注目!!
ここで注目していただきたいのは、「記憶が思い出を描いていく」という表現。
とても素敵な表現ですよね。
たしかに、“記憶”と“思い出”は似て非なるもの。
記憶はただのデータに近いですが、思い出は物語に近いというか……。
そして“描く”という表現が、タイトルの「canvas」に通ずるポイント。
さりげなくもキレイに構成されていますね。
終電へと早歩きの君と僕 云う事なき僕の思いは遠く
頬に流れる涙は何を言うの全ての思いを僕に教えて
出典: canvas/作詞:YUHEI MIYAZATO 作曲:YUHEI MIYAZATO・IZUMI NAKASONE
再び男性の視点。
冒頭で別れていることから、ここは回想シーンのようなものでしょうか。
終電までたくさん話し合ったのでしょう。
結果別れることになった帰り道、駅へと急ぎながら彼女は泣いています。
え……?振ったのそっちなのになんで……?
HY流の繊細さやおしゃれさをとっぱらって書くと、男の気持ちはこんな感じ。
女の気持ちなんてわかりませんよね。
(だから私も女なんですけど)
無理だとしても心の中に「君を描けるよ」
素直に言えない僕が嫌になっていくんだ
出典: canvas/作詞:YUHEI MIYAZATO 作曲:YUHEI MIYAZATO・IZUMI NAKASONE
続くこちらも男性の視点。
やや難解な詞ですよね。
単純に文法に沿って考えましょう。
まず、「君を描けるよ」というのは、「」がついていることからセリフであることが分かります。
それが心の中に浮かんでいるわけです。
前からの流れと合わせて考えると、
“●●するのは無理だとしても、心の中には「君を描ける」がある。”ということ。
うーん。意味不明。(失礼)
では、「何が無理なのか」を考えてみましょう。
次の文に注目すると、“素直に言えない”とありますよね。
このことから、男性は“素直に言うのが無理”ということが分かります。
まとめると、
「君を描けるよ」という思いが溢れているのに、伝えられない自分が嫌になる……
そんな心情を歌っているようです。
え……「君を描けるよ」って何……?
これを読んだ誰もがそう思ったと思います。
なぜなら、書き手である私もそう思ったから。(笑)
「描く」というのは、表現するということですよね。
君を表現することができる
↓
君がどんな存在かを表現することができる
↓
君は大切な存在である(※表現した結果)
つまり、「好き」っていうことだと思います。
(きっとみなさん想像してたと思いますが)
それをタイトルの「canvas」にかけて表現したのではないでしょうか。
続く2番の歌詞は…
静まる夜の海岸線 白い吐息と月の光
見つめ合う二人をそっと優しく包んでゆくの
出典: canvas/作詞:YUHEI MIYAZATO 作曲:YUHEI MIYAZATO・IZUMI NAKASONE
2番の出だしは、女性の視点から始まります。
冒頭で別れているため、こちらも回想シーン。
「白い吐息」とあるので、季節は冬だったのでしょうか?
別れ話は冬の海辺で行われたようですね。
君と歩幅合わせる僕 切り出せない伝えたい気持ち
離れていきそうな君を見つめてると言えなかった
出典: canvas/作詞:YUHEI MIYAZATO 作曲:YUHEI MIYAZATO・IZUMI NAKASONE
こちらは男性の視点。
恐らく、先程でてきた終電へと向かうシーンでしょう。
彼女に歩幅を合わせて歩いていたんですね。
そんな優しい彼なのに。
いや、そんな優しい彼だから。
離れていく彼女を見ていたら、「まだ好き」って呼び止められなかったわけです。
大きな夜空ちっぽけな僕 幾千もの星 勇気に変えて
出典: canvas/作詞:YUHEI MIYAZATO 作曲:YUHEI MIYAZATO・IZUMI NAKASONE
このフレーズを歌うのは、仲宗根泉さん。
しかし、一人称は「僕」なんですよね。
とはいえここは男性の視点。
彼女が乗った終電が過ぎ去ったホームから見た空でしょうか。
輝く星から、彼は勇気をもらったようです……!
しかし……!
君が去った後に僕は伝えもしない言葉を吐き出して
後悔が僕を襲い 何もかも奪い去っていくんだ
自信と優しさをくれた君は夜空の闇へと消えてゆく
優しい笑みを見せて
出典: canvas/作詞:YUHEI MIYAZATO 作曲:YUHEI MIYAZATO・IZUMI NAKASONE
そうです。
輝く星から勇気をもらった彼ですが、結局彼女には言えなかったのです。
そりゃそうですよね。
電車は過ぎ去ってしまってますから。
でも、伝えられなかった「好き」を声に出してみる。
そこで気づいたのでしょう。
たった二文字しかなく、伝えるにはあまりにも簡単すぎる言葉であったこと。
それなのに伝えられなかった自分の不甲斐なさにも。
最後はそんな自分に勇気をくれた星の輝く夜空に、
優しく笑う彼女の顔を思ったところで曲が終わります。
今までの記憶が、優しく笑う彼女を思い出として夜空に描いたわけです。
この最後こそ、まさしく「canvas」ですね。