星野源「歌を歌うときは」
星野源さんのライブに行って初めてこの曲を知ったという人も多いことでしょう。
アルバムならまだしも、シングル「くだらないの中に」のカップリング曲だったため、ファンな方でもそこまで行き届いていなかったかもしれません。
1.くだらないの中に
2.歌を歌うときは
3.湯気
4.ブランコ(House ver.)
5.くせのうた(House ver.)
出典: くだらないの中に/星野源
この曲は星野源さんのライブの1曲目に歌われることが多いです。
なぜならこの曲が星野源さんの歌を歌うことに対する決意表明となっているからです。舞台袖で円陣を組んだりするのと同じです。
星野源さんは元々インストバンドのリーダーとしても活動していました。
これまで近くにいたメンバーはもうおらず、1人でステージに立つことになります。
ステージに立つことで出てくる様々な不安を取り除く「お守り」のような役割を果たしているのかもしれません。
「歌を歌うときは」の歌詞に注目
2分31秒に込められた密度の濃い歌詞
J-POPはAメロ→Bメロ→サビ→Aメロ→Bメロ→サビ→ラストサビのような4分程度の構成になっていることが多いでしょう。
「歌を歌うときは」の構成は展開がほとんどなく、2分31秒という短さで終わりを迎えます。
文字に起こしてみても200文字を下回る異様な少なさです。ですがその200文字の中に強い思いが込められています。
本当に伝えたいことは曲の時間や文字の長さに関係ないのだと、この曲を聴くたびに思わされます。
誰に歌っている?
この曲に人称が一切出てきません。
これから人前で歌う自分のために、気持ちを入れようと歌っているように取ることもできるし、そのまま聞き手に語りかけているようにも取れます。
「〜するのよ」というように優しく伝えようとしている星野源さんの人柄が歌詞に出ているでしょう。
また、この曲の歌詞は常に核心をついてきます。
シンガーの方は是非この曲の歌詞をよく理解し、自分はできているかな?と考えながら聴いてもらいたいです。
ステージの上で
ライブに臨む前の決意表明として歌われているので、ライブのシチュエーションも交えながら解釈していきます。
いい歌を届けるために
歌を歌うときは 背筋を伸ばすのよ
出典: 歌を歌うときは/作詞:星野源 作曲:星野源
まずはステージ上での話からスタートします。
「背筋を伸ばして」と子供のころから親や学校の先生に言われてきた経験があると思います。勉強するときだけでなく、歌う時も言われてきたでしょう。
当たり前ですが、歌声を届けるため歌手にとても大事なことです。
更にステージの上に立つということは沢山の観客からの視線を浴びます。そのため卑屈にならないようにという意味も込められているのでしょう。
背筋を伸ばし自分が一番良い状態で臨むべきなので、最初にこの言葉が出てきたのでしょう。
ありのままの自分をぶつけるために
人を殴るときは 素手で殴るのよ
出典: 歌を歌うときは/作詞:星野源 作曲:星野源
「人を殴る」と出てきますが、本当に人を殴るわけではありません。これはライブでの話です。
ライブ会場ではお客さん、共演者、予期せぬアクシデント、ステージの上に潜む魔物、自分、沢山のものと戦うことになります。
見方になることもありますが、ステージの上に立つことで見に来てくれているお客さんですら敵のように思えてしまうことがあるでしょう。
それらと戦おうと思っても相手になれるのは生身の自分だけです。武装して自分を大きく見せようとしてもボロが出てしまいます。
それに、ありのままの自分ではない状態で勝てたとしても本当の意味では勝つことはできません。
星野源さんのライブはありのままの自分を全てさらけ出し、エンターテインメントに変えてきました。
ライブが戦いであるとするならば、ありのままの状態で挑むという決意表明です。