この曲の歌詞の主人公をPerfumeの3人と設定しましょう。
故郷・広島で夢を見ていた3人。
当時の3人の夢がどれくらい大きいものだったか。
それは私には推し量ることはできません。
しかし、大きな夢を抱いていた3人は遠い「宇宙」を目指していた。
この「宇宙」を「東京」と捉えれば、当時の3人の上京と合致します。
東京までの道のりは遠い。
ただ物理的な道のりが遠いだけではありません。
東京に行っても成功しないかもしれない。
挫折してまた広島に戻ってきてしまうかもしれない。
そんな不安が「遠い」という距離によって表されているようにも読めます。
しかし、成功するまでは故郷へは戻らないと3人は決意します。
だからこそ、3人は「片道切符」しか求めないのです。
3人は東京への憧れを胸に、片道切符を探します。
誰かが見てくれるはず…!
気付いてくれる人がいる
誰も見向きもしなくても
肩を組んで笑ってきた
僕らはきっと負けない
出典: STAR TRAIN/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ
片道切符を手に入れて「宇宙」である東京にたどり着いた。
しかし、最初から順風満帆な人生を歩むことができるわけではありません。
最初から愛してくれる人は少ない。
最初から全てを受け入れてくれる人は稀です。
でも、誰かが気付いてくれる。愛してくれなくても、意識してくれる人がいる。
上京したばかりのときはまだ現在のような数多くのファンは存在しなかったかもしれない。
でも、どこかで見てくれる人がいると信じる。
そして、3人で肩を組み、笑いながら東京で戦う。
「きっと負けない」という歌詞の「きっと」という言葉も深い意味を持っています。
「負けたくない」という強い願いも、「負けるかもしれない」という不安も混じっている。
東京で活動を始めた当時の3人の複雑な心情を読み取ることができます。
この不安と期待が入り混じったような感情は「ワンルーム・ディスコ」でも歌われています。
新しい場所でやっていけるかな
部屋を片付けて 買い物に出かけよ
遠い空の向こう キミは何を思うの?
たぶん できるはずって 思わなきゃしょうがない
出典: ワンルーム・ディスコ/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ
「ポリリズム」で大ブームに!
地道な活動を続けてきたPerfumeは2005年にメジャーデビューを果たします。
現在でも代表曲として親しまれている「リニアモーターカーガール」などを発表。
徐々に人気を広げていきます。
そんなPerfumeに大きな転機が訪れたのが2007年。
公共広告機構のCMで使用された「ポリリズム」が大きな話題を呼ぶのです。
問い合わせが殺到し、Perfumeの名前は全国に広がっていきます。
その後は様々なライブ、音楽番組に出演。人気を不動なものにしていきます。
大きな宇宙にたどり着き、不安や期待と戦いながら努力を続けてきたPerfume。
手探りで見てきた夢が、ここで実現するのです。
未来への眼差し
「未来」と歌詞
ここまではPerfumeの「過去」と歌詞の関係を探ってきました。
過去と歌詞を照らし合わせると、東京にきたPerfumeの複雑な心情が読み取れます。
しかし、彼女たちは過去だけに目を向けているわけではありません。
これまでの歴史を大切に思いながら、視線は未来へと向けられているのです。
では、次に「未来」というワードと歌詞を照らし合わせると何が見えるのか、分析しましょう。
違った「宇宙」
もう一度、冒頭の歌詞を振り返ってみましょう。
手探りで夢をみる
何もない ただ信じて
宇宙(そら)までが遠いほど
片道切符を求めて
出典: STAR TRAIN/作詞:中田ヤスタカ 作曲:中田ヤスタカ
過去と照らし合わせれば「宇宙」は東京、「片道切符」は東京までの切符でした。
ところが「未来」と照らし合わせるとまた違う姿が見えます。
そこでヒントになるのがWORLD TOURの存在です。
そう、現在の彼女たちにとって「宇宙」は「世界」なのです。
日本だけに止まらず、彼女たちの視線は世界中に向けられている。
そこまでPerfumeは進化してきました。
世界中の人間を振り返らせるために。
世界中の人間を楽しませるために。
Perfumeは新たな「片道切符」を探し求めるのです。