしくて切ない歌い出しです。

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言葉なんて投げ捨てて欲に溺れる

どうして歴史の上に
言葉が生まれたのか

太陽 酸素 海 風
もう充分だった筈でしょう

淋しいのはお互い様で
正しく舐め合う傷は
誰も何も咎められない
紐 解いて 生命に 擬う

出典: 本能/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎

相手を求める欲に付き従いたいという気持ちの前では、人間が相手と気持ちを通じ合わせるための「言葉」すら邪魔に感じてしまいます。

人が動物だったころの自然のもの以外、社会自体を余計ななしがらみだと考えてしまっているようです。

全てを投げ出して、動物のように本能に任せたいと思っているのでしょう。

主人公が求めるのは、傷を「舐め合う」ような関係。決して明るいとはいえない関係だからこそ2人は夜に会います。

そして、その夜のひと時だけ、しがらみを解いて本能のまま生きていることができるのです。