NONA REEVES【今夜はローリング・ストーン feat. RHYMESTER】歌詞を徹底解説！

もちろんサンプリング音源に使用されるのはレアなレコードばかりとは限りません。

パーティーの2次会では仲間がDJとなり次々と懐かしのナンバーをかけていきます。

Al Green『Let’s Stay Together』からのStevie Wonder『You Are the Sunshine of My Life』。

そしてラストにかけるのはMinnie Ripertonの74年の大ヒット曲『Lovin' You』です。

ちなみにこのバースの時、さりげなくギターが『Lovin' You』のメロディーを弾くという憎い演出も！

このベタすぎる選曲にはDJ役の仲間から新郎新婦へのはなむけのメッセージが込められています。

つまり「いつまでもお幸せに！」という照れくさくて直接口にできない言葉です。

音楽が大好きで共に夜を過ごした仲間の門出に思わず感無量の涙が流れます。

40歳を超えるとなぜか涙もろくなるという通説は本当なのでしょう。

RHYMESTERとNONA REEVESはそのことを実感じているのです。

さていよいよサビのパートの解説となりました。

そのことは『今夜はローリング・ストーン』という曲名に込められた意味を解説することとも同義です。

この曲名から想起させるものといえばBob Dylanの65年のヒット曲『Like a Rolling Stone』です。

ちなみに「今夜は」という曲名は70年代～80年代の洋楽ヒット曲の日本語タイトルで頻繁に使用されたもの。

90年代に小沢健二とスチャダラパーが『今夜はブギー・バッグ』で用いたパロディが有名です。

さて、この「ローリング・ストーン」という言葉には2種類の解釈があることをご存知でしょうか？

Bob Dylanの祖国イギリスでは「転石苔を生さず、転石苔を生ぜず」という諺で古くから使用されています。

「転がる石」、つまり職業を転々とする人には能力が身につかないというネガティブな表現なのです。

しかし同じ英語圏でもアメリカにいくと「転がる石」はポジティブな意味に逆転してしまいます。

アメリカでは「転がる石」は開拓精神あふれる勇気ある者という意味で使われるのです。

RHYMESTERとNONA REEVESが「ローリング・ストーン」に込めたのはもちろん後者でしょう。

ヒップホップシーンの最前線に立ちながらも常に冒険を忘れないRHYMESTER。

そして藤井隆や吉田凜音のプロデュースなどジャンルを問わず自分の「好き」を追及する西寺郷太。

その両者の姿勢はベテランながら常に開拓精神に溢れており多くのフォロワーを生み続けています。

そして彼らは「ローリング・ストーン」は止めることができないと何度も繰り返します。

ある程度の年齢を取ることで人は自然と保守的になっていくものです。

家族や仕事など守るべきものができるのですからそのことは当然の変化だといえるでしょう。

しかしベテランと呼ばれるようになってもなお彼らは先駆者としての歩みを止めません。

それは彼らにとっての『B-BOYイズム』であり、また『未来』でもあるのです。

満を持しての共作となった『今夜はローリング・ストーン feat. RHYMESTER』。

この曲は2019年発表のNONA REEVES16thアルバム『未来』に収録されています。

NONA REEVESがアルバムタイトルに日本語を使用するのは『未来』が初めてです。

結成から20年以上に渡りバンドという地盤を守ることは容易ではありません。

アルバムには様々な苦悩や葛藤を経て彼ら自身が築き上げた『未来』。

そして『未来』を夢見る若者に向けた彼らからのメッセージが詰められているのです。

もう1つ、『未来』というタイトルのきっかけとなった出来事があります。

それは西寺郷太が作詞を務めた大塚製薬のCM曲『キミの夢は、ボクの夢。』です。