サカナクション初のアルバム

『GO TO THE FUTURE』

サカナクション【GO TO THE FUTURE】歌詞の意味を徹底解釈!君を誘い続ける理由を紐解く!の画像

2005年、北海道札幌市で誕生したサカナクション

2007年にメジャーデビューを果たしますが、そのタイミングでリリースされたのが『GO TO THE FUTURE』でした。

今回ご紹介するのはこのアルバムのタイトルチューン、【GO TO THE FUTURE】。

一般的にイメージされるようなエネルギッシュなタイトルチューンとは異なり、非常にオシャレな1曲です。

心の中を映し出した楽曲

サカナクション【GO TO THE FUTURE】歌詞の意味を徹底解釈!君を誘い続ける理由を紐解く!の画像

この楽曲ギターボーカルの山口一郎さんが作詞作曲をつとめました。

ゆったりとした三拍子の本楽曲は胸の奥をくすぐるような、哀愁を帯びたメロディが印象的です。

そして歌詞ですが、タイトルからはポジティブフレーズが並んでいるのでは?と想像してしまいますね。

しかし実際には切なげ寂しげな心の移り変わりが描かれているのです。

作詞した山口一郎さんが当時感じていたことを綴ったという本楽曲歌詞

デビューに際していったい彼は何を感じていたのでしょうか。

歌詞僕=山口一郎さんの視点で綴られていますが、そこに登場する君とは一体誰なのでしょう。

そしてそんな君を誘ってみた僕の気持ちとは?

歌詞とともにこの謎を解き明かしていきましょう。

デビュー当時の心境を綴る

待ちに待った歓喜の瞬間

心の最先端 待ち焦がれていた涙は
タバコの煙のせいだった 霧のような未来への動き

出典: GO TO THE FUTURE/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎

まず1行目のフレーズですが、何を意味しているのでしょうか。

あまり聞きなれない表現ですが、きっと僕の心が最も楽しみにしていたことではないでしょうか。

人はワクワクした時、楽しみだったことに直面した時など、つい前のめりになってしまうもの。

気持ちを抑えられず心拍数が上がったり、実際に身体が動いてしまったり、そんな状態が想像できます。

いずれにせよ対象の物事に対して集中し、気持ちが一直線に向かっているのだといえそうですね。

そんな風にはやる気持ちを抑えられずにいる状態を「心の~」と表現したのでしょう。

この楽曲発表時の彼らを想像すると、それほどまでに心を動かしたのはメジャーデビューだとわかります。

アーティストにとってメジャーデビューは大きな夢でしょうから、こうなるのも当然でしょう。

たった2人から始まったサカナクションの活動。

初期は自分たちがやりたいこと・他の人とは違うことを地道に積み重ねる日々だったに違いありません。

そんな下積み期間を経て、メンバーは5人になりました。様々な場所で評価されるようにもなっていったのです。

そうしてようやくたどり着いたメジャーデビューの瞬間。嬉しくないはずがありません。

1行目の「涙」は感動的なメジャーデビューという事実を表現しているのでしょう。

喜びより大きいのは

しかし僕の涙はどうやら感情の揺れ動きによって溢れたものではない様子。

2行目にある通り、ただ単純に煙が目に染みてしまっただけでした。

デビューの喜びを分かち合うような、幸せな空気が台無しです。

山口さんは、自分がなぜ涙を流さなかったのかすぐに気がついています。

それはデビューの喜びよりも、サカナクションが進むべき未来への不安が勝ってしまったからでしょう。

僕の涙を誘った煙は、タバコの先から立ち上がった後ゆらゆらと空気中を漂いました。

その煙のせいで僕の視界は遮られ、少し先の景色でさえ見えていないようです。

山口さんはそんな煙を見ながらふと、自分たちの未来に対して不安を抱いたのではないでしょうか。

これから先の自分は一体どうなるのだろう。

タバコの煙と同じように定まらず、ユラユラと不安定な生活を送るのだろうか。

具体的な不安があるわけではなく、ただ漠然と自分たちの未来を想像したのかもしれません。

この楽曲のメロディが希望に溢れているわけではなく、どことなく切なげだった理由もわかる気がしますね。

過去、現在、そして未来へ

かつての仲間を想う?

僕は動く 動く 指差す先に君 淋しいけど
なのに行くしかないのさ 通り過ぎる対向車と目が合った

出典: GO TO THE FUTURE/作詞:山口一郎 作曲:山口一郎

ここでとうとう「」が登場しました。

これは山口さんがサカナクション結成前に活動していたバンドダッチマン」のメンバーではないでしょうか。

1998年に結成したダッチマンですが、2004年に突如山口さん以外のメンバーが脱退。

それ以降サカナクション結成まで、山口さんはソロとして活動していました。

これだけならそこまで珍しい話でもないかもしれませんね。

ただ1行目にある通り、山口さんはメンバー脱退後に淋しさを覚えているのです。

それはおそらく、脱退した3名別のバンドを結成して活動していたから。

ソロ活動をしながら、そんな3人の活動も気になっていたのでしょう。

しかし歌詞をよく見てみると、指を差している相手は単数形で綴られていますね。

メンバー全員を差すのであれば君「たち」と表現してもいいはずです。

あえて単数形ということはつまり、この「君」とは誰か特定の1人を差していると判断できます。

ちなみに元メンバーが結成したバンドには、後にサカナクションのメンバーとなる岩寺基晴さんもいました。

となると歌詞中で「」と歌われているのが、この岩寺さんであると考えられるのです。