ラッパが鳴れば着火 様々
待った無しの物語
発車バラバラ 滑車ガラガラ
真っ赤な過去が追いかける
出典: ハグルマ/作詞:谷口鮪 作曲:谷口鮪
近年のKANA-BOON作品に比べ明らかにサウンドを変えているのがギターリフです。
ここで作品が持つダークな世界観に一気に引きこまれます。
しかし続くAメロでは鮪印のリズミカルなライミングをこれでもかと多用。
ここで紛れもないKANA-BOON作品であることを印象付けています。
舞台劇としての「からくりサーカス」。
そしてKANA-BOONにとっての舞台とはステージや諸々の音楽を通したパフォーマンスです。
「からくり」を思わせるフレーズが続くと同時に自身の過去と向き合うことが綴られていきます。
つまり全ての人々にとって普遍的なストーリーが続くことがうかがえるのです。
ピエロが意味することとは?
道化師の笑み
仮面の裏側
どう消しても消えない
傷が痛んでも
出典: ハグルマ/作詞:谷口鮪 作曲:谷口鮪
「ピエロ」が「からくりサーカス」にとって重要な意味を持つことは前述しました。
3行目の歌詞は発音だけを聴くと“道化しても”という言葉遊びと掛けられていることからも一目瞭然です。
同時に素顔を隠した「ピエロ」が意味するのが偽りの自己を騙る現代人のメタファーであることもうかがえます。
そして次々と綴られていく過去を連想させるフレーズ。
「ピエロ」のふりをしてまでも欺きたい過去と向き合うことも『ハグルマ』の重要なピースなのでしょう。
咲かす or 枯らす
道標を探せ!
咲かすか枯らすか現在
燃えるように陽が沈む
真夜中の暗い孤独から 繰り出すさ
微か響く鐘が 陰る日々の道標
音の鳴る先へ
出典: ハグルマ/作詞:谷口鮪 作曲:谷口鮪
オープニングを除くとここで本来のサビが登場します。
ここでも谷口鮪は明らかに「サーカス」という言葉を意図的に2か所に隠しているのです。
そして『ハグルマ』のメインテーマである「選択」を花と人生を掛け合わせて迫っています。
それは花が咲き誇る「希望」、そして誰にも知られずに朽ちていく「絶望」の2択です。
誰しも明確な未来を知ることはできません。
しかし少なくとも実行するかしないかの選択権は自らが握っているのです。
僅かに見える目印の先は険しい獣道のみ。
苦難を確信しつつも前に歩みを進めるか?、それとも見なかったことにするのか?
それが自分が決める未来へと続いているのです。
作品にもよりそう歌詞
否が応でも連想される登場人物の姿
ラッパが鳴れば着火 わらわら
待った無しの演目の応酬
真っ赤 幕の間
落下はまだか 真っ逆さま待つ骸に
出典: ハグルマ/作詞:谷口鮪 作曲:谷口鮪
ここで一度「からくりサーカス」の世界観との共通点を探ってみようと思います。
『ハグルマ』はKANA-BOONの新曲であると同時にアニメソングとしても優れているからです。
作品の主人公である才賀勝(さいがまさる)は数奇な運命に翻弄されサーカス団に身を置きます。
2番Aメロを見るだけで明らかに「サーカス」を連想させるフレーズが散りばめられていることが分かるのです。
火の輪くぐり、赤いカーテン、空中ブランコといった演目の数々。
数奇な運命に立ち向かう姿に自身を重ね合わせて...
足を掴まれ 奈落の底まで
嗚呼 思想も忘れて 息も出来ない
出典: ハグルマ/作詞:谷口鮪 作曲:谷口鮪
さらに第2の主人公ともいえる2人の人物の鳴海(なるみ)としろがねの存在も忘れてはいけません。
記憶を失くし目的を忘れ闘いの日々に落ちていく鳴海。
人形遣いでありながら自身も操り人形であるしろがね。
皆数奇な運命に立ち向かい自らの意思で未来を掴もうと必死にもがきます。
その気高い生き様に谷口鮪がKANA-BOONの未来を重ねて作られたのが『ハグルマ』なのです。