miwaの原点「めぐろ川」
目黒川の桜並木での恋物語
2010年3月3日発表、miwaのメジャー・デビュー・シングル「don’t cry anymore」。
この歌のカップリング曲として添えられたのが今回ご紹介する「めぐろ川」です。
この曲はmiwaが「私の原点」と評した歌であります。
歌の舞台である目黒川沿いは桜の名所として有名です。
この歌にも桜の季節の目黒川沿いの風景が重要なシーンとして登場します。
春になるとこの曲を想い出す人もきっと多いはず。
東京を離れて地方に行った男性への変わらない恋心をmiwaが切々と歌います。
この曲の歌詞を独自解釈していきましょう。
ファースト・キスは桜並木で
「私」にはかけがえのない想い出
あのね、覚えてる?
目黒川の桜並木を散歩して
あの日、初めて
舞い散る花に隠れるようにキスしたね
出典: めぐろ川/作詞:miwa 作曲:miwa
目黒川は東京の世田谷区・目黒区・品川区を流れる川です。
また目黒川沿いの桜並木は春になると花見客で賑わいます。
この曲「めぐろ川」では最初から最後までこの目黒川が重要な舞台になっているのです。
miwaの歌詞はいつでも優しい・易しい言葉ですので特別に深読みする必要はありません。
提示されたドラマを忠実に読み込んでいきましょう。
桜咲く季節に目黒川を散歩する「私」と「あなた」のふたりの姿が回想されています。
桜の花の生命は儚いものです。
咲いたかと思えばすぐに散りゆく刹那な生命。
ふたりは散りゆく桜の陰で最初のキスを交わします。
東京の街ではいたるところでカップルがキスしているので道を行く人にとってもあまり気にならないもの。
それでもキスをしている本人たちにとってはとても大事なイベントであったりします。
「私」にとってもこのキスはかけがえのない想い出になっているのです。
「私」は小柄な少女
つま先立ちして「あなた」の近くへ
少し背伸びをして 私つま先で恋して
あれから会えない日を ここで乗り越えたの
出典: めぐろ川/作詞:miwa 作曲:miwa
miwaは身長が149cmですから小柄な女の子の気持ちがよく分かるのでしょう。
この曲が彼女本人の想い出を描いたものなのかフィクションであるのかは分かりません。
いずれにしても歌の中の「私」はmiwaと同様に背の低い小柄な女性です。
長身の「あなた」とキスするためにはつま先立ちして背伸びするしかないという可愛いエピソード。
背伸びしたときにつま先に集中した身体の重みに恋心の深さを喩えています。
しかしこのキスをした日を最後に「あなた」とは会えないというのです。
歌詞を読み込んでいくと「あなた」と「私」は決して嫌になって別れたという訳ではありません。
「あなた」が東京を離れる必要があったのです。
おそらく進学か転校などの理由があったはず。
ふたりが会える最後の日だからこそ目黒川の岸辺を散歩しながら想いが募ってキスをしたのでしょう。
東京に残った「私」はときどき目黒川の岸辺をひとりで歩きます。
「あなた」に会えない辛さを身に沁みて感じたことでしょう。
ひとりで歩く度にふたりでいた頃の想い出が甦ってくるはずです。
「あなた」への想いも離れてしまったからこそ強くなっていったのでしょう。
「あなた」が東京を後にする
遠く離れて募る想い
Ah 春が来て 桜が満ちて
あなたにだけ 届けたい想い
愛してる 愛してる
今まで誰にも言えなかった
離れてても あなたのこと 忘れないから
出典: めぐろ川/作詞:miwa 作曲:miwa
最初のサビです。
「あなた」と別れてから年月がめぐりまた桜が咲く季節になりました。
春になるとどうしても想い出してしまう「あなた」への募る恋心。
好きだとか、恋しているよりももっと重い愛を胸に抱えて、ついに言葉にしてしまう。
こんなに誰かのことを深く愛したことはなかったのかもしれません。
別れたといってもそれはただ離れて暮らしているということだけです。
いつまでも一緒にいた頃と「私」の気持ちは変わりません。
「あなた」には東京を離れる事情があった。
大人になれば日本国内であれ、世界のどこであれ、決して会えないという訳ではないしょう。
つまりこの曲の歌詞の「私」はまだ大人になりきっていない少女であると推測できます。
いつか再会してふたりの若い愛を確かめて欲しいものです。
この目黒川をときどき散策しながら「あなた」のことは忘れられないと誓います。
若い頃の恋愛は一生の宝物のような記憶になるものです。
どんな人にでもこうした想い出のひとつやふたつがあるはず。
miwaが切り取った恋心もそうしたかけがえのない想い出の一幕です。