Vaundy『僕は今日も』
主人公は、この楽曲を歌い奏でているVaundy本人です。
誰もが考えずにはいられない、「もし~だったら…」「もし~していれば…」といった妄想。
主人公のVaundyも同じように、そんな「たられば」話をしているようです。
しかし彼の「たられば」話が素敵なのは、そこから「自分自身が歌う意味」を見出そうとしているから。
理想と現実のギャップに悩み、苦しみながらも、そこから音楽への希望を見出したVaundyの物語を見ていきましょう。
対立する両親の言い分
母親は…
母さんが言ってたんだ
お前は才能があるから
「芸術家にでもなりな」と
また根拠の無い夢を語る
出典: 僕は今日も/作詞:Vaundy 作曲:Vaundy
まずはVaundyの両親が、幼き頃より彼に言い続けていたであろうセリフが登場しています。
ここではまず、母親からの言葉が綴られているようですね。
Vaundyの母親はきっと、幼き頃より彼の魅力や才能に気が付いていたのでしょう。
もしくはただ、彼が夢中になっていることを全力でやり遂げさせてあげたかった可能性だってあります。
真実はわかりませんが、歌詞から推察すると後者が正解でしょう。
その証拠に、引用部分最後の歌詞にご注目ください。
母親が伝えてくれた誉め言葉を、素直に受け取っていない様子がわかりますね。
幼い頃は信じていたかもしれないその言葉も、年齢を重ね現実を理解すればするほどに信憑性を失っていく。
だからこそ芸術家という夢を馬鹿にし嘲笑うかのような言葉を吐き捨てているのです。
父親は…
父さんが言ってたんだ
お前は親不孝だから
1人で生きていきなさい
また意味もわからず罵倒する
出典: 僕は今日も/作詞:Vaundy 作曲:Vaundy
続けて、父親から向けられた言葉が綴られています。
…が、読んでわかる通り母親のような優しさは一切感じられません。
さらに引用部分2行目、「親不孝」だなんて何を根拠にそのような発言がでたのでしょうか。
先程の歌詞から想像するとやはり、不安定な芸術家という職業を選んだことに対してだと考えるのが妥当でしょう。
そう、つまりいまの彼の状態=「先の見えない不安定な業界に飛び込んでいること」を否定しているのです。
しかし母親から向けられた言葉とのギャップが大きすぎて、違和感を覚えた人も多いことと思います。
この違和感を解消するには、これらの発言の時間軸に注目する必要がありそうです。
それぞれの時間
母親と父親はVaundyに対し、まるで正反対のことを言っていました。
「芸術家」になることを勧める母親と、それを本当に選んだことに怒りを滲ませる父親。
これらの発言が、同時期のものではないとしたら…?
音楽が好きで、幼き頃より才能を開花させていたVaundyに、大きな希望を抱かせようとした母親の発言。
その通りに不安定な道を歩み始めたVaundyに、心配の気持ちからついキツく当たってしまった父親の発言。
歌詞の順番通りに、時間の流れを感じることができます。
歌う理由
自分を救うため
1人ではないと暗示をして
2人ではないとそう聞こえて
思ってるだけじゃ そう 辛くてでも
そうする他にすべはなくて
愉快な日々だと暗示をして
不協和音が 聞こえてきた
抑えてるだけじゃ そう 辛くて
だから この気持ちを
弾き語るよ
出典: 僕は今日も/作詞:Vaundy 作曲:Vaundy
彼だけでなく、この世界で生きるほとんどの人が日々何かしら苦しさを味わいながら生きているでしょう。
ただの妄想だとしても、自分は幸せで日々充実していると感じながら生きていたいものです。
でも引用部分6行目にもある通り、そうやって無理に作り上げた幸せな日々は脆く儚いもの。
苦しみから抜け出すための行動が、むしろ自分を苦しみの中に追いやってしまう…。
負のループに陥りつつも、その中でただグルグル回り続けるのは嫌だ!と強い気持ちを持っているようです。
Vaundyは自分自身が、そんな負のループの中から抜け出せるように今日も歌うのでしょう。