「アイヤ子守唄」とは
お母さんに対する唄
この楽曲は、主人公がお母さんの子守唄を思い出しながら、自身の心の内を歌っています。
福田こうへいといえば、パワフルな歌唱をイメージする人も多いかもしれません。
「アイヤ子守唄」は他の楽曲とは少し異なり、心の機微をやわらかに歌い上げた作品です。
だれもが思わず共感してしまうような郷里の母を恋しく想う心情が明快に描写されています。
作詞作曲は北島三郎
「アイヤ子守唄」の曲づくりは、北島三郎が福田こうへいのために手がけました。
作詞作曲家は原譲二名義ですが、これは北島三郎のペンネームです。
福田こうへいの歌声が最大限に生かせる曲づくりをしています。
また北島三郎が、これからの演歌界を担うのは福田こうへいだと発言したというのも有名な話です。
「アイヤ子守唄」のレコーディングにも北島三郎は参加するほどの気合いの入りようでした。
北海道出身で津軽海峡を目の前に育った実感を伴う北島三郎の歌詞は、ストレートに胸に響きます。
津軽アイヤ節がキーワード
「アイーヤー アー」
出典: アイヤ子守唄/作詞:原譲二 作曲:原譲二
この楽曲では、歌い出しから津軽アイヤ節と同じように「アイーヤー」とたっぷりと歌い切ります。
津軽アイヤ節は九州のハイヤ節にルーツをもつ民謡で、津軽五大民謡のひとつとして酒宴でも歌われるそうです。
津軽アイヤ節と子守唄を結び付けた北島三郎の詩は、情景が鮮明に浮かんでくるような臨場感を与えます。
民謡歌手日本一ならではの歌声
福田こうへいは、民謡のコンクールで優勝を重ねているだけあって、歌い出しから力強くも温かい圧巻の節回しです。
その声は、まるでこれから始まる物語の舞台まで時空を超えて聴き手を連れていってくれるような気さえします。
福田こうへいの父は民謡歌手の福田岩月、母も民謡歌手で踊り手もしていたといいます。
脈々と受け継がれる民謡歌手の心をもち、右に出るものがいないのも納得ですね。
そこに演歌ならではの趣が重なっている、とても贅沢な一曲といえるでしょう。
郷里の津軽を離れる決意
津軽から夢を抱いて都会へ
「ねぶたが自慢の 津軽の里を
一人夢追い 都の空へ」
出典: アイヤ子守唄/作詞:原譲二 作曲:原譲二
歴史と伝統ある津軽に生まれ、大自然に囲まれて育った主人公は、夢を抱いて単身で都会に出る決意をします。
決して田舎を捨てて飛び出していくというわけではないでしょう。
ねぶたに代表される津軽の伝統に誇りを持ち、郷里を愛する気持ちはあっても、自分の夢のため決断したのです。
自分は一人でどこまでやれるのか、試してみたい気持ちもあったのかもしれません。
夢を叶えて成功するまで津軽に戻ってこないぞという意気込みを胸に、羽ばたいていったのではないでしょうか。
津軽の冬の厳しさと心細さ
「しばれる峠は 雪の道
塗れたまつ毛が凍りつく」
出典: アイヤ子守唄/作詞:原譲二 作曲:原譲二
一人で夢をかなえると心に決めたものの、しんしんと雪の降り積もるなかでの峠越えは寒さが体にこたえます。
都会に向かう胸の内には希望と不安が入り混じり、厳しい寒さも相まって寂しさがこみ上げてくることでしょう。
凍りつくまつ毛には、色んな感情が湧き上がってきてにじんだ涙も混ざっていたかもしれません。
北国育ちのため、寒さには慣れているはずの主人公。
しかし、今後はだれにも頼ることもなく自分で乗り越えるしかないという現実を思い知らされてしまいます。