アルバムコンセプトは旅?
アナログな和とデジタルのボーカロイドによって紡がれる羽生まゐご独自の世界。
和音階のバンドサウンドに乗るボーカロイド特有の高音域の歌声が、羽生まゐごの世界観ともいえるでしょう。
このアルバムの世界観を読み解く際にポイントとなるのは楽曲の配置です。
そこにも注目していきましょう。
アルバムのクロスフェイド公開
アルバムが持つストーリー
アルバムの1曲目は「現世巡り」。そして最後は「ケガレの唄」です。
1 現世巡り
2 懺悔参り
3 ツキモノ
4 冥々
5 地獄はどこですエンマさま
6 夢喰いの祭り
7 底無しのコダマ
8 ハレハレヤ
9 降らぬ先の傘
10 風の東屋
11 夏の依り代
12 阿吽のビーツ
13 ケガレの唄
出典: 浮世巡り/羽生まゐご
『浮世巡り』と名づけられた本作は、どこか違う視点からこの世の中を見ているように感じます。
そしてそれは、優しい痛みを感じるような楽曲と共に現世を巡る旅をしていくのです。
旅の始まりはここから
大抵この世のまやかしは
泡沫
ならばまた次の夜へ
さすらいの夢
出典: 現世巡り/作詞:羽生まゐご 作曲:羽生まゐご
現世に生きていて、まやかしに出会わない人はおそらくいないのでしょう。
しかし、虚言や虚構に出会ったところでそれに雁字搦めになることもありません。
時間に限りがあるからこそ足を止めずに動き続けなければならないのが現世なのです。
『浮世巡り』という旅はここから始まります。
この旅はただの旅行というよりも、この世界ならざるどこかとこの世界との邂逅の旅。
リスナー自身もこのアルバムを通して、「浮世」を巡ることになるのでしょう。
気になるタイトルの「カタカナ」
このアルバムにはYouTubeで人気を博した楽曲が数多く収録されています。
アルバムオリジナル楽曲として「ツキモノ」や「底無しのコダマ」がラインナップ。
ずらり13個並んだ楽曲名を見て、とある特徴に気付きます。それは「カタカナ」です。
例えば「エンマさま」は「閻魔様」でもいいでしょうし「穢れ」の唄と書いても意味が通ります。
羽生まゐごのこだわり、と片付けてしまうのは簡単ですが何か意味があるのだと推測しました。
あえてカタカナにしているのはなぜでしょうか?
羽生まゐごがカタカナに込めた思いとは
例えば「地獄はどこですエンマさま」の歌詞内では「閻魔さま」と表記されています。
タイトルのみカタカナなのです。
ボーカロイドによる歌詞表現に対して、一種の無機質感と不安定さをタイトルに込めているのではないでしょうか。
「閻魔さま」や「穢れ」などは漢字が持つ印象がとても強く、解釈の自由度を制限し、世界を狭くしてしまいます。
あえてカタカナで表記することにより、別の解釈が生まれる広さや余裕を確保することができるのです。
閻魔さまが持つ荘厳で重たいイメージをカタカナ表記した意味。
それはMVを見ることで感じ取れるかもしれません。