自由を謳う「(please) forgive」
私たちと自由と
2014年3月12日発表、BUMP OF CHICKENのメジャー通算5作目の「RAY」。
この作品に収録されている2009年録音「(please) forgive」について紐解きます。
アルバム「RAY」の中でも一番古い録音です。
歌詞をご覧いただくと分かる通りに飛行機が重要なモチーフになります。
出発から到着まで、隔てるもののない大空をゆく存在である飛行機。
藤原基央はそこに自由と不自由に関する深い洞察を重ね合わせます。
私たちの生活や生涯と自由との関係とはどんなものでしょうか。
様々な風景が描かれているので、深く読み解こうとすると色々な印象を抱くことができる歌詞です。
何について「(please) forgive」と祈るのかについても解釈していかないといきません。
実際の歌詞を引用しながら、「(please) forgive」が投げかける謎に挑みます。
それでは実際の歌詞を見ていきましょう。
「あなた」の旅路を見つめる
大切な「あなた」へ贈る言葉
あなたを乗せた飛行機が あなたの行きたい場所まで
どうかあまり揺れないで 無事に着きますように
出典: (please) forgive/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara
BUMP OF CHICKENの王道らしい楽曲でキラキラしています。
「あなた」の飛行が無事であることを祈っているのです。
飛行機は何かしらの隠喩であり、おそらく人生や生涯などの目的地までゆくことを重ねます。
「あなた」が自分の人生を思い通りに過ごせること。
そしてその人生が可能な限り穏やかであることを願います。
「あなた」と語り手の関係は歌詞の最後まで読んでも確固とした答えがでてきません。
それでも語り手にとって「あなた」の存在がいかに大切なものであるかはすぐに分かります。
実人生はマンガと違う
まだ保守的な語り手
最近は別に元気じゃない それが平常で不満もない
生活に変化は求めない 現実とマンガは重ねない
出典: (please) forgive/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara
語り手は一人称の「私」です。
性別は不明。
藤原基央はおそらく男女関係なく「私」に自身を投影できるように歌詞を書いています。
「私」は少し鬱屈した日々を過ごしているようです。
抑うつ状態はしばらく続くものですから、明るくなれないことが日常になっています。
体温が平均して低いことを特に嘆かないように、こうした鬱屈した日々に憤りは感じません。
軽い倦怠感が自身の生活感の平均値になってしまうのです。
そうした鬱屈した日々であるにも関わらず、何か生活に関するものを変えようという気分もない。
実際の私生活をマンガのような安直な創作物のようには考えないといいます。
マンガのような創作物では主人公の生活をガラリと変えるドラマがやってくるもの。
しかし実際の人生とはそのように激しく変化するものではありません。
苦悩が生活を覆う
生活の展望が啓けない
いつまで続けるの 終わりがあるものなの
頭はずっと忙しく
出典: (please) forgive/作詞:Motoo Fujiwara 作曲:Motoo Fujiwara
語り手の「私」は悩み・苦悩を抱いています。
こうした苦悩が「私」の生活の通奏低音として響いているのかもしれません。
こうした困難からの解放を願って様々なことを考えます。
しかし、実人生の答えはマンガの中の登場人物のように簡単に得られるものではありません。
常に脳髄を駆使させて現状からの脱却を願うのですが、先に見たように生活を変える気はないです。
これでは確かにこうした日々がいつ終わるのか、まったく展望が持てない状況が続くでしょう。
苦悩やため息交じりの歌詞なのですが、藤原基央の優しい歌声がそうした険しい側面を癒やします。