他者を信じる心
ドラマの中で安曇俊介と友川四季はよく衝突しています。
安曇俊介の人間性を友川四季は最初の頃に見誤っていたのです。
彼は軽薄な人間ではないかという彼女の勘違い。
それでもカメラマンという職業でありながら失明を余儀なくされる安曇俊介の葛藤に友川四季も胸を痛めます。
やがてふたりの間にはわだかまりがなくなり愛情を通わせられるようになるのです。
その領域にいたるまでのふたりのすれ違う想いが視聴者の胸を締めつけます。
信じたい。
信じあいたい。
ふたりは根っからの善人なのです。
他者を信じる心に恵まれていました。
高揚する森山直太朗のヴォイス
「視界」の中の恋愛
朝の光に 君が消えてしまいそうで
僕はまた眠った振りをした
眩し過ぎる思い出たち
こっちを向いて 笑っているよ
あの日溜りの中で
出典: 愛し君へ/作詞:森山直太朗 御徒町凧 作曲:森山直太朗
森山直太朗の張り詰めたヴォイスに聴く者の心も高揚します。
歌詞を紐解く鍵となる「視界」にまつわるエピソードの登場です。
実際の「視界」の中で彼女が儚く消え去りそうな予感を覚えます。
相手を信じていたいのに一抹の不安が交錯するのです。
不安に思わず目を閉じると追憶の「視界」の中で想い出がきらめいている。
追憶の中では彼女は笑ってくれています。
病によって「視界」を奪われる
ドラマ「愛し君へ」の中でカメラマン・安曇俊介はいずれ失明してしまうと医師から宣告されるのです。
カメラマンという職業にとって失明という未来は廃業を意味します。
過酷な現実です。
カメラマンにとって大事な「視界」を病によって奪われてしまう。
安曇俊介を支える小児科医・友川四季との交際も中々一筋縄ではいかないです。
友川四季の父親がいずれ失明する男性との婚約を気にしてしまいます。
ふたりはお互いを思いやるばかりに距離を置いてしまいがちです。
未来を信じたいのにうまくいかない恋模様が視聴者をハラハラとさせました。
切ないクライマックス
ひと目逢いたいという想い
愛し君よ 愛し君よ
何処にいるの
今すぐ逢いに来て欲しい
例えばそれが幻でも
いいから
出典: 愛し君へ/作詞:森山直太朗 御徒町凧 作曲:森山直太朗
この歌のクライマックスはとても切ないラインです。
ふたりはもはや逢えない運命なのでしょうか?
お互いを思いやるばかりに距離ばかりを大切にしすぎて相手を見失ってしまう。
できればすぐにでも逢いたい。
募る想い。
現実に逢えなくてもせめて追憶の中で相手の姿を「視界」に焼き尽くす。
叶わない想いかもしれない。
それでもひと目逢いたいと強く願いながら曲は終わります。
伝説的なラストシーン
ドラマ「愛し君へ」ではふたりは無事に結ばれ、安曇俊介の故郷・長崎で結婚生活を送るのです。
ただし、安曇俊介の目の病気はやはり過酷な運命をもたらします。
ふたりが長崎の街を散歩しているさなかに安曇俊介は失明。
ただしドラマのラストシーンはそんな過酷な運命を描いていてもどこか救われる内容です。
「愛し君へ」の最終話のタイトルは「最後に見せてあげたいもの」。
友川四季が失明する夫に最後に見せてあげたかったものはなにか?
それはレンタル・DVD・ショップなどで作品を借りてみて確認してください。
必ず涙を流しながら感動するはずです。
ドラマ・ファンの間では語り草になっている名シーンであります。
森山直太朗を語る上で欠かせない歌
2種類のベスト盤に収録
森山直太朗の「愛し君へ」は後年、鈴木雅之がカヴァーしてシングル・カットしています。
長く愛され続けて歌い継がれる名曲です。
ドラマの挿入歌という出自が忘れられても愛されています。
森山直太朗自身にとっても大切な楽曲に違いありません。
森山直太朗本人はシングル・カットしていないのに二種類のベスト盤に収録されています。
「傑作選2001~2005(2005)」「大傑作選(2016)」
彼を語る上で欠かせない歌なのです。