NHKロンドンオリンピックのテーマソング

風が吹いている

ロンドンオリンピックは、2012年7月27日から8月12日の間、イギリスの首都ロンドンで開催されました。

このロンドンオリンピック、さらにパラリンピックのNHK放送テーマソングとして起用されたのが、いきものがかりの「風が吹いている」です。

オリンピックのテーマソングとして有名なのは、アテネオリンピックのテーマソングとなったゆずの「栄光の架橋」ですが、いきものがかりの水野良樹は制作する上でこの楽曲の持つパワーやイメージにかなり振り回されたそうです。

しかし、そんなゆずの「栄光の架橋」を意識しつつも、いきものがかりらしさを詰めこんだまっすぐな応援ソングは完成しました。

そして、一つの時代を象徴する楽曲として、世の中に届いたのです。

アルバム「バラー丼」「I」

いきものがかり「風が吹いている」NHKロンドンオリンピックのテーマソング!歌詞情報ありの画像

そして、「風が吹いている」はリリース後、2012年12月19日にアルバム「バラー丼」に収録されることとなりました。

またこちらは特殊な収録のされ方をしていて13曲目のシングルバージョンとは別に1曲目にも「風が吹いている -UK recorded version-」といって、井上鑑の編曲による新しく録音されたバージョンが収録され、1枚のアルバムの中に同じ曲が2曲収録されています。

1曲目の方はシングルバージョンよりもオーケストラ色が強く、クラシックに寄ったアレンジが施されています。

また曲の構成も手直ししたことで、9分以上の演奏時間になりました。初めての海外レコーディングにも挑戦した1曲になっています。

このアルバムはいきものがかりとしては初めてのバラードベストアルバムであり、「風が吹いている」はアルバム初収録がベストアルバムとなりました。

そしてその後、本作は6枚目のアルバムである「I」にも収録されました。

このようにシングルのA面曲として先にベストアルバムに収録され、その後にリリースされたオリジナルアルバムに再び収録されたのはこの曲が初めてのことで、異例な楽曲となりました。

いきものがかり「風が吹いている」NHKロンドンオリンピックのテーマソング!歌詞情報ありの画像

歌詞を紐解く

いきものがかり「風が吹いている」NHKロンドンオリンピックのテーマソング!歌詞情報ありの画像

今を生き、共有していく

それでは「風が吹いている」の歌詞を紐解いてみましょう。

時代はいま 変わっていく 僕たちには願いがある
この涙も その笑顔も すべてをつないでいく

出典: 風が吹いている/作詞:水野良樹 作曲:水野良樹

オリンピックは4年に1度の一大行事であり、そこに向けて頑張ってきた選手たちの姿がフューチャーされる大きな出来事です。

また4年の間には選手の引退もありますが、もちろん新たにヒーローが生まれる可能性もあります。

世代が変わっていくその流れは、まるで時代が変わっていくようです。

しかし、国を背負って「メダルを取る」という一つの目標に向かって努力する選手の想いはいつの時代も変わることなく、昔から脈々と受け継がれています。

そこには悔しさも、喜びも孕んだストーリーが紡がれていることでしょう。

風が吹いている 僕はここで生きていく
晴れわたる空に 誰かが叫んだ ここに明日はある ここに希望はある
君と笑えたら 夢をつなぎあえたなら
信じあえるだろう 想いあえるだろう この時代を 僕らを この瞬間(とき)を

出典: 風が吹いている/作詞:水野良樹 作曲:水野良樹

その時代にしかないもの、感じられないものを共有していくような歌詞になっています。

このセクションだけで3回出てくる「ここ」という言葉。これは「自分の居場所」を表現しているのではないでしょうか。

選手にとっての「居場所」はそのオリンピックの舞台であり、その大きな舞台では強いメンタルが必要とされます。

4年間の努力をその一瞬に懸け、日頃の成果を発揮しなければなりません。そのプレッシャーは計り知れないもののはずです。

しかし、その舞台こそ自分が生きていく場所で明日や希望を生む場所だと歌っています。

そうやって強い気持ちを持ってチャレンジすることで、追い風のようなたくさんの人の応援や想いを背負って、ひとつの時代を切り開いていくことができるのではないでしょうか。

いきものがかり「風が吹いている」NHKロンドンオリンピックのテーマソング!歌詞情報ありの画像

言葉にできないこと 涙が溢れること
ふるえる心で感じたすべてが 僕のいままでをつくってきたんだ
出会いと さよならとが 決意(おもい)を強くさせた
手を振り誓った あの日があるから 僕らはここにいるんだ

出典: 風が吹いている/作詞:水野良樹 作曲:水野良樹

ここまでの練習の中で培ってきたこと、それは言葉にできないほどの喜びや、上手くいかない悔しさです。

形は無くても、心を動かした、そして、揺さぶった感情がもっと先へ進もうと背中を押してくれていました。

また、1人では競技は成り立ちません。

ここまでしのぎを削りあってきた戦友やライバルがいてこそ、さらに想いを強くし高みを目指すことができ、大きな舞台を掴み取ることができたのです。

優しい歌 聴こえている 背中を押す言葉がある
このいのちよ この一瞬よ 誰かの光になれ

出典: 風が吹いている/作詞:水野良樹 作曲:水野良樹

ここはアテネオリンピックのテーマソングになったゆずの「栄光の架橋」を意識しているのではないでしょうか。

2004年、選手たちは間違いなくこの曲で背中を押されていました。

それを知っているからこそ、今度はいきものがかりの歌を、「風が吹いている」を選手の背中を押す曲にしなければという決意が感じ取れます。