槇原敬之「もう恋なんてしない」とは?
「もう恋なんてしない」は1992年5月に発売されたシンガーソングライターである槇原敬之さんの5枚目のシングルです。
「もう恋なんてしない」は、当時槇原さんのサポートキーボディストをつとめていた本間さんという人が楽屋で槇原さんに失恋した話をしたことがきっかけでできたそう。
槇原さんが「本間さんの元気になる曲を作りますよ」と「もう恋なんてしない」を作詞作曲したそうです。
この曲は槇原さんが本間さんのために心を込めて書いた歌詞なのだと思うと、「もう恋なんてしない」は槇原さんの人間性の良さからくるものでも人を惹きつける魅力がある曲なのかもしれません。
槇原さんは良い人であることで有名ですが、とても仲間想いの素敵な人ですよね。
本間さんは、歌詞を聞いて「元気になれる曲だけど俺の失恋は槇原の書いた歌詞のように良い話じゃないんだよな」と言っていたそうです。
「もう恋なんてしない」の歌詞の文法はおかしい?
「もう恋なんてしない」の歌詞の文法はおかしいという疑惑があるということでしたが、具体的にどのあたりがおかしいのでしょうか?
そんなこといちいち考えて曲を聴くわけないという人がほとんどかと思いますが、予備知識として持っておくのも良いかもしれません。
歌詞が二重否定になっている
さよならと言った君の
気持ちはわからないけど
いつもよりながめがいい
左に少しとまどってるよ
もし君に1つだけ
強がりを言えるのなら
もう恋なんてしないなんて
言わないよ絶対
出典: もう恋なんてしない/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
今回ご紹介している「もう恋なんてしない」の最大の特徴は、サビであり一番伝えたい気持ちを込めている歌詞に“二重否定”を使っていることでしょう。
上に記載している部分がまさにその部分なのですが、ここでは文法でいうところの“二重否定”が使われています。
二重否定とは一般的に“強い肯定”表現をしたい時に使います。
「もう恋なんてしない」の歌詞を使って二重否定による“強い肯定”を説明すると次のようになります。
1:(もう)恋なんてしない→恋をすることに対する1回目の否定=(もう)恋はしない
2:(もう恋なんてしない)なんて言わない→恋することへの“否定を否定(2回目の否定)”→つまり恋をしないことを否定するので肯定に。
3:最後に“絶対”をつけることで肯定の気持ちを強調→(二重否定によって恋をすることを肯定しているので)恋をするよ絶対、となる。
結局このサビで伝えているのは、“この先も絶対恋をしてしまう”というシンプルな内容なのです。
歌詞に部分否定が含まれている
君がいないと何にも
できないわけじゃないと
ヤカンを火にかけたけど
紅茶のありかがわからない
出典: もう恋なんてしない/作詞:槇原敬之 作曲:槇原敬之
この歌詞からわかるように、二重否定以外に部分否定があります。
「できないわけじゃない」と言う部分ができない+わけじゃないという風になり、とても上手にはできないけど、少しはできるよとなります。
これは先ほどの「もう恋なんてしないなんて言わない」より少し弱い強調ですが、「少しはできるよ」というように「できない」とは逆の意味になります。
この2つの文法の違いとはどんなものなのでしょうか?
ここまで、二重否定と部分否定を紹介してきましたが、この2つの文法の違いとはどんなものなのでしょうか。
最初に紹介した二重否定とは、もともとの文と逆の意味にする働きがあり、もともとの文とは逆の意味の文になる+その意味を非常に強調する働きがあります。
そして、次に紹介した部分否定とは、もともとの文と逆の意味にする働きがあり、もともとの文とは逆の意味の文となる+その意味を少しだけ強調する働きがあります。
そのため、二重否定より文章の意味を強調する働きが弱って伝わります。
どうしてこのような文法になるのか?歌詞の意味から解く
「もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対」と言いながらも、本心は「もう恋なんてしない」と恋をすること自体やめていしまいたいと思うほど、別れがとても辛かったのかもしれません。
ですが、「こんなにつらい思いをするなら、もう恋なんてしない」と、そう思えるくらい相手のことが好きだったのです。
そして、この文法の二重否定でそのあとに、「言わないよ絶対」が続いているということは、こんなつらい思いをするならもう恋なんてやめたいという思いを打ち消しているのです。
なぜなら、その理由は2番の歌詞にありました。