斉藤和義は最後のラインで大どんでん返しを思わせるワードを挿入しました。
それが「嘘」という言葉です。
これは誰の「嘘」でしょうか。
君が「嘘」をついて僕に内緒で新しい男性を選んだことかもしれません。
しかしその解釈では歌詞はオートリバースのように裏返されたりはしないのです。
そうなると次に思い浮かぶのは僕の隠された思いでしょう。
君の幸せを祈るという僕の言葉が「嘘」の正体であったとしたらと考えると途端に怖ろしくなります。
ただ、そもそも僕にこの先の愛を断念させるほどの存在感が君にはあったと考えられるでしょう。
この恋愛で最後でもいいと僕に思わせてしまうほどの君の魅力については何となく推察できます。
その君が明日からは誰とも知れない男性のもとへゆくのです。
若い僕はどこかで君の幸せを祈れない葛藤を胸に秘めていても不思議はありません。
もうひとつの「嘘」の可能性は僕にとってこれは最後の恋ではなかったという事実でしょう。
1980年代の青春を振り返っているのですから僕はもういいおじさんです。
その僕が1980年代で恋を終えて以来、一切恋愛をしなかったなどというのは考えられません。
旅立つ君への餞の言葉として僕の方はもう恋愛をしないよと「嘘」をついた可能性もあります。
斉藤和義が最後のラインで書いた「嘘」というワードはそれほどこの歌詞の解釈を厄介にしました。
しかし彼の作家性のようなものはこうしたところに現れます。
歌詞というものはアーティストのもとから放たれて私たちリスナーの耳元に届くものです。
アーティストは自由に想像するために設定に一定のユルさを持たせます。
私たちリスナーはこうしたユルい隙間のようなところに想像の羽を広げるのです。
「オートリバース~最後の恋~」
僕の諦念や脱力感が全面で展開されています。
愛を幻とも歌う不信感さえ吐露されました。
しかしやはり僕はこの恋を最後に愛から立ち去ったとは考えにくい時代設定があります。
「嘘」という最後に登場するワードに私たちは動揺させられました。
そしてその「嘘」の実態が曝け出される朝が訪れる前にこの曲は終わります。
この夜の中に私たちリスナーは囚われてしまったように楽曲が終了するのです。
朝が訪れるまで私たちリスナーは謎を解きたい一心で眠れないかもしれません。
そこまで僕の心境を探ろうとすることができたならば今や遠い1980年代の記憶も救われます。
忘れてしまうよりも思い出してあげるような仕草で遠い日の愛の記憶を「再生」して救済しましょう。
1980年代を知らない若いリスナーにも不器用ながらに精一杯生きた記憶があるはずです。
記憶の「再生」は私たち人間に与えられた優れた特性でしょう。
その特性をフルに役に立てたいならばオートリバース仕様のあの懐かしいテープレコーダーが重宝します。
ここまで読んでいただいでありがとうございました。
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