彼奴も馬鹿だ。こいつも馬鹿だ。
褒めちぎる奴等は皆馬鹿だ。
群がる烏合の衆、本当の価値なんてわからずに。
まぁ、それは僕も同じか」
出典: 盗作/作詞:n-buna 作曲:n-buna
自分の力で周囲を認めることができなかった悔しさ。
そして、未だに自分を満足させることができずにいる悲しみを抱えている主人公。
誰にも話すことのできないどうしようもない気持ちは、マイナスな感情として表に出てきてしまいます。
自分に向けられる褒め言葉も、もはや虚言にしか聞こえません。
音楽の本質など理解しようともせず、ただ上っ面の「良さ」で曲を語る人々……。
本当に曲を知ろうとしていないからこそ、彼の曲が「盗作」であることに気がつけないのです。
そんな彼らを馬鹿にし、さげすんだ目で見ている主人公。
しかし本当は彼こそが、音楽の本質を理解できていない人間なのです。
どれだけ盗もうとも
嗚呼、何かが足りない。
これだけ盗んだのに少しも満たされない。
上面の言葉一つじゃ満たされない。
愛が知りたい。金が足りない。
この妬みを満たすくらい美しいものを知りたい。
出典: 盗作/作詞:n-buna 作曲:n-buna
欲望を満たすことのできない悔しさから、次々に盗作を重ねていく主人公。
繰り返せば繰り返すほどに、罪の意識は薄いものへと変わっていきます。
そして、盗んだ分だけ感動が待っていたかというと……もちろんそうではありません。
自分に欠けている「何か」に気づくことができなければ、主人公は一生このまま変われないでしょう。
周りには、彼の音楽を「愛している」と述べる大勢の聴き手が待っています。
しかしそれらは皆、彼の本質を見抜くことができない人々。
まさか彼が「盗作」をするほどに悩んでいるなど、誰1人として思っていないのです。
そして、そんな彼らの言葉など耳も貸さない主人公。
両者の間に、その溝を埋めるだけの愛情があるはずもありません。
純粋な気持ちを失ってしまった主人公
もう後には引き返せない
「音楽の切っ掛けが何なのか、
今じゃもう忘れちまったが欲じゃないことは覚えてる。
何か綺麗なものだったな。
化けの皮なんていつか剥がれる。
見向きもされない夜が来る。
その時に見られる景色が心底楽しみで。
出典: 盗作/作詞:n-buna 作曲:n-buna
今だからこそ欲望にまみれた状態の主人公ですが、最初は決してそんなことはありませんでした。
ただ1つの楽曲に心を動かされ、未来を変えるほどの希望を感じた純粋な気持ち……。
今はもう思い出せないけれど、あの頃のまっすぐな自分は誰が見ても応援したくなる姿だったはずです。
しかし現在の自分はというと、まるで別人のように変わってしまっていて……。
キラキラと輝いて未来を追いかけていたあの目は、もうにごりきってしまっています。
もう後には引き返せないと分かっているからこそ、後は欲望のままに追い求めるだけ。
自分の楽曲に希望を感じた人たちが、いつかはその「本当の姿」に驚き、絶望する日が来るでしょう。
その日に感じるのは、今まで出会ったことのない感情のはずです。
今はただそれだけを楽しみに……光を失った未来を歩き続けるだけです。
本物を追い求めて
そうだ。
何一つもなくなって、地位も愛も全部なくなって。
何もかも失った後に見える夜は本当に綺麗だろうから、
本当に、本当に綺麗だろうから、
僕は盗んだ」
出典: 盗作/作詞:n-buna 作曲:n-buna
たくさんの楽曲で溢れている社会の中で、本当に輝く1曲に出会えるのは奇跡ともいえます。
これまで聴いてきた楽曲のほとんどが、自分にとって「本物」といえるものではありませんでした。
だからこそ、本物を追い求めるために盗作を続ける主人公。
真実が明るみに出て、全ての希望が断たれたその時に見る景色は、何よりも輝いているはずです。
たくさんのものを抱え、満ち足りた気分でいる限り、本当の美しさに気づくことはできません。
空っぽの自分で、何のフィルターもかかっていない目で見た世界は、「綺麗」そのもの。
その時初めて、あの頃の感情を取り戻すことができるのです。
ヨルシカの概念を覆す楽曲
周りの声など無意味かのように
嗚呼、まだ足りない。もっと書きたい。
こんな詩じゃ満たされない。
君らの罵倒じゃあ僕は満たされない。
まだ知らない愛を書きたい。
この心を満たすくらい美しいものを知りたい。
出典: 盗作/作詞:n-buna 作曲:n-buna
ついに彼の盗作が世間に知られることとなり、今までの絶賛は全て批判に変わってしまいました。
素晴らしいと褒め称えた同じ口で、あり得ないと叩く人々……。
しかしそんな心ない言葉の数々も、主人公の心を打つことはできません。
彼に冷たい言葉を投げつける人の中には、彼の音楽に心から感動した人もいるはずです。
そんな人々の存在すらも、彼は「馬鹿馬鹿しい」と一蹴してしまうことに……。
そう、彼が始めから追い求めているのは、地位でも名誉でもありません。
ただひたすらに自分の欲望を満たすためだけに活動してきたにすぎないのです。
彼に残されているのは、空っぽの世界で感じることのできる「希望」だけ。
その希望の光を追い求める限り、彼はが足を止めることはありません。