映画「キネマの神様」の主題歌に起用
【うたかた歌】は2021年8月6日(金)に公開の「キネマの神様」の主題歌に起用されました。
「キネマの神様」は原田マハさんの小説を映画化した作品で監督を山田洋次さんが務めています。
志村けんさんが主演を務める予定であったことでも有名な作品です。
元々【うたかた歌】は主題歌として起用される予定の楽曲ではなかったそうです。
クランクアップ後にRADWIMPSの野田さんから山田さんへ感謝の気持ちとしてこの歌を贈ったのだといいます。
デモ音源を聴いた映画プロデューサーが感動し起用が決定されたということに驚くでしょう。
同曲の起用エピソードもまたひとつのドラマのようでファンにとっては嬉しい話題となりました。
RADWIMPS【うたかた歌 feat.菅田将暉】
同曲は2021年4月30日に映画の予告映像内で音源初解禁となりました。
野田さんと菅田さんのコラボということで二人の歌声を待ち望んだファンが多くいたそうです。
歌詞ごとに歌い分けられている様子が、共に働き夢を見ていた劇中の二人と重なります。
優しく透き通るほど美しいのに力強く胸に響く歌声に、予告から「泣ける」と大きな反響を得ました。
【うたかた歌】
主人公ゴウに寄り添い書いていたが、自身が演じたテラシンの気持ちも混ざったと野田さんは語ります。
作品の中でゴウとテラシンは同じ撮影所で働き、夢と苦楽を共にした仲間でした。
ゴウを演じた菅田さんと、テラシンを演じた野田さんが一緒に歌うからこそ響くものがあるのでしょう。
歌詞に込められているもの
前章で述べた通り、同曲はクランクアップ後に野田さんが感謝の意を込めて作成した楽曲です。
志村けんさんの急逝や、新型コロナウイルスの影響による二度の公開延期など予期せぬ事態が重なりました。
決して順調ではなかった作品制作の中での出来事やその時々の想いを込めて歌詞を書いたと野田さんは語ります。
撮影を進めていく中、長い時間と様々な壁を共にしてきたからこそ思い紡がれることばがあるのでしょう。
「キネマの神様」という作品があったからこそ生まれた楽曲なのです。
想いを馳せる夜
遠い記憶の中の君
ねぇやりきれない夜だけ
君を思い出してもいいかい
出典: うたかた歌 feat.菅田将暉/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
最初の歌い出しで、まるで語りかけられているような気持ちになり一気に音楽へ引きこまれます。
この短いフレーズで心がグッと掴まれるのです。
優しいのに力強く響く歌声は聴いていて心地良くなります。
やりきれない夜とはどんな夜なのでしょうか。
信じていた人に裏切られたり、一生懸命頑張ったことに成果が出なかったのかもしれません。
目指すものがあってコツコツと積み上げてきたものが突然0になってしまったのかもしれません。
頑張ってもどうにも出来ないもどかしさがあるのでしょう。
やり場のない悔しさみたいなものを読み取ることができます。
やるせない気持ちを抱えた夜は甘い思い出にすがりたくなるものです。
君と愛おしくて温かくて優しい日々を過ごしていたのでしょう。
いまは失くしてしまっている時間なのかもしれません。
ですが鮮明に残る大切な記憶の中に帰って慰めてもらえたらと想うのです。
思い出の中の君
君の手垢だらけのこの記憶だけど
ねぇ僕のものでしょう?
出典: うたかた歌 feat.菅田将暉/作詞:野田洋次郎 作曲:野田洋次郎
主演がまるで君かのように、僕の思い出の中には君ばかりが登場するのでしょう。
あまりに君ばかりの記憶に、僕自身の記憶なのかどうか疑ってしまうほどです。
仕草や癖、話し方や好きなものなど、側にいる人の影響を多く受けることはよくあります。
僕は君から影響を受けたものが多いでしょう。
すっかり君に染められている僕の頭の中はどうしたって君でいっぱいなのです。
記憶の中にいる君に僕はいつも救われて前を向けるのかもしれません。
君と共に過ごした温かな記憶を僕の好きにさせてほしいと思っています。
思い出の中、僕の頭の中でだけでもまた君の側に僕を置いてほしいのです。
僕を励ましてくれるのは
野田さんの書く詩は聴き手に問いかけるような語りかけることばがよくあります。
透明で綺麗で儚げなのに、胸にしっかりと重く響く歌声に虜になってしまうでしょう。
生きていると辛く高い壁にぶつかることもあります。
立ち直れないような出来事に悲しみに更けて落ち込む夜もあるでしょう。
大切なものを失ってしまうことは想像することさえ嫌になるほどです。