君に想いを伝えられていない弱さ
ここで登場した「弱さ」という歌詞に、混乱してしまう人もいるかもしれません。
ここに至るまでに語られていたのは彼女のことで、「僕」のことではなかったからです。
彼の言う、神様の元に行った時にお叱りを受けることとは一体何なのでしょう。
ここで1つ、大胆な解釈を入れてみたいと思います。
ひょっとすると「僕」は、「君」と呼ぶ人に想いを伝えられていないのではないでしょうか。
今までずっと彼女について語ってきた彼ですが、果たしてそれは、面と向かって放った言葉だったでしょうか。
心の中から声なき声で語りかけていた可能性も、なくはないと思いませんか。
そう仮定すると、それが「弱さ」なのではないかという答えが導き出されます。
好きな人に好きだと言えなかったことを、魂になってから咎められてしまうということです。
この部分の2番目のパートで、彼は自分自身に語りかけているのかもしれません。
もう全部終わりになってしまうのに、それでいいの?と。
地球がなくなってしまえば、目を覚ますことはないはずです。
こちらにも来ない明日のことを思う歌詞が入っていて、また胸がキュッとさせられる感覚があります。
最後だと分かっていても…
「僕」が気持ちを伝えられていないと考えると、続く歌詞の印象も定まってくるでしょう。
ここの3パート目に「思いを馳せる」というフレーズがあることからも、この説が濃厚になってきます。
思いを馳せるとは、単に「思う」ということとは違います。
遠い存在に気持ちを載せることを意味しているのです。
MVの作りからも、彼と彼女が実は遠くにいるんじゃないかと想像できます。
MVで流れる映像は静止画で、全部で3パターンあります。
ここでご紹介している歌詞までで使われているのは、彼女が1人きりでいる画像なのです。
もし2人で最後の日を過ごしているなら、そこに彼がいないのはおかしくはないでしょうか。
そうであるならやはり、彼と彼女は別々の場所にいると考えるのが妥当です。
彼は遠く離れた場所から、同じ夜空を見ているであろう彼女のことを想っているのです。
最後だと分かっていても、やっぱり気持ちは伝えられないままなのでしょう。
ただ心の中から、愛の言葉を贈ることしかできないのです。
「君」は力をくれる存在
最初のサビに続くこちらのパートでは、「僕」と「君」2人のことが歌われています。
MVにも変化があり、今度は男の子が1人でいる画像に変わっています。
この楽曲の冒頭部と、歌詞の調子やメロディーは同じです。
ただ決定的に違うのは、そこに地球が終わる前日というイメージが入ってしまったことでしょう。
その世界観を踏まえて、歌詞を見ていきます。
2人なら不可能なことはない
僕と君なら
何でもできるんだ
それは永遠に光る
一等星みたいに
僕と君なら
空すら飛べる気がする
大丈夫
僕と君なら
どこへも行けるんだ
あの丘の頂上
地平線 彼方
出典: もしも流れ星が落ちたら/作詞:水野あつ 作曲:水野あつ
始まりで彼から彼女への気持ちが歌われていた一方、こちらでは2人のことが語られています。
終末を迎える気配が、より強くなった気がします。
もし、明日世界が終わるとして、1人きりで寂しく過ごしたい人などいないでしょう。
できれば誰かと寄り添って、希望のある話をしたいと思うのではないでしょうか。
このパートに漂うのは、まさにそういった雰囲気だと思います。
2人でいれば何も不可能なことはないと、自分自身に言い聞かせているのかもしれません。
荒唐無稽な想像であっても、心を慰める役には立つのでしょう。
世界が終わる一瞬前でも一緒にいれば怖くない
僕と君とで 日が昇るのも
忘れて話そう
出典: もしも流れ星が落ちたら/作詞:水野あつ 作曲:水野あつ
今回は、「僕」が好きな相手に気持ちを伝えられていないという前提で話を進めています。
「僕」と「君」の間には物理的な距離があって、触れたくても触れることもできません。
それでも彼は想う人がまるで隣にいるように感じ、2人のことを話すのです。
叶うはずのない夢を、自分の中だけで見ているのかもしれません。
世界が終わるその瞬間も、一緒にいればきっと怖くはないでしょう。
強くそう思うことで、失われるという恐怖に打ち勝とうとしているのかもしれません。
とりとめもなく世界崩壊の前夜は過ぎる
前半部と同じように、来るはずのない明日のことを話す内容の歌詞が繰り返されます。
特別に新しいことを言わないことがむしろ、切なさを高めているように思います。
繰り返しは単調さを生み、それは代り映えのしない毎日の連続にも通じるのでしょう。
そんな明日がまたやって来るような雰囲気を、歌詞の繰り返しで匂わせている気がします。
しかし実際に、それはもう無理なのです。
それが分かるからこそ、このとりとめのなさに心を締め付けられてしまうのではないでしょうか。
同じことでも何度でも言いたい
最初に登場したサビと、同じ歌詞が繰り返されます。
先ほどのパートでは、繰り返しによってとりとめのない感じを表現しているのではとしました。
同じ重複でも、こちらの場合は少し意味合いが違ってきます。
「僕」はただ、好きだという気持ちを何度も伝えたいだけなのではないでしょうか。
それがたとえ同じことだったとしても、何度も何度も言いたいのです。
彼女への溢れる気持ちが、そうさせるのかもしれません。