映画「樹海村」主題歌
「鬼ノ森」は、清水崇が監督を務めたホラー映画「樹海村」の主題歌に起用されています。
平凡に暮らしていた姉妹が、ある「箱」をきっかけに恐ろしい展開に巻き込まれてゆく本作品。
有名な都市伝説や、誰もが知る「富士の樹海」を組み合わせた恐怖のストーリーとなっています。
これまで純粋なラブソングを多く歌ってきたCHiCOにとって、ホラー作品は人生初ともいえる体験。
しかしその繊細で伸びやかな声で、美しく、どこか恐ろしさを感じさせる楽曲に仕上がりました。
そして、今までライブ以外での顔出しはほとんどしなかったCHiCO。
今回のMVでは和装をした姿を公開しており、その美しさに驚いたというファンも多かったようですよ。
沙羅双樹の宿る森で
永久(とこしえ)の木々 根に沙羅双樹
峰の裏 鬼が住む山に抱かれ
人は生きてる 人は生きてる
神秘の森にさらさら溶けて
溶けて
出典: 鬼ノ森/作詞:HoneyWorks 作曲:HoneyWorks
この楽曲では、誰もが恐怖する恐ろしい存在として「鬼」を登場させています。
映画「樹海村」では、恐れるべきなのは「心霊」。
どちらも実態が分かっておらず、古くから恐怖の対象とされてきたものです。
そんな鬼がたくさん住んでいる山というのは、まさに「樹海村」のことと考えられます。
この世に生きることが耐えられずに樹海へ向かったものの、命を断ち切れずに樹海の中で生き延びた人々……。
そんな彼らが集う場所こそが、「樹海村」なのです。
そこは木や草に囲まれ、現実とは遮断された世界。
沙羅双樹の木には「復活」の意味があり、仏教では命が宿るともいわれる神聖なものです。
もう生きてはいないと思われている人々が集うこの場所では、確かに生命が息をしている……。
その命と人々の声は、深い森の中に溶けて消えていくような儚さを持っています。
怨念が幼い姉妹を襲う
姉妹を繋ぐ血の絆
温(ぬく)い温(ぬく)い風が
子どもたちと遊んで
一人隠し 二人隠し
絆繋ぐ赤露を
どこに還しましょう
出典: 鬼ノ森/作詞:HoneyWorks 作曲:HoneyWorks
終わってしまった命と、まだ懸命に生きている命が混在する「樹海村」。
そんな森に迷い込んだ姉妹を包む生ぬるい風は、これから起こる悲劇を予言しているかのようです。
遊びに誘うように取り囲み、気がつかないうちに元の世界へ戻れなくしてしまう風……。
その風こそが、樹海村の人々が抱いている「怨念」の形なのです。
次第に姉妹はバラバラに引き離され、1人、また1人と森へ吸い込まれていくことになります。
映画では、妹が姉を守るために自らの命を捨てるシーンが印象的ですね。
母、姉妹、そしてその子供へと引き継がれていく「血」は、決して途切れるものではありません。
現在も、そしてこれからも、彼らの怨念は消えずに続いていくのです。
絆を断ち切って離れ離れになった姉妹
切り取って
永久(とこしえ)の木々 根に沙羅双樹
峰の裏 鬼が住む山に抱かれ
人は生きてる 人は生きてる
神秘の森にさらさら溶けて
溶けて
出典: 鬼ノ森/作詞:HoneyWorks 作曲:HoneyWorks
緑色で覆われた森の中で、ひときわ目立つ赤いもの。
それは姉妹を繋ぐ血の絆であり、彼女たちの命を繋ぐ命綱でもありました。
元の生活に戻るために必要不可欠であったその絆を、妹は姉を逃がすために自ら断ち切ってしまいます。
そうして、いつの日にか自分を守るために命を断った母親のように、同じ運命をたどるのです。
大勢が命を失くすこの森で、救いのない魂はいつまでもそこにただようだけ。
それはまるで生きているかのように、恨みと切なさに満ち溢れているのです。
ここでは確かに人が生き、そして人生をあきらめてしまう……。
1人1人が抱いている思念は、広大な森の中でとてもちっぽけなものにすら感じられます。
自分を守るために失われた命
1人ぼっちの森で
赤い目をこすって
一人だけのかくれんぼ
いつの間にか暗くなって
出典: 鬼ノ森/作詞:HoneyWorks 作曲:HoneyWorks