「自傷」という言葉が浮かんできます。
他の誰かに殺されるのではなく、自分に向かって殺してほしいと願っているようです。
愛に縛られたまま生きていく苦しさから逃れたい一心で死を求めています。
「愛」なしには生きられないと考えるからこそ、「死」に逃れてしまいたい感情もあったのでしょう。
どんな罪を犯したの?
「堕天使」は罪を犯した天使が地獄に落ちていくさまを想像させますが、どんな罪を犯したのでしょうか。
許されない愛にもがく
堕ちていくんだろう
出典: 堕天使/作詞 櫻井敦司 作曲 今井寿
不倫や近親相姦など、周囲からは許してもらえない愛に堕ちてしまったのでしょう。
一般的な常識など通用しない本人にしかわからない世界です。
楽曲を聴いていると、もがきながら落ちていく姿が連想されます。
許されない愛とわかっていながら、相手を求める気持ちが抑えられない。
出口の見えない環境の中でもがき苦しんでいるのです。
もどかしい感情に支配されて投げやりになっているのかも知れません。
罪からは逃れられない
アッハ! 地獄へ
出典: 堕天使/作曲 櫻井敦司 作曲 今井寿
愛し続けることも罪。死んでしまいたいと思うことも罪です。
どちらに転んでも罪の意識から逃れることはできません。
そのまま罪悪感に苛まれながら堕ちていくしかないのです。
地獄へ堕ちていく悲しい自分を、歌詞では笑い飛ばしています。
なるようになれ、と開き直っているのでしょう。
自分自身に対する裏切りが罪であるとしたら、自らの意志とは裏腹の言葉や意識そのものも罪といえます。
記憶を失っている理由を読み解く
わたしは誰?
出典: 堕天使/作詞 櫻井敦司 作曲 今井寿
記憶を失ったのでしょうか。自分ではない自分が現れているとも考えられます。
何もかも失って、普段行わない行動を起こしてしまったのです。
記憶を失ったのではなく、気がついたらもう一人の自分がそこにいた、と思えてしまったのでしょう。
愛の悦びを知って、その魔力のとりこになった主人公は、愛だけを求めています。
実体はどうでも良いのです。例えあなたでなくても。
愛という感情さえあれば満足できるのです。
愛に夢中になりすぎて、我を見失ってしまっているともいえます。
愛するがゆえに、あらゆるものに嫉妬する禁断の感情が芽生え、愛の悦びのとりこになってしまった哀れな姿。
自分であることすら忘れたい気持ちが現れているのかもしれません。
タイトル「堕天使」の持つ意味
「堕天使」とは、キリスト教の世界で、神に逆らって悪魔に転身した天使のことです。
代表的な「堕天使」はサタンといわれます。
この楽曲のタイトルとしての「堕天使」はどういう意味なのでしょうか。
曲中で描かれているのは、愛に苦しむ主人公の姿です。
愛という禁断の木の実を食べてしまったために、罪をも恐れない悪魔に転身してしまいました。
罪悪の境界があいまいになって自分を殺めることにも罪悪を感じなくなってしまったのです。
一貫して歌詞に描かれているのは、悲しみや喜びといったありがちな感情ではありません。
自分の感情を素直に表現できず、思いと逆の行動を取ってしまう主人公の哀れな姿です。
愛のとりこになってしまって、周囲の環境がわからなくなり、自分さえ壊してしまう恐ろしさ。
この楽曲のタイトル「堕天使」は、禁断の愛に溺れ、我を忘れて堕ちてしまう哀れな自分を比喩していると思われます。
まとめ
曲を聴くとわかりますが、歌詞だけでメッセージを伝えようとしてはいません。
電子楽器の音色に幻想的なエフェクトがかけられ、妖しい雰囲気がさらに強調されています。
歌詞だけを見ると、数行の短いメッセージですが、楽曲全体の演出が「天使と悪魔」を連想させるのです。
特に、サビを聴くと良くわかります。