「今日も雨」はどんな楽曲?
一代で「ジャズ歌謡」と呼ばれるジャンルを開拓し、唯一無二の世界観を歌う倉橋ヨエコ。
「今日も雨」は、そんな彼女の楽曲の中でも特にロックよりです。
アカデミックなバックボーンの中に潜む彼女の異質さが際立っています。
ポストグランジのようなサウンドに特異なメロディが乗っかっているのが特徴。
倉橋ヨエコの歌声もさることながら、メロディラインもとっても個性的です。
そして、一聴するとストレートに感じられる歌詞には、実は味わい深い情景がたくさん潜んでいます。
まずは1番の歌詞から紐解いていきましょう。
嘆きではじまる「今日も雨」の1番の歌詞
1番Aメロを徹底解釈!
知らない方がましだった事は
沢山あるけれど
読み掛けては印を付けて
閉ざした本に寝そべります
出典: 今日も雨/作詞:倉橋ヨエコ 作曲:倉橋ヨエコ
冒頭から歌詞の主人公が現状に憂いでいる様子が伝わってきます。
「人は無駄な知識を得ることで苦しんでいく。」
そんな禅問答のような葛藤があるのでしょう。
“読み掛けては”のところで「は」を入れているところが興味深いですね。
この一文字が入ることで、何回も本を読んでは閉じるを繰り返す映像が浮かんできます。
倉橋ヨエコさんの独特のセンスが光っている部分ではないでしょうか。
そして歌詞の主人公は本を枕にして寝てしまいます。
枕に出来るということは、結構分厚い本なのでしょうか。
頭の中にたくさんの文字が駆け巡って何事にも集中できない心情が読み取れますね。
直情的に嘆く1番Bメロ
真実は明日も私をきっと
泣かせるだろう
出典: 今日も雨/作詞:倉橋ヨエコ 作曲:倉橋ヨエコ
“明日も”と歌っているところから、歌詞の主人公は今日も泣いていたのだとわかります。
直接説明しなくてもこの瞬間の情景が伝わってくる巧みなパートですね。
ここで語順にも着目してみてください。
どちらかといえば「明日もきっと〜」という順番にした方が自然ではないでしょうか。
あまりない語順にすることで、言葉がより耳に残るようになっています。
こういったところに倉橋ヨエコの歌詞の特徴が潜んでいるのです。
もちろん、メロディとの兼ね合いでこの語順にしたのかもしれません。
いずれにせよ、聴いた人が「おっ!」となる不思議な瞬間を演出していると思います。
また、“泣かせる”のところで、メロディやバックのサウンドが明るく聴こえるのも面白いです。
悲しい歌詞を明るく歌うことで感情が相反する方向に張り裂けそうな状態を表現していると思います。
主人公は自分にとって不都合な真実に突っ込んでいくような、破滅的な心情になっているのでしょう。
空間が開けるようなサビの歌詞
でも飛び出して行こう
待ってる人はいないけど
泣き止んでみても 外はもっと雨
出典: 今日も雨/作詞:倉橋ヨエコ 作曲:倉橋ヨエコ
Aメロでは、主人公が部屋の中で本を枕に寝ている映像がみえてきました。
それがサビでは一気に“飛び出して〜”となっています。
一気に空間が広がるようなイメージが湧いてきて、爽快さまで感じます。
“待っている人〜”というパートでは主人公を助けてくれる人は誰もいないとわかります。
状況的にはとっても苦しいです。
しかしサウンドの盛り上がりも相まって、聴き手の心は清々しい気分になります。
本当に不思議な世界観ですね。
そして若干すっとんきょうに“外はもっと雨”と歌ってサビを締めくくっています。
この言葉も強烈な意味を持っているように感じませんか?
“泣き止んで〜”と一緒に考えると答えがみえてきます。
「自分が前向きになっても現実は変わらない。」
そんな救いようのない感情を表しているのだと思います。
しかしサビの曲調は明るいので、あきらめを超えた境地を表現しているように感じられるのです。
2番で状況はどう変わる?
2番Aメロを解説!
甘い思い出と戯れて
唇には反省の歌
悔しいけれどいらない過去で
この私は作られてます
出典: 今日も雨/作詞:倉橋ヨエコ 作曲:倉橋ヨエコ