人はその時 誰も無力で
何もできずに ただ故郷を見ていた
神様教えて…うつむく人々に
僕は何を唄えばいいのですか?
出典: その日がくるまで/作詞:林保徳 作曲:林保徳
自然災害の脅威を目の前に、人間は成す術などありません。
どんなに文明が発展していても、どんなに技術が発達していても、人間は自然に勝つことなどできないのです。
無力。ただただその空っぽな気持ちを抱えながら、壊れゆく故郷を見守ることしかできない。
こんなに悔しいことがあるでしょうか。
悔しさ、悲しみ、怒り、絶望…様々な感情から、下を向いたまま顔を上げられない人々。
そんな人たちに少しでも癒しを届けたいと、震災直後は多くのアーティストが歌で力を届けていましたね。
yasuさんも同じアーティストとして、何を唄い、何を届けたらいいのか、迷っていたのかもしれません。
愛が救ってくれる
できるのは「みんなが1つになること」
胸の奥の方が痛いよ なのに言葉にできないよ
同じ空の下 同じ空を見て
僕達の祈りを一つにして
出典: その日がくるまで/作詞:林保徳 作曲:林保徳
ここで胸を痛めているのは、被災した人々ではありません。それを見守る周囲の人たちです。
被災した人たちのことを考えると心が痛いのに、どう言葉をかけていいかわからない。
もしかしたら、あなたにも経験があるかもしれません。
大きな傷を負った人たちに言葉をかけるのは、想像以上に難しいことなのです。
だからこそ一続きの空の下、たくさんの想いを重ねることで力になりたい。そう考えたようです。
この想いよ、届け
愛の言葉 世界中に届くかな?
空を越えて 君の元に届くかな?
愛の言葉 世界中に届くかな?
空を越えて 君の元に届くかな?
愛の言葉… 空を越えて…
愛の言葉…
君の元に届くかな?
君の元に届くかな?
必ず君に届けるよ…
出典: その日がくるまで/作詞:林保徳 作曲:林保徳
重ねた想いが、届けたい人に届きますように…。そう繰り返し願っている様子が綴られています。
顔も名前も知らないわたしたち。それでも同じ国に生まれたからには、辛い時こそ支え合いたい。
同じ場所にはいないけれど、この想いは続いている空を渡ってきっとあなたに届く。
そんな気持ちで歌い続けます。
立ち直した人々
目を閉じて 耳を澄まして
聞こえない? 子供達の笑い声
神様教えて…終わりの時は
今すぐじゃなければいけませんか?
出典: その日がくるまで/作詞:林保徳 作曲:林保徳
冒頭と同じく、神様に語り掛ける様子が描かれています。
しかしここでは、最初のような絶望的な気持ちは感じられません。
むしろしっかりと覚悟を決めたような、前を向いたような様子です。
震災直後は殺伐としていて、暗くどんよりとしている空気が流れていた日本。
しかしここでは、なんと子供たちが笑う声が聞こえるようになりました。
きっと誰もが少しずつ前を向き始め、明るくなってきたことの象徴でしょう。
そんな状況に変化したからこそ、もう1度神様に問いかけるのです。
「そんなはずはない」という強い確信を持ちながら…。
辛い時にはみんながいる
Acid Black Cherryの『その日が来るまで』を解説してきました。
東日本大震災という忘れてはならない大災害。
そのことをテーマにするのは、相当な覚悟が必要だったのではないかと察します。
それでもアーティストとして表現することを選んだAcid Black Cherry。
彼の言葉がきっと、多くの人たちを苦しみから救ったのではないでしょうか。