失くしたくないから
僕はずっとこうやってるの
「大丈夫だよ」
その言葉が欲しくて
失くしたくないから
いつもずっとギュッとしてるの
そうすればするほど
本当は壊れるって知ってるよ
出典: スターダム/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
こちらのパートでは、「僕」の心情が生々しく表現されています。
人気者であることの苦悩、スターダムにいるからこそのジレンマを強く感じさせます。
ありきたりになることへの不安
引用歌詞の中で繰り返されているように、「僕」には失いたくないものがあります。
今までの流れから察するに、おそらくそれはスターダムなのでしょう。
スターであることに文句を言ったり、煩わしさをも感じてはいました。
それでもやはり、この立場を失うことには不安を覚えずにはいられないのです。
ありきたりになることに、恐怖を感じているような気さえします。
彼は自分で思っているよりずっと、スターダムにどっぷりと浸かってしまっていたのでしょう。
そこに居続けることで犠牲にするものもある
凡人になるのが怖くて、「僕」はスターダムにしがみ付くようにしています。
子供が不安から、ぬいぐるみを強く抱きしめるようにです。
そうすることで、ますます泥沼にはまっていくことは知っての上です。
スターダムに居続けることで失うものがあることを分かっていてもなお、抜け出せません。
一種の中毒に陥ったような彼の状況には、人気者ゆえの切なさも感じられますね。
器用になれない僕
器用になるって
大事なものが欠けていく気がするんだ
大人は器用で ずる賢いな
出典: スターダム/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
器用に立ち回ることができれば、人気者であっても不安は少ないかもしれません。
事実、そういうことのできる人を「世渡り上手」といったりもしますね。
だけど「僕」は、そんな器用さは持ち合わせていないようです。
それを不器用と片付けるのは、簡単なことでしょう。
しかし、上手に世渡りしたその先に何があるのか想像できるからこそ、そうできない可能性もあります。
それを不器用と呼びはしても、非難はできるでしょうか。
このパート最後の一文が、器用に立ち回る大人たちへのぼやきのように聴く者に突き刺さります。
羨ましくはあるけどそこまでしたくないという、若者らしい感想のようにも思えませんか。
僕と貴方はより通じ合う
心配ないよ わかってるから
貴方のその不安はさ
ちょうど僕も抱いてたものだから
出典: スターダム/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
最後に迎えたサビパートでは、「僕」と「貴方」の距離感が縮まります。
これまではアドバイスを与える側であった「僕」が、共感の姿勢を見せます。
「貴方」を自分に当てはめて、この曲を聴いていた人もいるはずです。
ここでよりいっそう、Mrs. GREEN APPLEが身近になったように感じられるのではないでしょうか。
自分とはレベルの違う有名人であっても、抱える不安は同じなのだと思えるでしょう。
もっと広く見れば、人気者もそうでない人も、不安を持つという点では同じだということです。
人生を自らの手で掴み取る
枯れては散ってく花だって
吹かれては飛んでく雲だって
生まれては死んでく人だって同じもんさ
自らのその手で人達が
荒れ狂う波に舵をとって
生まれた意味となる 幸せを掴めればな
出典: スターダム/作詞:大森元貴 作曲:大森元貴
【スターダム】の最後を飾るパートは、今までのどことも様子が違います。
短いパートですが、ここにはこの曲が伝えたい真意があるのではと感じます。
この曲は、人気者の素晴らしさより、そうであることの大変さにスポットを当ててきました。
彼らが随所随所で抱えてきた葛藤に、一つの答えが出ようとしているのではないでしょうか。
永遠に栄えるものなんてない
引用歌詞の最初の三行を見て、そこに一つの理があるのに気付きますか。
それは、古い言い方で表現するなら「諸行無常」ともいう概念です。
美しく咲く花も、ずっとそのままではいられません。
空に浮かぶ雲だって、ずっと思ったような場所には留まっていられません。
人だって、いつかは死んでしまいます。
スターダムだって、間違いなくそういうものといえます。
永遠に栄えるものなど、きっとこの世の中には存在しないのでしょう。