英語のタイトル内でWonderlandと表されている部分が「不思議の国」を意味しています。
つまり「ワンダーランド」というのは「不思議の国」と言い換えることができるでしょう。
また、Wonderlandを英訳すると「素晴らしい場所」という意味にもなります。
自分なりの答えを見出したことで新たな場所へと辿り着ける道筋が見えた。
それは暗がりの中で見えた光明のようなものだといえるかも知れません。
その場所は「君」と主人公にとって素晴らしいと思えるような場所。
この場所というのは物理的なものではなく精神的な場所だと考える事もできるかもしれません。
自分自身の殻を破ることで、素晴らしいと思える感情や体験のきっかけを薄っすらと感じ取ることができた。
抽象的ではありますが、そんな状態を指しているのかもしれません。
またその他の見方をするのであれば、この部分の歌詞も山口一郎と音楽の関係に当てはめ直す事ができます。
「ワンダーランド」は彼が新たな音楽を作ろうともがいた末に辿り着きたい場所を指しているのではないでしょうか。
音楽を追求する中で訪れた行き詰まりを打開した時の清々しさ。
それをこの歌詞に込めたとも考えられないでしょうか。
理想が遠ざかる
消えていく場所
甘えた声で鳴いた雛
遠くに消えた蜃気楼
出典: ワンダーランド/作詞:Ichiro Yamaguchi 作曲:Ichiro Yamaguchi
ここではそんな「ワンダーランド」が見えたと思った状態から変化が生じています。
2行目の言葉はその素晴らしい場所が遠ざかっていく様子を表しているのかもしれません。
近づいたと思ったら遠ざかり消えていってしまうような儚くも美しい存在。
それを見て雛が鳴いています。
その鳴き声は理想の場所がどこかへと消えていったことを嘆いているのかもしれません。
「素晴らしい場所」というのはそう簡単には辿り着けないような場所なのです。
掴みかけたのに遠ざかっていく、そんな情景が浮かびます。
「ワンダーランド」へ手を伸ばす
明けてく空に待ったした雛
確かめたのさ ワンダーランド
出典: ワンダーランド/作詞:Ichiro Yamaguchi 作曲:Ichiro Yamaguchi
そうやって遠ざかっていく理想の場所。
1行目でこれが夜の出来事であるということが分かります。
この楽曲の冒頭の歌詞からも感じられる暗闇の雰囲気がここでも顕著に現れています。
もしかしたら朝になれば「ワンダーランド」は消えてしまうのかもしれません。
だからこそ、今しっかりと目に焼き付けようとその存在を確かめているのではないでしょうか。
理想と現実
大人になる
羽ばたく雛 鳥になった
小さく見えたワンダーランド
出典: ワンダーランド/作詞:Ichiro Yamaguchi 作曲:Ichiro Yamaguchi
ここからは2番のサビの歌詞です。
1番では雛だったのが、ここでは鳥になりました。
この変化は、子供から大人への変化を表していると考えるのが1番妥当な考え方でしょう。
これはつまり、未成熟な状態から成熟した状態への変化とも言い換えることができます。
1番でやっと殻を破った存在が、今では大きな鳥の形となったのです。
生えた翼を懸命に動かし大空を飛んで前へ進み、「ワンダーランド」へ近づこうとしているのでしょう。
2行目では、まだ遠くに小さく見えているだけですが段々とその場所が近づいてきているのを感じさせます。
理想は遠い
大きな声で鳴いてみた
遠くに揺れた 蜃気楼
出典: ワンダーランド/作詞:Ichiro Yamaguchi 作曲:Ichiro Yamaguchi
このパートの1行目の歌詞が指しているのは、理想の場所への想いなのではないでしょうか。
2行目の言葉からはまた目指している場所が遠ざかっているような情景が感じられます。
掴もうとしても掴みきれないものに対して自分の気持ちをぶつけるように叫んでいる。
そんな状態をこのパートでは表したかったのではと感じられます。
小さく見えていても、まだまだ辿り着くまでは程遠い。
道のりの長さが感じられます。
また、見えては消えるというその揺り戻しからは、波が寄せては返す情景を連想させます。
これは、この楽曲の冒頭の歌詞から彷彿とさせられた海のイメージと繋がる光景です。
手に入れようとしても離れていくというのが、理想と現実の狭間を表しているようにも思えます。