SEKAI NO OWARI「幻の命」に込められた思い

新しい世界があるという、天からの信号。そしてささやき。

「世界の終わり」という言葉を ネットか何かのニュースで初めて耳にしたとき、最初は小説の題名なのかと思ました。次に、音楽というキーワードが入ってきて曲のタイトルかな?と。 でも違いました。

「世界の終わり」は伝える人たちのことで、「SEKAI NO OWARI」が「世界の終わり」だった2010年2月に耳に届いた「幻の命」は、新しい世界があるかもしれないよと呟いてくれた“信号”でした。デビューアルバムの1曲目。それは終わりなんかじゃなくて始まりの唄でした。

初めて聴いた深瀬さんの“言の葉”と“旋律”は、聴き耳を立てたくなるような歌声=ささやきでした。 独り言が鼓膜を超えて流れてくる、心地いいささやき。 それは、それまで、あわよくば飲み込んでしまおうとさえする、お節介なフォルティッシモの歌ばかりの世界ばかりだったものが、耳と心を歌詞とメロディが通り過ぎて空に溶けていき、透明になるグラデーションが残るような、そんなささやきのようでした。

今思うと、「世界の終わり」、いやSEKAI NO OWARI」という世界は、この時すでに完成していたのかもしれませんね。

ネットを賑わす週刊誌の見出しのような噂話

何かの噂話を信じた、陳腐な言葉

今、ネットで「幻の命の歌詞」と検索すると、誰もがその歌詞の意味を深読みしてます。ただ、検索して上位に来るのは女性週刊誌の見出しみたいなものばかりで、出るは出るは、深瀬さんと彩織さんのことや、中絶なんていう言葉がたくさん並んでいます。 何かの噂話を信じた=自分で考えていない、陳腐な言葉がたくさん並んでいます。

 こんな話、誰が調べているんでしょう。深瀬さんと彩織さんのこと、本当かもしれません。そうでないかもしれません。 でも謎です。セカオワの思いがある立ち位置から見ると、こんな話は下世話すぎます。 歌詞の意味は、もっと、大切な何かを伝えようとしているんじゃないかと。 もっと耳を済ましてほしいと思ってしまいました。

キーワードは4月30日

それで、「幻の命」を何度も聴いて、その中で表現されている色々な言葉をよく考えてみたら、勝手に答えを見つけてしまいました。 それは、もしかしたら「4月30日」というワードにあるのかもしれないと。 ここの部分から英語ですし。 そしてそれは、たんなる記号としての4月30日じゃなくて、2005年の4月30日でもなくて、きっと深瀬さんのことだから、世界中の人の命が未来に向けて動き出した決定的な4月30日だったのではないかと。

始まりは白い星が降る夜。

毎日降ってくる黒い塊

白い星が降る夜は何?ここから「幻の命」の話は始まります。

実は70年前、これから来る明るい時に希望を持てなかった頃、眠れない夜に「夢でもいいから会いたいと祈る日々」の中、毎日空から降って来る黒い悪魔の塊は、夜になると白い光が降り注ぐようにも見えたといいます。 自由を奪われた中、あの人、そしてあの人との命の雫。それだけが希望だった世界で、何千万の思いが断ち切られていました。夜空を見上げることもできずにです。

そして歌は「白い星が空に降る」で区切られた後。4月30日のくだりから始まる英語のエンディングへと続きます。

破滅への世界が終わり、新しい世界が始まる予感

April 30,2005
Our child became the phantom.
We named"the life of phantom".TSUKUSHI.
It was a night with red moon blazing beautifully.

出典: https://twitter.com/sekaRadi_bot/status/912146040379207680

1945年4月30日のベルリン

4月30日は、破滅への世界が終わり、新しい秩序が生まれた決定的な日だったのです。旧世界の終わりの日と言ってもいいのかもしれませんね。 1939年から1945年までの6年間に失われた何千万人もの命は、生まれ変われる訳でもなく、その間に営まれた長い日々は戻ってはきません。

そして、1945年4月30日です。ただ、このベルリンでの出来事はしばらく伏せられ、やっと訪れた新しい命を授かる未来への希望をその時世界の人々はまだ知らされていませんでした。 市井の人が、絶望的だけどどこか達観していた当時の感情を、「幻の命」では「私達の子供は幻になりました」という淡々とした言葉で綴ったのではないしょうか。

ベルリンで起こったその事実は、幻ではなく、現実として世界を変えた重大な出来事として歴史に残っています。 だから、その思いを英語で伝えたかったのではないでしょうか。 TSUKUSHIという諡(おくりな)をつけて。