彗星のごとく現れた15歳の帰国子女

宇多田ヒカル「Automatic」の歌詞を紐解くの画像

宇多田ヒカル1998年12月、「Automatic」でデビューしました。

15歳で作詞作曲を手掛ける帰国子女であり、また昭和歌謡で唯一無地の存在であった歌手藤圭子の娘でもあった事から話題になり、瞬く間に大ヒットしました。

それはそれまでの日本の音楽業界の流れを変えたと言っても過言ではないぐらい衝撃を与え、大御所ミュージシャン達からもその才能は認められています。

「Automatic」とは?

七回目のベルで受話器を取った君
名前を言わなくても声ですぐ分かってくれる
唇から自然とこぼれ落ちるメロディー
でも言葉を失った瞬間が一番幸せ

出典: Automatic/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

まずこの曲のタイトルは「Automatic」ですが、考えてみるとタイトルだけではどういう内容なのかはあまり想像がつかないですよね。

Automaticとは、辞書で調べると自動的な、習慣的な、無意識的なという意味があります。

この曲では、一体何が「Automatic」なんだろう?という視点で歌詞を聞いていくと面白いと思います。

まず、Aメロの歌い出しが七回目の~から始まっている部分ですが、この出だしの言葉の響きとメロディーが凄くマッチしているので、冒頭で聞いている人の耳をグッと惹きつける要素が組み込まれています。

そして、Aメロの終わりまでだけで「好き」など直接的な言葉を使っていなくてもとても好意を抱いている相手がいる事が分かり、切ない雰囲気だけどノリの良いメロディーに合わせて絶妙な感情表現がされています。

この事によって、Aメロを聞くだけで、聞いている人が自然と最後まで聞きたくなるような力がある、とても上手く作られている冒頭部分です。

嫌な事があった日も
君に会うと全部フッ飛んじゃうよ
君に会えない my rainy days
声を聞けば自動的に sun will shine

出典: Automatic/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

Bメロでは曲のタイトルAutimaticの意味である「自動的に」という言葉が出てきます。

これがこの曲全ての答えであるとも言えます。

凄く好意を寄せている相手がいて、その相手の事を思ったり声を聞いただけでも無意識に感情が揺れてしまう、その事が今は全てという感じですね。

既に1番のBメロまでで、この曲の意味はほとんど説明し終えているという事が分かります。

宇多田ヒカル「Automatic」の歌詞を紐解くの画像

I'ts automatic
側にいるだけで その目に見つめられるだけで
ドキドキ止まらない Noとは言えない
I just can't help

I'ts automatic
抱きしめられると
君とparadiseにいるみたい
キラキラまぶしくて 目をつむるとすぐ
I feel so good
I'ts Autmatic

出典: Automatic/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

Bメロでこの曲やタイトルの意味はほとんど説明し終わった後、サビでは口ずさみ易さ、親しみ易さが優先されているように思われます。

実際に相手に合っている時、一番自分の気持ちが高まっている様子が表現され、全てが自動的に、自分ではコントロール出来ないほどときめきが止まらないという感情が、少し初々しくもとても洗練された言葉と、「ドキドキ」「キラキラ」など親しみ易い言葉で書かれています。

宇多田ヒカル「Automatic」の歌詞を紐解くの画像

あいまいな態度がまだ不安にさせるから
こんなにほれてることは もう少し秘密にしておくよ

出典: Automatic/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

2番Aメロです。一番のAメロ出だしは「七回目」でしたが、その最初に発音する「な」と、この2番Aメロ最初は同じ母音で発音する文字で始まります。

そこはおそらく、また2番も1番と同様Aメロの出だしを大事にし、ここからまた最後まで聞かせられるようメロディと歌詞の響き方を考えて作られていると思われます。

そして、この歌詞は「あいまい」や「ほれてる」など、漢字にしても良い言葉があえてひらがなで書かれているのも興味深い所です。

漢字にするイメージと、ひらがなで見た時のイメージは違うので、そこを区別して表現しているところも彼女のこだわりと才能が見えます。

そう考えると漢字よりひらがなで見た方が少し幼い印象を持つ事が出来て、それで大人ぶっているけど初々しい恋する少女の気持ちを表現しているような、そんな印象を受けます。

やさしさがつらかった日も
いつも本当のことを言ってくれた
ひとりじゃ泣けない rainy days
指輪をさわれば ほらね sun will shine

出典: Automatic/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

ここでも、漢字で書かれていても良い言葉がひらがなになっている部分が沢山あります。

これも2番Aメロで紹介したように、ひらがなで書かれている事によって漢字とはまた印象が変わり、例えば「指輪を触れば」より、「指輪をさわれば」の方が少し幼い印象を持てます。

歌詞カードもじっくり見る事によって、更に曲を深く知る事が出来るように、そういう楽しみ方も出来るように作られていますね。

また、「やさしさがつらかった」というのは、その相手が他の人にやさしくしているところを見て嫉妬したのか、自分にやさしくしてくれたけど相手が本当に自分の事が好きなのか不安なのか、いろんな意味に取れますね。

そこまで不安になるぐらい、相手の事が好きな様子が分かります。「いつも本当のことを言ってくれた」というのは、その相手が誠実で、とても信頼している様子も想像出来ます。

「嫉妬」など直接的な言葉を使わずに、こんな感情表現で書いている所も彼女の作品の深さが分かりますね。

宇多田ヒカル「Automatic」の歌詞を紐解くの画像

It's automatic
側にいるだけで 体中が熱くなってくる
ハラハラ隠せない 息さえ出来ない
I just can't help

出典: Automatic/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル

こちらは1番サビと同様、実際相手に会った時に気持ちが一番高まっている様子が書かれています。

1番サビと同様、実際体で感じた事を表現されいますね。

1番で出てきた「ドキドキ」「キラキラ」と同じように、今度は「ハラハラ」とカタカナで感情表現されている部分があります。

ときめきや安心感だけではなく、相手にこんな好きという事が分かったらどうしようと困惑している、そんな感情にもさせてくれる相手が好きでたまらないという様子が分かります。

I'ts automatic
アクセスしてみると 映るcomputer screenの中
チカチカしてる文字 手をあててみると
I feel so warm

出典: Automatic/作詞:宇多田ヒカル 作曲:宇多田ヒカル