出逢いと別れを繰り返す
日々の中で
一体全体 何を信じればいい

出典: Prayer X/作詞:常田大希 作曲:常田大希

ED部分の歌詞はかなりアニメに沿っています。

アッシュの心情を考えながら聞くと胸が締め付けられるのですよ……。

「出逢いと別れ」普通なら単純に人が出逢って別れることと思うでしょう。

でもこの場合「別れ」はそのまま「死」に直結します。

そんな毎日を繰り返して、何を、誰を信じたらいいのか分からないという絶望が見えます。

必死だった「生きる」ために……


生まれ落ちたその時には 泣き喚いていた
奪われないようにくたばらないように
生きるのが精一杯で

胸に刺さったナイフを抜けずにいるの
抜いたその瞬間飛沫(しぶき)をあげて
涙が噴き出すでしょう

出典: Prayer X/作詞:常田大希 作曲:常田大希

この世に生まれる時は誰でも泣きながら生まれてきますね。

でもアッシュが子供でいられた時間はとても短いものでした。

傍から見てもアッシュのプラチナ・ブロンドとグリーン・アイズは際立っていたのです。

醜い大人の欲望に傷つけられたアッシュは生きていく手段を探し始めます。

ついた傷の塞ぎ方も分からず、血が吹き出ないようナイフは刺さったままで……。

アッシュは自分が傷ついたことさえ気付かないように心を殺して生きて来たんです。

英二に会うまでは。

涙の意味

アッシュの心情が描かれたこのフレーズは、アニメを知る人の胸をグッと締め付けるでしょう。

ここでは歌詞に登場する「」の意味に迫ってみます。

歌詞後半をご覧ください。

刺さったナイフを抜けば血が出る。それは誰もが想像できる普通の展開です。

この血はもちろん、ナイフが刺さった誰かの痛みを意味するでしょう。

しかしこの人は、ナイフが刺さっていることを隠し通したいと願っています。

なぜなら誰かがナイフの存在に気付いたら、心配をかけてしまうから。そして、気を遣わせてしまうから。

その悲しみは血よりも先に流れ出し、その人自身、そして周囲の人々も呑みこんでしまうでしょう。

だから隠そうとしているのです。

自分がすべてのナイフを受けていれば、他の誰も傷つくことはないだろう。

そうすることで周りの大切な人たちを守ることができるかもしれない。

そんな「自己犠牲的な優しさ」が見え隠れしているのです。

「涙」は、その自己犠牲がばれてしまったことに苦悩する気持ち。

そしてその苦悩に気付いた周囲の人たちの悲しみです。

悲しませるわけにはいかない。だからナイフはずっと抜けないままなのです。

アッシュと英二を反映

強がりの裏には

【King Gnu/Prayer X】「BANANA FISH」ED曲に込めた葛藤と祈り…歌詞を解釈の画像

屈託のない笑顔の裏
隠していた
生きるための嘘が
最早本当か嘘か
わからなくて

出典: Prayer X/作詞:常田大希 作曲:常田大希

ここからはアニメ版のEDで使用されていなかった歌詞を解説していきましょう。

こちらのシーンはアニメで語られているより前、つまりアッシュの幼少期にさかのぼっていると考えられます。

アッシュは幼い頃に巻き込まれた性犯罪のせいで、心に深い傷を負っていました。

先述した「ナイフ」やそこから溢れ出す「涙」も、この事件がきっかけのものと考えて間違いないでしょう。

きっと周囲の人たちが想像できないほどに、深すぎる傷を抱えていたのです。

しかしアッシュはストリートキッズたちを束ねるボスです。

ボスである以上、弱々しい姿を見せるわけにはいきません。

仲間たちがいつでも頼れる、強くてカッコいいボス。アッシュはそうありたいと願っていました。

そうあるために嘘を重ねたかもしれません。

もはや自分自身の存在さえ真実か嘘か、わからなくなっていたかもしれません。

本当の自分はいったいどんな人なのだろうか。ここに存在している自分は本物なのだろうか。

常に疑心暗鬼状態だったのでしょう。

アッシュの本音に気付いた?

【King Gnu/Prayer X】「BANANA FISH」ED曲に込めた葛藤と祈り…歌詞を解釈の画像

自分の居場所でさえも
見失っているの
怒りに飲まれて
光に憧れて
今日も空を眺めるのでしょう

出典: Prayer X/作詞:常田大希 作曲:常田大希

しかしそんなアッシュを救ったのが、偶然出会った日本人の英二でした。

英二は言葉にせずとも、アッシュの背負うものに気付いたのかもしれません。

歌詞を見てみると、先程のフレーズはアッシュに近い目線で語られていましたね。

しかしここのフレーズは、どちらかというとそんなアッシュを離れたところから見ているような気がしませんか?

こう考えると、このフレーズはアッシュの本音に気付いた英二の視点だと考えられます。

アッシュはキッズたちのボスとして確固たる地位を築いていました。

しかしその内面はとても不安定だったのでしょう。

英二はアッシュの存在の危うさに気がついていたのかもしれません。

だからこそ歌詞1-2行目のような気持ちで彼を見つめていました。

そんな不安定なアッシュは、どんなことがあろうと弱さを見せません。

もちろん物語の中盤から英二へ心を開いていきますが、それまでは強い姿勢を崩しませんでした。

3-5行目は距離が縮まる前、英二が見たアッシュの姿を綴っているのかもしれません。

アッシュが一体何を抱えているのか、一体何を求めているのか、わからない。

今日も教えてはくれないんだね。英二の寂しさのようなものも感じられます。

2人の目線で