『スリープ』
『Can't Sleep EP』のリードトラック
今回取り上げたいのはASIAN KUNG-FU GENERATION(以下アジカン)の『スリープ』という楽曲です。
2018年に発表された、Weezerのリバースとのコラボ曲を含むパワーポップの金字塔『ホームタウン』。
その初回限定盤には新録未発表曲を集めた『Can't Sleep EP』が付属されていました。
『スリープ』はその『Can't Sleep EP』のリードトラックです。
これまで初回盤を買い逃した方は本格的に楽しむ術のなかった『Can't Sleep EP』。
その後、EP単体での配信がスタートされたことを機にその魅力を皆さんとも分かち合おうと思った次第です。
Feederのグラント・ニコラスとの共作曲!
『Can't Sleep EP』に収録されている曲はそもそも『ホームタウン』の文脈で制作されたものばかりです。
それは作曲を他のミュージシャンに委託しつつもアジカン節のパワーポップを鳴らすことを意味します。
『スリープ』はゴッチと英国のバンドFeederのグランド・ニコラスとの共同制作曲です。
メインとなるデモ音源をグランドに発注し、ゴッチがアレンジをするというプロセスが取られています。
そのためアジカンのこれまでの楽曲と比較しブリティッシュ・ロック色が強く感じられるはずです。
MVをチェック!
まずはYouTubeにて公開されている『スリープ』のMVを見てみましょう。
公開されているのは1分30秒のショートヴァージョンです。
そのため今回はこちらのショートヴァージョンを軸に解説を進めていこうと思います。
振付家の三東瑠璃とのコラボMV
MVの中でゴッチはとある女性と邂逅を果たします。
レオタードに身を包んだ女性は感情を振り絞るように舞い踊り、私たちに何かを伝えようとしているのです。
彼女の名は三東瑠璃(みとう るり)さん。
「Co.Ruri Mito」というダンスカンパニーを主催する人物です。
実はゴッチは2019年2月に初演を果たした三東さんの「MeMe」という舞台公演の音楽監修を務めています。
そんな縁もあり『スリープ』のMVは彼女とのコラボ作品となったのです。
三東さんは『スリープ』で歌われている内容をコンテンポラリー・ダンスで表現しています。
テーマは「新時代の胎動」
新時代の胎動
古びた破片が光った
繋がっていたいよ
出典: スリープ/作詞:Grant Nicholas,Masafumi Gotoh 作曲:Grant Nicholas,Masafumi Gotoh
『スリープ』のMVは短いながらも3つの場面で構成されています。
眠らない街東京の夜の光景・地下道を歩くゴッチ・そして三東さんのダンスシーンです。
一見脈絡のない場面構成と感じる方もいるかもしれません。
しかし歌詞を熟読することでうっすらとした繋がりが見えてくるのです。
『スリープ』は「新時代の胎動」をテーマに制作されています。
すべてのシーンはこの主題との関連性を持って制作されているのです。
華やかな大都会の夜と薄暗い地下道の関係
まずはMVの導入部、そして随所に挿入される深夜の東京の街。
そしてゴッチが1人歩く薄暗い地下道の関係性を検証してみましょう。
東京はしばしば「眠らない街」という言葉で括られるように真夜中に本格的な活動を始める街です。
その象徴として映し出されるのが真夜中の渋谷駅前のスクランブル交差点。
煌びやかに光り続けるネオンが象徴するのは欲望という名のエネルギーです。