アン・ルイスの代表曲「あゝ無情」
「歌謡ロック」の先駆者・アン・ルイス
1971年のデビューから1996年の一時引退まで日本の歌謡史の一時期を鮮やかに駆け抜けたアン・ルイス。
歌謡曲にロックを持ち込んだ「歌謡ロック」でヒット・チャートを賑わせた1980年代の活躍が目覚ましいです。
「ラ・セゾン」「六本木心中」「あゝ無情」と続々と大ヒットを飛ばしましました。
バブル経済期の名曲「あゝ無情」
ケバくてド派手な衣装と髪型やメイクで音楽番組などを舞台に異彩を放つ彼女。
「あゝ無情」はそんなアン・ルイスの魅力が120パーセント詰まった名曲です。
作詞は音楽評論家・作詞家の湯川れい子。
この歌詞がバブル経済期の日本の女性を象徴するような内容で見事です。
詳しく見ていきましょう。
衝撃的な歌い出しに注目
「あゝ無情」はバブル経済期の悲恋
「あゝ無情」はアン・ルイスにとっては26枚目となるシングル曲。
「六本木心中」「ピンクダイヤモンド」に続く湯川れい子作詞のシングル曲です。
ヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」を彷彿させるタイトル。
とはいえパンひとつのために監獄生活を強いられたお話とは関係ないです。
バブル経済期の女性の一途な恋愛の悲哀を湯川れい子は「あゝ無情」と名付けました。
きれいでしょ ヒラヒラと
いい女でしょ
見かけより 尽くすタイプね
出典: あゝ無情/作詞:湯川れい子 作曲:NOBADY
最初のパンチになるようなライン。
アン・ルイスはとにかく美形なお姉さんでしたから、自らの女ぶりを誇られても違和感はないのです。
それでも当時の価値観では女性が自らの美貌を自慢するこの歌い出しのラインは衝撃的でした。
見かけより 尽くすタイプね
出典: あゝ無情/作詞:湯川れい子 作曲:NOBADY
とってつけられたようなこのラインが、この先の歌詞世界に貫徹しています。
キラキラした女性ですが、見かけだけで判断しないで欲しいという彼女の心情・信条が覗けるのです。
ゆっくり一緒にいたい女心
優しさに棹さして 男はずるいわ
逃げてゆく 夜が明ける頃
出典: あゝ無情/作詞:湯川れい子 作曲:NOBADY
次のラインも衝撃的です。
夜をベッドで共に過ごしても、ゆっくり朝まで一緒にいてくれない。
夜明けにはなにかしらの事情を伝えて彼女のもとを去っていく男性を「ずるい」と批判します。
派手な外観をしていても、男を信じたい女心が裏切られるような瞬間です。