「Bombastic」
タイトルは「大げさ」
布袋寅泰の「Bombastic」は、2018年9月19日にリリース。
有名漫画「北斗の拳」の少年ジャンプ連載35周年を記念した「202X」のカップリング曲です。
「Bombastic」とは、英語で「大げさ」だったり「仰々しい」という意味。
なぜ、こんなタイトルが付いたのでしょうか。
それは、レコーディングに参加したドラマー、フランク・トントーに関係があります。
エリック・クラプトンが在籍したスーパーロックバンド、Cream。
トントーは、Creamのリードボーカリストだったジャック・ブルースのアルバムなどに参加しました。
百戦錬磨のトントーが、この曲をスタジオでセッションした際、何度も口にしたフレーズ。
それが「Bombastic」でした。
そんな「大げさ」な言葉を、そのままタイトルにしてしまう布袋寅泰の自信もうかがえます。
躍動感たっぷりのギターパフォーマンスを存分に味わえる、インストゥルメンタルです。
トレイラー映像とは
予告編
トレイラーとは、いわゆる予告編のこと。
音楽に限らず、近日公開の映画や連続物のテレビ番組などでも取り入れられています。
「Bombastic」のトレイラー映像は、時間にしてわずか1分程度。
しかし、そのインパクトは強烈です。
布袋寅泰が得意とする、空間をねじ曲げるかのような鋭さとパワーを持ったリフ。
ファンクミュージックのようなグルーヴのホーンセクション。
シャープでありながら、重量感と安定感のあるリズム。
映像と音楽の臨場感を高めるのは、ギターを弾きながら躍動する布袋寅泰のアクション。
さらに、トレイラー映像には、実際のライブ映像まで挿入されています。
どのステージでも、アクティブなパフォーマンスを見せる布袋寅泰。
もちろん、オーディエンスの熱気も伝わってきます。
布袋寅泰というギタリスト
リフの名手
布袋寅泰のギターを特徴付けるのが、独創的なゆえに凄まじいインパクトを放つリフです。
コードを組み合わせたものから、単音で成立しているものまで。
イントロはもちろん、サビのバッキングでもそのままリフレインされるパターンも目立ちます。
これらは、曲全体のイメージを背負うほどのインパクトを持ったフレーズです。
独特のビート感を持ち、歌メロをしのぐほどの印象的なメロディー。
キャッチーでありながら、耳にした瞬間に布袋寅泰の音だと分かるのです。
質の高いオリジナリティーは、どこに由来しているのでしょうか。
グラムロックやパンク、テクノ、ニューウェイブ、ファンクミュージック。
布袋寅泰のリフの秘密は、その引き出しの多さにあります。
さまざまな音楽の要素を吸収しながら、生み出されたものなのです。
「Bombastic」のリフも、そうした奥行きを感じさせる会心の出来映え。
いわゆるタテノリのビートではない分、内面からあふれ出る力強さが伝わってきます。
ダイナミックなアクション
布袋寅泰のもう1つの特徴は、ギターを弾きながら繰り出す激しいアクション。
自らたたき出すビートに合わせてステップを踏み、長い手足を自在に振り回す。
シグネチャーモデルである幾何学模様のギターも、そんなシチュエーションが似合います。
サウンドだけでなく、視覚にも訴えるギタリスト。
それこそが、バンド時代から変わらない布袋寅泰のスタイルです。
世界を見渡しても、これほどまでのハイパフォーマンスを発揮できるギタリストは稀有といえます。
そのスタイルは、音楽ソフトの映像化が進んだ日本のロックシーンにも、計り知れない影響を及ぼしたのです。
日本のロックシーンを変えたギタリスト
BOØWY以前 Part1
すでによく知られている通り、BOØWYというロックバンドでデビューした布袋寅泰。
BOØWYがブレイクするまで、日本のロックバンドに欠けていたものがあります。
それは、ギタリストの圧倒的な存在感でした。
1980年代半ばに、メジャーな音楽シーンに躍り出た日本のロック。
主にバンドから生まれたさまざまな曲が、チャートをにぎわせるようになります。
一方、ヒット曲を出しても、名前が知られるようになるのはバンドとボーカリストだけ。
バンド文化がまだまだ浸透していなかったせいか、そんな状況が続きました。
ギタリストをはじめ、演奏パートはボーカリストの陰に隠れた存在でしかなかったのです。
実際、派手なステージングを披露するのは、圧倒的にボーカリストというバンドがほとんど。
ギタリストといえば、フレットの上を走らせる指先を見詰めたまま演奏に没頭。
ちょっとしたアクションを見せるのは、わずかな間奏の時間だけ。
そんなスタイルのバンドが、あまりにも多かったのです。
ありきたりでないリフでリスナーを引き付ける曲も、さほど多くはありませんでした。
それらを見事に覆し、ボーカリストと並び立つ存在感を発揮したのが、布袋寅泰でした。
彼がギターにペイントしたのは、BOØWYがブレイクする前のこと。
ギタリストとしての存在感を増したい。
そんな願望が強かったことがうかがえます。