眠りの国に訴える熱い思い
数々のドラマ曲やCM曲タイアップで、今やすっかり国民的アーティストとなったKing Gnu。
今回ご紹介するのは、そんな彼らの楽曲の1つである『Slumberland』です。
上辺だけの正義を振りかざし、物事の本質を見ようとしない。
そんな現代社会にKing Gnuの『Slumberland』が物申します。
薄っぺらい議論を繰り返す、中身のないTVステーションはもうウンザリ。
ブラウン管の向こうの大衆には、もっと物事の本質的なものをさらけ出していくべきだ。
ギターボーカル常田大希のアジテートが光るこの曲には、そんなメッセージが込められているのかも。
タイトルの『Slumberland』は”眠りの国”という意味です。
世の中、つまらなくて眠ってしまいそう。そんなミーニングを込めたタイトルなのかもしれません。
間違いだらけの社会に誰も抗議の声をあげようとしない。みんな本当に起きてるの?
そんな皮肉も感じられる歌詞の中には、現代社会に対する熱い思いが隠されていました。
覚醒の瞬間
MVの舞台はニュース番組の収録現場。
そこにKing Gnuのボーカル&ギター・常田大希率いる楽器隊が乱入します。
議論を交わしていたコメンテーターやアナウンサーも困惑している様子。
あっという間に彼らは、縄で椅子に縛り付けられてしまいました。
ここで気になるのが、突然映像の中に登場した謎の人形たちについてです。
可愛いとも不気味とも言える人形たちは、音楽に乗りながらコメンテーターたちに迫ります。
そしてCメロでは、ひと際存在感を放っていた着ぐるみが彼らをじっと見つめ……。
コメンテーターもアナウンサーも目を回し、次のシーンでは人形たちと共に音楽に乗り始めました。
これは彼らが覚醒した瞬間なのでしょう。
つまらない議論はやめて、ただ音楽に身を委ねればいい。
目を覚ますというのは、今を全力で生きるということなのかもしれません。
世の中に向けて叫びたいこと
ここからはMVに込められた意味も探りながら、歌詞を紐解いていきます。
King Gnuが世の中に対して抱いている苛立ちや虚しさ。
そういった感情と共に、この曲の歌詞では彼らの熱い思いが叫ばれていました。
報道や議論は誰のため?
TVステーションでは今日も
騒ぎ立てているコメンテーター
耳障りで狂言めいた
遠い世界の話ばかりだな
出典: Slumberland/作詞:常田大希 作曲:常田大希
MVでもニュース番組の収録現場が舞台になっていたように、歌詞は「TVステーション~」から始まります。
日々どこかしらで起こっている憂鬱な事件。
それについて、事件とは何の関係もないコメンテーターたちが今日も議論をぶつけ合っています。
テレビから聞こえてくるその議論は、ただただうるさいだけ。
どこかで起こった事件もコメンテーターたちの議論も、自分には縁遠い話です。
興味もなければ、関心もない。
どんなに偉い人たちのコメントも、遠くの土地で起こった悲しい出来事も。
自分達の暮らす毎日の生活には、全然関係のない話なんだよな。
テレビの中の事件が起きても、事実自分の生活は何も変わらないし。
そんな思いを抱えたことのある人も、きっと多いのではないかと思います。
そもそも、その報道や議論は誰のためのものなの?
そんな声が聞こえてきそうですね。
正義にも悪にもなれない
正義もヘッタクレもない
悪事も結託すりゃバレないな
甘い蜜だけを吸っていたい
薄っぺらいピエロはあっちへ行きな
出典: Slumberland/作詞:常田大希 作曲:常田大希
ここの歌詞では世の中への不満が爆発しています。
多数決に従って善悪を判断する現代社会に正義なんてものはない。
「悪事も~」の歌詞は、多数派が常に正しいとされている今の風潮を皮肉っているのでしょう。
曖昧な正義がはびこる世の中なんて嫌だ。
でも、権力に媚びて楽に生きていきたいという気持ちも確かにあって……。
人間は弱い生き物ですから、可能であれば楽をして生きたい、とも思ってしまうもの。
大きな力に流されて生きている方が、余計なことで悩んだり苦しんだりせずに済みますものね。
「甘い~」の歌詞では、そんな自分の中の矛盾や葛藤が歌われています。
また最後のフレーズ「薄っぺらい~」は、正義にも悪にもなれない自分のことを言っているのかもしれませんね。
居眠りしている暇はない
サビで歌われていることこそ、King Gnuが世の中に伝えたかったメッセージ。
目まぐるしく変わっていく今の時代、居眠りしている暇なんてないでしょう?
しっかり目を見開いて、物事の本質を見極めていかなければなりません。
自分にとって本当に大切なものは、本当に必要なものは一体何なのか。
私たちは自らの手で、確固たる意思を持ってそれらを選び取りながら。
この混沌とした世界を、生きていかなければならないのです。