西野カナ【You are the one】歌詞を徹底解説！あなたにはかけがえのない人がいますか？

どうして失ってしまったのか分からない語り手と「君」の交際。

語り手はまだ前を向けずにかつての「君」と追憶の中で対話を試みます。

語り手にはこの先にもっと美しい出会いが待っているかもしれません。

しかし今の語り手の境遇ではそんな先のことを考えてみる余裕すらないのです。

自分は「君」のことを幸せにできたのだろうかと気に病みます。

人と人との交際というものは双方が同じだけ責任を負うものですから語り手だけが思い煩う必要はないのです。

しかし語り手はいつまでもこのことに執着することをやめません。

それほどに失ってしまった「君」の笑顔は素敵なものだったのでしょう。

相手に相応の幸せを感じてもらえた実感があるのならば語り手はここまで「君」の心を覗こうとはしない。

もしかしたら語り手には後悔する気持ちがあるのかもしれません。

十全に相手を幸せにできた実感がなかったと思い煩うのです。

やはり過去の日々に「君」を泣かしてしまったことがあったようです。

交際というものはどんなカップルにでも難しい局面が訪れることがあります。

そもそもは他人であったふたりが結ばれるということ自体が奇跡なのですから。

最初からお互いのすべてを分かり合えているなんて幸運は中々めぐりあえません。

しかしそうした行き違いももはや過去のものです。

何せその交際そのものが今では嘘のように目の前から消えて失くなってしまったのですから。

「君」は語り手のために流した涙を過去に置いて今を生きているはずです。

結局、「君」は新天地に向かったのか、新しい人生を選んだのかは分かりません。

その場に取り残された語り手はいつまでも「君」の面影を忘れずに生きています。

この語り手の思いが一方通行でないことを祈りたいです。

私たちは過去との向き合い方が人によって違うことを経験で知っています。

語り手のようにいつまでも過去の輝きを大切に思い追憶の中で会話をする人もいるでしょう。

一方で常に前を向き続けて、必要なとき以外は過去を振り返らない人もいます。

「君」はなぜ語り手のもとに戻らないのか。

そのことを考え始めると「君」の過去との接し方も何となく見えてくるでしょう。

ここに悲しいすれ違いがまだあるのです。

語り手は今も永遠の愛であることを祈っています。

この想いは「君」の心をいつか溶かすのでしょうか。

西野カナはその先についても描かないです。

あくまでも語り手の追憶の中に輝く「君」を美しくそのままにしてあげたいのかもしれません。

語り手は星に願います。

かけがえのない「君」への愛をずっと保ち続けられることを祈るのです。

かつて一緒に見た夢は変わらないものだという確信が語り手にはあります。

遠く離れていようともこの想いは変わらないものだと信じ切っているのです。

しかしこれまで見たように「君」の方の反応は描かれていません。

「君」も語り手と同じように星に願っているのだろうか。

「You are the one」に感じる不安はこの点につきます。

語り手が破れた恋にいつまでもしがみついているとしたらどうでしょうか。

この曲は途端に片思いの歌に変わります。

語り手の切ない思いが「君」の心を再びつかむ日が来ることを私たちは祈るしかないでしょう。

愛というものは双方の意志によって初めて結ばれます。

しかし片思いというものも愛の一種であることは疑いようがありません。

まして語り手と「君」にはかつて実際に分かりあえて交際できた日々があったのですから。

切実な思いを抱えた語り手の祈りは深くいつまでも続いてゆきます。

この曲「You are the one」のタイトルは語り手の側から見て生まれた言葉です。

この想いが双方向で通じあえるのであればいいとリスナーは願います。

英文ですので軽く意訳を添えましょう。

「とても遠いけれど

君がどこにいようとも

僕たちは同じ空の下にいる

僕は自分の両翼を広げて自由になろう

君に向かって飛び立つよ 僕の愛よ

いつでも永遠だから」

愛を永遠に紡いでゆくことに語り手は必死になります。

かけがえのない「君」しか語り手の視界には入ってきません。

便宜上「僕」と訳出しましたが、西野カナはこの語り手の性別を明示していないのです。

遠くにいる人に永遠の愛を誓うすべての男女のためにこうした仕掛けを施しました。

男性であろうと、女性であろうと愛を誓うすべての人に語り手の立場に立つチャンスを与えてくれる。

西野カナの詩が多くの人によって支持される理由はこの辺りにあるのでしょう。

空は広く鳥たちは国境さえも自由に超えてゆきます。

離れ離れであることを悔やむよりも、同じ空の下で生きていることを信じたい。

語り手の想いはさらに切実になってゆくのです。