やりました よくできました ちゃんと目を見て手を取り合って
出典: ニガツノナミダ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
ギターソロを挟んで一瞬のブレイク。
ノイジーな余韻に包まれた後に本音の世界感が現れます。
まずは自分を自分で褒めてあげる。
だって企業CMのために30秒間頑張ったから。
俺たち、偉い!
コンセプト、キーワード、そして30秒CMという制約に「しばられて」の楽曲制作。
嫌がるミュージシャンもいることでしょう。
もしかしたら数年前のクリープハイプなら断っていたかもしれません。
でもやり抜いた!
だから後は好きにやらせていただきます、とばかりに曲調もガラリと変わります。
「しばられるな」にしばられることを楽しむ
30秒真面目に生きたから 残りの余生は楽しみたいなら
しばられるな もうしばられるな でも「しばられるな」にしばられてる
出典: ニガツノナミダ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
ソフトバンクとのコラボに際し尾崎世界観はこうコメントしています。
Q.「クリープハイプがしばられたくないものは?」
A.「僕は逆にしばられたい」
もちろんマゾヒズムのお話ではありません。
様々な制約に縛られること、その中でいかに自由にロックを楽しむか?
そこでメンバーが出した返答が30秒以降の変調とストレートな歌詞なのです。
クライアントの要望に応え、ファンの期待も裏切らない。
クリープハイプ、意外と持ってる社会性!
そして彼らほど誠実に「ロック」と誠実に向き合っているバンドは珍しいのではなでしょうか?
君たちの言いたいことは分かってますよ♪
魂、どうぞご自由に♪
あいつ魂売りやがったって 使い放題だから安心だ
出典: ニガツノナミダ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
クライアントがソフトバンクでキーワードが「Wi-Fi」「速度制限」「SNS」。
下手したらSNSで炎上しかねない世の中です。
しかし彼らはそもそもそんなことは気にしません。
むしろ「炎上、上等」くらいに感じているのではないでしょか?
そもそもメジャーレーベルで商業音楽をやっていることを自覚しているのです。
SNSでの炎上は薄っぺらな正論をぶつけてくるもの。
ならば正論には先に正論でアンサーを。
自分の魂なんだから好きに使わせていただきます。
このシニカルな雰囲気はむしろクリープハイプのファンにはご馳走なくらいですが...。
いつも変りなく素直すぎるクリープハイプ
逆ギレしながら あてもなく走った
結局欲しいのは 他人の評価で
出典: ニガツノナミダ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
自らの魂をどう使おうと勝手でしょ?
そんなドキッとする言葉遣いには尾崎世界観の覚悟も含まれています。
なぜなら文句を言われて傷つくのは自分だと分かっているから。
むしろ「クリープハイプが好き」と言ってくれるファン。
そしてコラボレーションに選んでくれたソフトバンクや広瀬すずさんにも迷惑がかかるかも?
そう思っていても全てを覆い隠さずに歌にしてしまうのが彼の性格なのです。
だから『ニガツノナミダ』をたくさんの方にてらいなく聴いていただきたいと思います。
素直な気持ちで格好いいものは格好いいと伝えてあげたいです。
何よりも彼ら自身がそのことを望んでいることを隠さず歌っているのですから...。
締め切りも制約も悪くないんだ
締切に抱きしめられて 制約にくるまって眠る
それはそれで悪くないから ここはここ
出典: ニガツノナミダ/作詞:尾崎世界観 作曲:尾崎世界観
「しばられるな」にしばられて制作された『ニガツノナミダ』。
前述したように彼らはその環境をむしろ無邪気に楽しんでいるようです。
このラストのフレーズは多くの方が共感できるのではないでしょうか?
仕事をして対価としてなにがしかの利益を得る仕事というものを多くの方が経験しているのです。
どんなに好きで選んだ仕事にも締め切りや制約は付いて回ります。
結局ここに帰ってくるんだな...。
『ニガツノナミダ』は2019年の素顔のクリープハイプがそのまま表現された楽曲です。
痛快なほど尾崎世界観節が光る30秒後のパート。
そこも含めてこの曲はクリープハイプにしか書けないバレンタインソングなのです。
好きか嫌いかは皆さんの判断を仰ぐことにしておきましょう。