一人で歩いていく
一人暮らし。
みなさんも経験したことがある方は多いのではないでしょうか。
進学するため、就職するため、自立するため…。
各々の事情によってこれまで育った町を、家族のもとを、旅立ったことでしょう。
その胸中には希望がありながらも、淋しさ、苦しさ、もどかしさ、色んな思いが渦巻いていたのではないでしょうか。
今回解説していくのは、シンガーソングライターmiwaの「ぬくもり」。
どんな過程があったにせよ、これまで生きてこられたのは誰かの支えがあってのことです。
夢に向かって歩み出していくとき、支えてくれた人のもとを離れなければならないときが訪れるかもしれません。
その淋しさをこらえながらも、新たな一歩を踏み出していくその姿を描いています。
miwaが「ぬくもり」に込めた覚悟
「ぬくもり」はmiwaの3rdアルバム『Delight』(2013)に収録されている楽曲です。
大学在学中にメジャーデビューを飾った彼女。
このアルバムは大学卒業、そして初の武道館ライブを成功させたというタイミングでリリースされました。
“ミュージシャンとして生きていく”、改めて誓ったその覚悟がアルバムには詰まっています。
そのアルバムの最後のトラックを飾っているのがこの「ぬくもり」です。
ピアノ、アコースティックギター、ストリングスが絡み合う壮大なバラードナンバー。
美しいメロディに乗せられたmiwaの声は凛々しく、力強い覚悟のようなものを感じます。
歌詞の情景が瞼の裏に浮かんでくるようです。
シンプルでストレートな歌詞
この曲は“Aメロ→Bメロ→サビ”という流れで進行し、一番と二番のみという非常にシンプルな構成です。
いわゆる大サビといったものも存在しません。
歌詞もシンプルで力強い言葉が並んでおり、この曲に込められたmiwaの思いがより真っ直ぐに伝わってきます。
叶えたい願い
“もしも願い叶うなら” そんなに甘くないよね?
“何のために生きてるの?” その意味を見つけたいよ
出典: ぬくもり/作詞:miwa 作曲:miwa
“問い”が並ぶ冒頭の歌詞。
「私」がこの曲の主人公です。
主人公は、これまでどんな人生を歩んできたのでしょうか。
順風満帆ではなく、壁にぶつかってしまい悩んでいるようです。
倒れた体を起こそうと、手で地面を探りながら立ち上がろうとする、そんな様子が浮かびます。
立ち上がったあとに向かうのは、“自分の生きる意味”を探す旅です。
人が生きる意味
忙しない日々に置き去りにされる心の中で、主人公と同じように疑問が浮かぶときがあります。
「幸せになるため」「誰かを守るため」「生きることそのものに意味がある」。
偉人たちは生きる意味に関する名言を多く残してきましたが、その答えは人それぞれ違いました。
だからこそ、自分自身で答えを見つけていかなければなりません。
主人公も今、答えを見つけるべく歩み始めようとしています。
支えてくれた存在
あなたがくれたやさしさ 鞄に詰めこんでも
心は空っぽだけど ひとりでいかなくちゃ
出典: ぬくもり/作詞:miwa 作曲:miwa
「あなた」という存在が、主人公にとっての心の支えだということが分かります。
しかし今の主人公の心は、それだけで満たされるわけではありません。
あなたから与えられたものはあっても、自分自身で創り出したものは何もないのです。
そのことに主人公は虚無感や劣等感を抱いているのでしょう。
そして注目すべきは最後のフレーズです。
主人公はなぜ「一人」を選んだのでしょうか。
新たな一歩を踏み出すとき、誰かが一緒にいてくれた方が心強いのは確かなことです。
それでも一人で歩むことを決めた。
その覚悟の裏にはどんな思いがあるのでしょうか。
強い自分になるために
私つよくなるから 胸を張って “ただいま”って言える日まで
どうか見守っていて まっすぐに自分の道を信じたいの
さみしくて さみしくて 涙がでる
あなたのぬくもりが恋しいよ
出典: ぬくもり/作詞:miwa 作曲:miwa