アニメ「ましろのおと」のエンディング主題歌
加藤ミリヤのサウンドと津軽三味線の融合に注目
津軽三味線を題材としたアニメ「ましろのおと」のエンディング主題歌となった「この夢が醒めるまで」。
切ないラブソングで女性から圧倒的な共感を得ている加藤ミリヤが歌い上げています。
また今回は「ましろのおと」にちなんで、津軽三味線奏者である吉田兄弟をゲストに共同制作されました。
切ない歌詞でも力強くリスナーに思いを伝えるハスキーボイスが特徴的な加藤ミリヤ。
ビートに乗りながらノリの良い曲もかっこよく歌い上げています。
反して津軽三味線は伝統芸能として有名な和楽器です。
演歌や民謡に使われるので少し渋めで、厳格なイメージをもっている方も多いのではないでしょうか。
パッと見て相反しているようにも見える加藤ミリヤと津軽三味線。
しかし「この夢が醒めるまで」はそんな和の要素が強い津軽三味線が加藤ミリヤのサウンドと融合しています。
津軽三味線のリズミカルさがアクセントとなり、つい聴き入ってしまうこと間違いなしです。
主人公「澤村雪」の心情を描写
「この夢が醒めるまで」はアニメ「ましろのおと」の主人公である澤村雪の気持ちを歌詞にのせています。
雪は祖父であり津軽三味線の師匠でもあった松吾郎を亡くし、自分の好きな音さえもなくしてしまいます。
心も自分の弾く津軽三味線の音も空っぽになった雪は青森から上京。
いろんな人々に出会いながら自分の音を探していきます。
そんな雪の悩みや迷い、葛藤といった心情を描き出したのが「この夢が醒めるまで」。
祖父にはなれないけれど、心の中にある祖父の音をどのように自分の音として見出していくのか…。
歌詞の意味を紐解いていきます。
今という一瞬の時間
この夢が醒めるまで此処にいて
刹那の時を抱きしめていたい
唇を震わせるこの声が
あなたに聞こえるまで
出典: この夢が醒めるまで/作詞:加藤ミリヤ 作曲:加藤ミリヤ,吉田兄弟,Carlos K.
歌い出しまでは津軽三味線の音が静かに響きます。
少しずつリズムが細かくなってきたとろころで最初のサビがスタート。
祖父を亡くした雪はただ無心に大好きだった祖父の音を欲しています。
もう祖父に会うことも津軽三味線の音を聴くことはできません。
しかしもしも夢の中で会うことができたなら、そのときだけでもそばにいてほしい。
そしてまたあの音を聴かせてほしいと願っています。
その時間はほんのわずかで瞬間的なものかもしれません。
だからこそ大切に噛みしめていたいのです。
しかし長くは続くかない夢の時間。
唇が震えるのは祖父を失ったと同時に自分の弾くべき音もわからなくなったことの不安もあるのでしょう。
祖父がそばにいるこの夢の瞬間だけでも、自分の思いを伝えたいという気持ちがうかがえます。
自分の音が見つからない
思うようにできないもどかしさ
音の鳴る方へ
奪われてDAY&NIGHT渇き潤して変幻自在
手なづけたい でも掴めない
翻弄されてコントロールだめ、できない
出典: この夢が醒めるまで/作詞:加藤ミリヤ :加藤ミリヤ,吉田兄弟,Carlos K.
津軽三味線がほどよくアクセントとして鳴り響く中でラップパートに入ります。
祖父と自分の音をなくした雪はいろんな音を聴く中で自分の音を探しに行きます。
なんとなく津軽三味線を弾く日々。
それはまるで心を潤すかのように自分のためだけに演奏します。
しかし、このまま弾き続けていても納得できる音に出会えません。
音を自分のものにしたい、でもなぜか思うようにできない。
そんな雪の葛藤が表されています。
自分の音と向き合う
此処じゃないどこで会った?
昔から知ってるような気がした
知ってしまった罪は快感
その時が来たらなんて大胆
出典: この夢が醒めるまで/作詞:加藤ミリヤ :加藤ミリヤ,吉田兄弟,Carlos K.
自分が津軽三味線を演奏する中でどこかで出会ったような音を感じるときがあります。
昔から知っている祖父の音のような…。
なくしたとはいえ心の中にはずっと祖父がいて、祖父の音も雪の中で生きています。
もちろん自分は祖父と同じような音を出し、演奏することはできません。
しかし音は受け継がれていくもの。
大好きな祖父の音を自分の音として奏でることはできるはずです。
そのときが来たらなにかにとらわれず、もっと大胆に津軽三味線を演奏することができるでしょう。