「love & smile」とはどういうことか
2010年6月23日発表、西野カナの通算2作目のアルバム「to LOVE」収録の「love & smile」。
楽曲はこの時代の先進的なJ-POPサウンドが全開で、ビートが効いたサウンドは心が上がっていきます。
西野カナのボーカルや歌唱力には定評がありますが、この曲でも丁寧に愛を歌い上げました。
歌詞はバラード調なのですが軽快なサウンドと歌唱が素晴らしいです。
辛いときであってもパートナーがくれる愛が自分を支えてくれると歌います。
愛というものはどのように人の心をこれほど揺さぶったり掴んだりするものなのか。
西野カナに尋ねると愛についての深い洞察が得られるかもしれません。
「love & smile」の歌詞を徹底解説しながら愛というものの正体に迫れたら嬉しいです。
愛に支えられながら生きる私たちを後押ししてくれるこの曲から多くのことを学びましょう。
それでは実際の歌詞をご覧ください。
笑顔という言語
登場人物に自分を投影
余裕がなくてため息ついて
めげそうになっている時も
この足が止まらないのは
君の笑顔に会いたいから
Love くれるから Smile それだけで感じる その愛だけ
出典: love & smile/作詞:Kana Nishino 作曲:toiza71(Digz,inc)
歌い出しの歌詞になります。
登場人物は語り手と「君」です。
語り手の性別は明示されません。
パートナーを「君」と呼ぶのは青春期の男性に多いでしょう。
語り手は男性・男子だと仮定した方が解釈しやすいことは確かです。
しかし西野カナのファン層は男女に偏りがないでしょう。
一応、語り手は男性・女性どちらでも解釈可能なようにできています。
自分の境遇に応じて語り手か「君」に思い入れするといいでしょう。
また語り手と「君」の年齢層も自由に設定できるようになっています。
学生であっても社会人であっても意味が通じるように巧妙に歌詞を書いているのです。
自分の置かれた状況に応じて語り手もしくは「君」へと思い入れできるようになっています。
どのようにも思い入れできる間口の広さを予め用意しているのが西野カナの作詞の素晴らしさです。
歌詞はリスナーのものでもありますので、ぜひ自由に思いを寄せてみてください。
笑顔を壊さないで生きる
語り手の回想の中で愛が発見されるのです。
自分がどんなに辛い境遇にあるときでも「君」が笑顔でいてくれる。
その度ごとに語り手は窮地を脱します。
「君」がいてくれることがいかに幸せを支えてくれているのか語り手は深く思い知るのです。
疲れているときほどパートナーの存在をありがたく思うときはありません。
「君」の優しい言葉や仕草、そして笑顔によって心が癒やされたという経験の持ち主は多いはずです。
こうしてお互いに支え合うことを第一義にして私たちは誰かと繋がります。
どうしても会いたくなる笑顔というものがこの世界にはあるのです。
愛情は特に言葉に変換する必要はないかもしれません。
ときには愛の言葉を欲しがりますが、それも毎日ではないのです。
愛されているという実感は何か観念によって保証されるものではありません。
肉感的な触れ合いとボディ・ランゲージのようなもので伝えることができます。
語り手は「君」からの愛を十分感じているのです。
そして大事な「君」の笑顔を壊さずに生きることこそ自分の使命だし愛の本質だと理解します。
この愛に生きてゆけば間違いがないだろうと気付くのです。
若いふたりの愛
想い出の場所で笑えるように
I'm searching for what you have in your heart
会えない日も見守っていてほしい
I'm giving my love I hope it's forever
またこの場所で笑える日までずっと
出典: love & smile/作詞:Kana Nishino 作曲:toiza71(Digz,inc)
英文がありますので簡略な訳を添えましょう。
「僕(あるいは私)は君の心にあるものを探している」
「僕(あるいは私)は自分自身の愛を授けたいしこの愛が永遠であることを願っている」
西野カナは帰国子女らしく様々な英文を歌詞に挿入します。
素晴らしい発音なのでそこだけ聴くと洋楽のように思えるでしょう。
しかし決して難しい英文は挿入しません。
語り手は愛されることの自覚の中で生きています。
その愛によって支えていられないと自分はどこか損なわれてしまうとさえ思うのです。
想い出の地でのスマイルを心に呼び起こします。
あのように屈託なく笑えることができたなら語り手はこの先の人生で何も心配なく乗り越えられる。
そんな手応えを胸に覚えているのです。
若い愛を永続させるために
「love & smile」が若いふたりの愛を描いた歌詞であることは明白でしょう。
この時代はロマンチシズムに酔って今ある愛を永遠だと信じ込む傾向があります。
しかし若いうちの愛は中々持続しないのが現実でしょう。
お互いに愛についての理想というものを持ちすぎているのです。
この理想が叶わないものになると若い愛は潰えてしまいます。
この語り手と「君」の愛が彼らの希望に沿って永遠に生きられることを願いたいです。
語り手と「君」との愛は理想的に思えるので大丈夫かなとも思うのですが。
しかし理想的な愛というのもどこか怖い側面を持つときもあります。
笑顔を分け与えていられることにいつまでも悦びを見出して欲しいものです。
語り手は「君」へ様々な要望をしています。
この要望を叶えるのが「君」の役目なのでしょうか。
「君」は語り手のパートナーとはいえ独立した個人です。
もっと穏やかに分かり合える関係を目指した方が愛も長続きするような気がします。
求めるということは結構な毒を含むものなのです。
しかし語り手は求めているばかりではありません。
積極的に「君」へ自分の愛を授けようとします。
相互に授けたり求めたりするうちはまだこの恋も大丈夫なはずなのです。