「CEREMONY」収録の名グルーヴ曲!King Gnu「Overflow」
グルーヴ感がすごい!
King Gnu(キングヌー)の3rdアルバム「CEREMONY」は2020年1月にリリースされました。
「白日」も収録され、ヌーの群れのように大勢の人を巻き込んで巨大化するというバンドコンセプトを体現。
まさに最強ともいえるアルバムの中でとくにグルーヴィーなファンクナンバーが「Overflow」です。
何かに雁字搦め(がんじがらめ)になりながらも、「本当に大切なもの」を見つめ直す歌詞に心を打たれます。
今回は歌詞に寄り添うかたちで、この曲の真意を紐解きます。
家入レオ「DUO」に収録
ちなみに「Overflow」は提供曲として家入レオさんの6thアルバム「DUO」(2019年4月発売)に収録されました。
映像作品「DUO ~7th Live Tour~」(2019年12月発売)。
16thシングル「未完成」(2020年1月発売)初回限定盤Aの映像作品にも収められています。
そのトレーラー映像で見られるのが、アコースティックセッションの模様。
「Overflow」は1分26秒~1分52秒くらいの30秒弱です。
King Gnuバージョンとは異なる雰囲気を、併せて楽しむ方が多いでしょう。
ブラックミュージック
■ニュージャックスウィング
1980年代中盤にアメリカ合衆国で発生し、1980年代後半から1990年代前半にかけて流行した音楽スタイル。
テディー・ライリーが中心(中略)、新しいサウンドのR&Bである。ワシントンDCのゴーゴーの影響も受けた特有のリズムに特徴がある。
ボビー・ブラウンの「My Prerogative」が大ヒット。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ニュージャックスウィング
King Gnuでは、ブラックミュージックを忠実に再現しても仕方がない。
その大前提のうえで、音楽要素として絶妙な取り入れ方をしています。
ざっくり表現すると、「Overflow」はブラックミュージックの中でもファンクナンバーに相当するでしょう。
ただ、ファンク一色ではなく、R&Bやディスコのゴーゴー。
ヒップホップのラップとJ-POPらしい歌ものメロディも混在しています。
リズムも、跳ねるビート(拍)、跳ねないビートが混ざっているわけです。
これはR&Bの派生ジャンル、ニュージャックスウィングへのオマージュ。
1990年前後に世界的な大ブームを巻き起こしたサウンドです。
ニュージャックスウィング
■ニュージャックスウィング
ブラックミュージック特有の重いグルーヴ感を保持したまま、同時に軽快なスピード感と親しみやすいメロディーをアピールする(中略)。ヒップホップ的手法が使用され、特にラップを歌ものに積極的に取り入れる形(中略)。
2010年代後半、ニュージャックスウィング・リバイバルとして話題を集めたブルーノ・マーズのアルバム『24K Magic』の世界的ヒット(後略)。
出典: https://ja.wikipedia.org/wiki/ニュージャックスウィング
このニュージャックスウィングは2010年代後半にもブームが再燃。
ブルーノ・マーズとカーディ・Bがコラボした「Finesse」のリミックスがきっかけでした。
こうしたブラックミュージックの流れを踏まえると、「Overflow」のサウンドも歌詞も、より楽しめるでしょう。
ソフトラップと歌ものが混在するボーカル、小気味よいリフといななくソロが印象深い常田大希さんのギター。
オートワウ(うねり系のエフェクター)がかかった新井和輝さんの5弦ベースも聴きどころです。
さらに、生ドラムとサンプラーのハイブリッドドラムを駆使する勢喜さんのグルーヴに酔いしれることでしょう。
さて、サウンド面はこの辺りにして、歌詞の解釈に移ります。
1番の歌詞をチェック
確実なものを手に入れたい
幸せの対価に、
どれ程の価値が要るかなんて
知る由もない、知りたくも無い
確かなものに手を伸ばしたい
自分の替えなど
いくらでもいるんだ
自惚れんなよ
世界はそんなもんだって
生きてりゃわかるさ
出典: Overflow/作詞:Daiki Tsuneta 作曲:Daiki Tsuneta
「いくら払えば幸福が手に入る?」なんて話には興味がない。
幸福などという曖昧なものより、確実なものを手に入れたい。
冒頭の歌詞を意訳しました。
一般的にはハッピーな人生を願う人が多いのではないでしょうか。
ところがこの曲の主人公にとっては「ハッピーな人生なんてどうでもいい」わけですね。
幸福かどうかなんて感じ方次第。
そんな「抽象的な概念」より「確実なもの」に関心があるわけです。
では、主人公が幸福を差し置いてまで手に入れたい「確実なもの」とはいったい何なのでしょうか。
常田さんが作詞作曲をしている点を踏まえると、「音楽」。
あるいは「たくさんの人に音楽を聴いてもらえる環境」かもしれません。
ただ、これはあくまでも想像です。
それでも想像のまま進めてみると、「白日」が大ヒットしたからといって天狗になっている場合ではない。
すぐ別のアーティストが話題になる可能性があることくらい認識していると解釈できそうです。
もちろん歌物語の主人公は常田さん自身に限らず、この曲を聴く方それぞれに自分の人生を重ねることも可能。
どのような仕事でも、学校生活でも、恋愛でも、人間関係でも当てはまるでしょう。
King Gnuというバンドの物語が見え隠れしつつ、汎用性がある歌詞になっています。
想像を膨らませ、続きを見ましょう。