「慕情」は中島みゆきさんの45枚目のシングル
「慕情」は、2017年8月23日発売されました。
倉本聰氏がシニア世代に贈る渾身の帯ドラマ劇場『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)の主題歌として、 中島さんに 直接依頼されたものでした。
楽曲は、最初から発表されるのではなく1番、41話で2番、48話で3番が、番組が続く中で、番組内容に合わせるように 歌詞が流されていきました。
「胸にしみる」PVも人気
PVでは「動画」が全くなく、中島みゆきさんの歌声が響いてきます。
一つ一つの言葉が心に染みるような歌声が聞こえてきます。 慕情という言葉を、昨今あまり聞いたことがありません。
「慕わしく思う気持」は実は、身近に心の底に誰もが持っている大切な思いですね。
中島みゆきさんの歌声で、そのことに気付いていきました。
「やすらぎの郷」の番組のあらすじと楽曲の解釈
「やすらぎの郷」の舞台は東京近郊の老人ホームです。
そこは、全盛期の映画、テレビで功績があった者だけが入居できる夢のような無料の老人ホーム「やすらぎの郷」です。
会員は、全盛期の映画、テレビ界を支えた者であったかどうかという厳正な入居資格を通過した人たちです。
主人公の石坂浩二さん演じる菊村栄は、国民的ドラマを何本も生み出したシナリオライターという役柄です。
菊村 栄は認知症の元女優の妻・律子の介護に疲れ果てて、ふたりで「やすらぎの郷」に入所することにしました。
その矢先に妻が亡くなり、ひとりで入所することになります。
妻を失い、人生を振り返ると、がむしゃらに働いた日々で失ったものや妻の主人公への献身的な愛情を思い出してゆきます。
改めて、愛することの大切さを感じ、妻ともう一度出会いからやり直したい、亡くなる前にもっと尽くしていれば良かったと思う 主人公の思いが楽曲になったと言われています。
その主人公の視点で、歌詞をひも解いてみます。
独りよがりの解釈の部分もあるかもしれませんが、このようにこの歌詞を解釈したというご事例としてお読みください。
しみじみと胸を打つ「慕情」の歌詞を読み解く
①「愛の気づき」
愛より急ぐものが どこにあったのだろう
愛を後回(あとまわ)しにして何を急いだのだろう
出典: http://www.uta-net.com/song/234943/
主人公は述懐(じゅっかい)します。自分の過去のことを見つめ直すのです。
主人公の人生の大半は、自分の夢に向かっていた。
「世間的成功」という形を得ることが、幸せだと思って生きて来た。
仕事という名のもとに全てを捧げて生きて来た。仕事が大儀であり、仕事が言い訳だった。
紆余曲折の仕事の中で、何度も成功し、何度も失敗した。
体験が人生の深みを増すのだと信じて来た。
愛する人を、急に失った。 Aメロでは失った妻への「愛の気づき」が表現されています。
気がつくと、自分の人生も長すぎるほど生きて来たことに気付くのです。
主人公への、妻の限りないやさしさと献身を心の底から感じるのです。
生きるために、仕事もしてきた。でも、私は限りない愛を一方的に貰うだけであった。
何故、もっと静かな、もっと寄り添った思いやりを捧げられなかったのか。
② 「後悔」
甘えてはいけない 時に情(なさけ)は無い
手離してならぬ筈(はず)の何かを 間違えるな
振り向く景色はあまりに遠い
もういちどはじめから もしもあなたと歩きだせるなら
もういちどはじめから ただあなたに尽くしたい
出典: http://www.uta-net.com/song/234943/
時の流れは、だれも止めることは出来ません。
かなしみや、喜びや、幸せや不幸も全く相手にせず時はただ流れていきます。
自分を見つめる切ない暗い夜の中で、悲しみが急激に襲って来られたのでしょう。
手離してはならぬものを、失っていた。
妻への、悔恨と懐かしさと再びの日々の願いを込めて、もう一度会いたい。
もう一度やり直したいという叶わぬ「願い」のあふれだしを止めれないでいられるのでしょうね。
妻に対する「切ない思い」が胸に迫ってくる歌詞でした