歌詞にある「旅の道づれ」が指すのは成田家とその家臣・領民たちのことです。
勝ち目ゼロの戦いですから、一度は豊臣軍に服従し開城する意に傾きます。
しかし長親の考えは違いました。
強者(豊臣軍)が力で弱者(成田家と領民たち)をねじ伏せる世の中はおかしい!
だから開城はせず豊臣軍と戦う!
最初は戦に大反対した農民でさえ、それを決めたのが長親であると知るや「のぼう様は俺たちが守る!」と勇みます。
とはいえ勝ち馬である豊臣軍に歯向かうなんて、無謀な戦いには違いありません。
それでも強者だけが力を持つ世間に迎合するくらいなら、負けることが分かっていても死力を尽くす!
そんな成田家一門の決意を力強く歌っているわけです。
負け戦を続ける理由とは
高鳴る胸を動かす物は何だ?
あの角曲がれば流れる熱い涙
変わらぬ光で空に浮かぶムーンライト
ひとりで眺める 揺れる街のあかり
明日に向かうぜ!
ああ お陽さまが昇れば
醒めてるふりをしてても
果敢ないこの浮き世にゃあ
本気な方がいい
出典: ズレてる方がいい/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
守りの堅い忍城をなかなか落とせない石田三成は、城周辺に堤防を築き水攻めを決行します。
周囲を水に囲まれた中での籠城戦は、長親たちにとっては絶体絶命のピンチです。
そんな窮地に陥りながらも、長親はとんでもない手段でもって堤防を破るのです。
ネタバレになるのでその方法は伏せますが、決して勝てる方法ではないのです。
結局負けてしまうことが分かっていても、どうして戦い続けるのか……。
長親を突き動かしているのは、ただただ領民たちを想う心だけです。
本気で想っているからこそ、無謀とも思える戦いに挑むのです。
そして長親の本気は領民たちに確かに伝わり、堤防は破られました。
「高鳴る胸を動かす物」とは、主従関係にありながらも強固に結ばれた彼らの絆なのでしょう。
信念を貫いて涙を流したい!
ああ 仮初の夢でもないよりはましさ
どうせ流す涙ならお前と流したい
ああ 戦いにこだわって
敗れ行く定めだとしても
移ろうこの世間にゃあ
ズレてる方がいい
出典: ズレてる方がいい/作詞:宮本浩次 作曲:宮本浩次
映画においても史実においても、最終的に忍城は豊臣軍に従い開城します。
戦には負けてしまったかもしれませんが、敗軍であるはずの成田軍に悲壮感はありません。
「どうせ流す涙なら」とありますが、もし戦わずして降伏していたならば……。
その涙は決して気持ちの良いものではなさそうです。
世間に迎合する生き方はラクなのかもしれません。
成田家のように、天下人を相手取って戦に持ち込むなど正気の沙汰ではありませんでした。
しかし世間と違ったことをしてでも、貫かなければいけない信念があるのです。
まさにタイトルにあるような「ズレてる方がいい」生き方を押し通した人々の物語です。
長親たちはどうなった?
成田家は、戦国武将としてはあまりメジャーな方ではありません。
忍城の戦い後、長親がどのような足跡を辿ったのか文献があまり残されていないためです。
映画の中で大活躍した家臣たちも、そのほとんどが消息不明となりました。
しかし小田原城が降伏してもなお、忍城は籠城を続けていたことは事実です。
また数少ない文献からも、成田家が農民に寄り添った統治をしていたことが伺えます。
わずかの兵力で豊臣軍に挑むのは並大抵のことではありませんよね。
絶対的不利な状況でも、この人についていきたいと領民たちに思わせる何かがあったのかもしれません。
実際の長親がどのような人柄であったかは不明ですが、のぼう様のように愛されていたのではないでしょうか!
現在でも行田市には、地名として家臣の名前は残っています。
何百年と時が流れても、このように生きた証が残されているのはとてもすごいことですね!
ジャケットワークをもう一度!
あらためてジャケットワークを見て見ましょう!
記事の冒頭で紹介した通り、衣装の文字は曲の歌詞になっています。
初回限定版はバストアップの構図になっています。
アップですと文字が読み取りやすくなっていますね。
右胸のあたりは「戦いにこだわって」の部分ではないでしょうか!?
CDの現物を手に取った際は、全文解読に挑戦してみてはいかがでしょうか。
初めての活動休止を経て……
ところで「ズレてる方がいい」のリリースに前後し、エレファントカシマシはライブ活動休止を余儀なくされています。
ジャケット写真の撮影を行った直後の2012年9月、ボーカルの宮本が急性感音難聴の診断を受けました。
すでに出演が決まっていた年末の音楽フェスや、年明けの武道館公演も全てキャンセル。
ライブ活動休止となるのはデビュー以来初めてでした。
野音の連続記録を死守!
耳に関する病気ですから、10月に予定されていた日比谷野外音楽堂のライブも中止になる見込みでした。
しかし宮本の強い希望により、耳への負担が少ないアコースティック編成で開催されたのです!
全12曲を約1時間にわたって熱演。
耳をかばう様子は見られたものの、次のライブ再開が未定の状況でのパフォーマンスは圧巻でした。
「ズレてる方がいい」もこのライブで初演奏されています。
ワンマンライブにしては短めだったにも関わらず、会場は大いに盛り上がりました。
そして翌2013年の復活ライブも、同会場で開催されています。
ちなみに日比谷野外音楽堂でのライブは、1990年以来毎年行われているのだとか。
2018年現在も、連続記録を更新中です!
2012年、2013年もなんとか開催にこぎ着けたことで、この連続記録が死守されたわけです。
バンドにとっての「戦い=ライブ」にこだわるエレカシだからこそ、成せたのではないでしょうか。
これから30年、40年と連続記録を伸ばし続けていくことでしょう!