僕らはずっと呼び合って 音符という記号になった
喉震わせて繋がって 何も解らなくなった
出典: 三ツ星カルテット/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
「三ツ星カルテット」がメンバーへの想いであることを見てきました。
一方でラブソングとして普遍的な愛をも歌っているようにできていることも分かります。
この曲は最低でも二通りの解釈が可能なのです。
どちらの解釈にも目配りした記事を心がけていきましょう。
歌詞中の「僕ら」はバンド・メンバーと藤原基央自身を指します。
幼馴染みとして仲良く生活してゆくうちに、音楽仲間になっていきます。
音符は譜面上に現れる記号に過ぎません。
実際にこの世界で響く音楽を記譜したものの一要素に留まります。
本当に喉から声を発してゆく響き。
このようにリアルな音楽として再現されると、音符という記号は自分自身の存在理由を見失うでしょう。
音楽というものは観念で捉えるものではないという藤原基央の信念がうかがえるラインです。
音楽は単なる音符の羅列で構成されるものではないのでしょう。
音符よりも生きた音楽の奪還をしたいという思惑が透けてきます。
また、男女の交際に置き換えることも可能な歌詞です。
カップルという社会的な単位になってしまうと見失ってしまうものもあるかもしれません。
肝心の愛を観念で捉えると分からなくなってしまうのです。
愛というものは頭で理解するものではなく、手指や唇で実践するものなのでしょう。
誰も置き去りにしない
夜明けまで歌い続ける
悩める誰か置き去りにして 世界は大概素晴しいらしい
夜に色が付くまでに 秘密の唄を歌おう
出典: 三ツ星カルテット/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
世界への不満や皮肉が描かれます。
そもそも世界は色々な人々によって構成されているでしょう。
誰が主導権を握っていて世界が回転しているのかを見極めるのは非常に難しいです。
しかし、残念ですが弱き者への配慮は世界で不足しています。
BUMP OF CHICKENのレコーディングでドラムの枡秀夫が苦戦していたそう。
そのためにバンド・ミーティングを設けたのですが、話し合いの中では音楽の問題は解決できません。
藤原基央の問題意識が見え隠れするラインです。
本音として誰も置き去りにしたくないのでしょう。
他者と自分の呼吸を合わせないと音楽は生まれ得ないという想いを重ねます。
夜が明けるまで自分たちの音楽を鳴らそうと歌うのです。
ラブソングとしては相手の苦悩を放っておかずに朝までともにいようと解釈できます。
心で流す涙を見逃さない
尊い「愛」がテーマ
涙の無い泣き顔に ちゃんと気付けるよ今は
恒星を3つ目印に いつまでだって側にいる
出典: 三ツ星カルテット/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
悲しい想いを抱いた人が必ず涙を流すわけではありません。
心のうちで涙を流していても表情に出さない人もいます。
そうした目に見えない涙に、成長した自分ならば気付くことができると歌うのです。
長年、一緒に演奏し、さらに遊びまでともにしてきたような友だちへの心遣い。
BUMP OF CHICKENというバンドの友情は奇跡だと改めて実感いたします。
また「三ツ星」のモチーフが登場。
この先もずっと一緒に演奏していこうと藤原基央が歌います。
バンド・メンバーとしての愛情の存在を超えたものを感じさせるのです。
愛情にも様々なものがありますが、友情という「愛」もまた尊いテーマでしょう。
藤原基央のレスポールのジャック付近には星のマークが3つ描かれているのも有名です。
またラブソングとしては永遠の愛の誓いを読み解くことができます。
バンド内部の事情を赤裸々に語っているようですが、表面に浮かぶラブソングとしての仕掛けも大切。
パートナーへの強い愛情がうかがえます。
相手が何かしらの悲しみを胸に抱いているときに気付いてあげられる感受性の大切さを歌っているようです。
メンバー間の絆の強さ
強い「愛」はどうあっても遺るもの
繋いだ手は離せるよ 会いたいわけでもないよ
約束なんか要らないよ それでも無くさないよ
出典: 三ツ星カルテット/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
バンド・メンバー間の信頼が篤いからこそ書けるラインです。
何せ幼稚園からの幼馴染ですから、もはや仲がどうのという間柄ではないのでしょう。
男同士の友情という隠れたテーマと、普遍的なラブソングの装いを見事に両立させてもいます。
手つなぎや約束など確認できるものなどなくても、お互いの気持は通じ合っていると歌うのです。
相手を冷たく突き放している訳ではありません。
むしろ絆が盤石なものであるからこそ、こうした醒めた言葉を並べても関係にヒビは生まれないのです。
旧くからの馴染みの仲というものは、数年ほど離れて暮らしていても消え去りはしません。
「三ツ星」ですから夜空を見上げれば、いつでも愛の輝きはそこにあるものなのでしょう。
こうした関係を維持できているということ。
成長して音楽家として一緒に働けるということ。
BUMP OF CHICKENのメンバー間の絆はすべてがうらやましいです。
ラブソング的にも今さら飾り立てる必要はない愛の姿を読み込むことができます。
離れていてもいつだって元の関係に戻ることができるような愛の姿です。